問1 ある製造業の事業場の労働者数及び有害業務及び衛生管理者の選任の状況は、次の①~③のとおりである。
この事業場の衛生管理者の選任についての法令違反の状況に関する(1)~(5)の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、産業医及び衛生管理者の選任の特例はないものとする。
① 労働者数の状況
常時使用する労働者数は300人である。
② 有害業務等の状況
製造工程において著しく暑熱な場所における業務に常時40人従事しているが、他に有害業務に従事している者はいない。。
③ 衛生管理者の選任の状況
選任している衛生管理者数は2人である。
このうち1人は、この事業場に専属でない労働衛生コンサルタントで、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
他の1人は、この事業場に専属で、衛生管理者としての業務以外の業務を兼任しており、また、第一種衛生管理者免許を有しているが、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
(1)選任している衛生管理者数が少ないことが違反である。
(2)衛生管理者として選任している労働衛生コンサルタントがこの事業場に専属でないことが違反である。
(3)衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任した衛生管理者が1人もいないことが違反である。
(4)専任の衛生管理者が1人もいないことが違反である。
(5)本問における衛生管理者の選任の状況については、違反がない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2024年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
他の問題の解説をご覧になる場合は、下表の左欄、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2024年10月公表問題 | 問01 | 難易度 | 衛生管理者の選任の要件は基本中の基本。本問は正答できる必要がある。 |
---|---|---|---|
衛生管理者 | 2 |
問1 ある製造業の事業場の労働者数及び有害業務及び衛生管理者の選任の状況は、次の①~③のとおりである。
この事業場の衛生管理者の選任についての法令違反の状況に関する(1)~(5)の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、産業医及び衛生管理者の選任の特例はないものとする。
① 労働者数の状況
常時使用する労働者数は300人である。
② 有害業務等の状況
製造工程において著しく暑熱な場所における業務に常時40人従事しているが、他に有害業務に従事している者はいない。。
③ 衛生管理者の選任の状況
選任している衛生管理者数は2人である。
このうち1人は、この事業場に専属でない労働衛生コンサルタントで、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
他の1人は、この事業場に専属で、衛生管理者としての業務以外の業務を兼任しており、また、第一種衛生管理者免許を有しているが、衛生工学衛生管理者免許を有していない。
(1)選任している衛生管理者数が少ないことが違反である。
(2)衛生管理者として選任している労働衛生コンサルタントがこの事業場に専属でないことが違反である。
(3)衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任した衛生管理者が1人もいないことが違反である。
(4)専任の衛生管理者が1人もいないことが違反である。
(5)本問における衛生管理者の選任の状況については、違反がない。
正答(5)
【解説】
2023年4月公表の問1から数字を変更して産業医に関する部分を除いているが、衛生管理者に起案しては基本的に同じ問題である。
衛生管理者(及び産業医)の選任は、毎回、公表問題に含まれている。衛生管理者について覚えておかなければならない条文も、ほぼ下記に示した部分に限られている。確実に正答できるようにしておきたい。
逆から言えば、過去問の内容を理解して、同種の問題に答えられるよう、条文を読み込んでおけば正答できる問題だと言えよう。
衛生管理者の選任は安衛法第12条で義務付けられ、安衛令第4条で常時使用(雇用)する労働者が50人以上の場合に選任しなければならないとされている。また、衛生管理者の人数、種類等は安衛則第7条から12条に定められている。
【労働安全衛生法】
(衛生管理者)
第12条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し(中略)なければならない。
2 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(衛生管理者を選任すべき事業場)
第4条 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。
【労働安全衛生規則】
(衛生管理者の選任)
第7条 法第12条第1項の規定による衛生管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 (略)
二 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、2人以上の衛生管理者を選任する場合において、当該衛生管理者の中に第10条第3号に掲げる者がいるときは、当該者のうち1人については、この限りでない。
三 (略)
四 次の表の上欄に掲げる事業場の規模に応じて、同表の下欄に掲げる数以上の衛生管理者を選任すること。
事業場の規模(常時使用する労働者数) | 衛生管理者数 |
---|---|
50人以上200以下 | 1人 |
200人を超え500人以下 | 2人 |
500人を超え1,000人以下 | 3人 |
1,000人を超え2,000人以下 | 4人 |
2,000人を超え3,000人以下 | 5人 |
3,000人を超える場合 | 6人 |
五 次に掲げる事業場にあつては、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者とすること。
イ 常時千人を超える労働者を使用する事業場
ロ 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則(中略)第18条各号に掲げる業務に常時30人以上の労働者を従事させるもの
六 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働又は労働基準法施行規則第18条第一号、第三号から第五号まで若しくは第九号に掲げる業務に常時30人以上の労働者を従事させるものにあつては、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任すること。
2 (略)
(衛生管理者の資格)
第10条 法第十二条第一項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。
一及び二 (略)
三 労働衛生コンサルタント
四 (略)
【労働基準法施行規則】
第18条 法第三十六条第六項第一号の厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務は、次に掲げるものとする。
一 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
二 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
三 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
四 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
五 異常気圧下における業務
六 削岩機、鋲打機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務
七 重量物の取扱い等重激なる業務
八 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
九 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務
十 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務
(1)誤り。選任しなければならない衛生管理者数は安衛則第7条第1項第四号に定められている。この事業場が常時使用する労働者は300名(200人を超え500人以下)であり、衛生管理者は2名を選任すれば違反とはならない。
(2)誤り。衛生管理者は、安衛則第7条第1項第二号により、原則としてその事業場に専属の者を選任しなければならない。しかし、同号但書によって、2人以上の衛生管理者を選任する場合は、労働衛生コンサルタントのうち1名のみはその事業場に専属でない者とすることができる。
(3)誤り。衛生管理者のうち少なくとも1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任しなければならない要件は、安衛則第7条第1項第六号に定められている。本事業場は常時雇用する労働者が300名(常時500人を超えていない)なので、その対象とならない。
なお、「著しく暑熱な場所における業務」に常時 40 人の労働者が従事しているので、同号の後段の要件には含まれている。しかし、前段の要件に含まれていないので、衛生管理者のうち1名を衛生工学衛生管理者免許を受けた者のうちから選任する必要はない。
(4)誤り。衛生管理者のうち少なくとも1人を専任としなければならない要件は、安衛則第7条第1項第五号に定められている。この事業場の常時使用する労働者は300名であり同号のイ及びロに該当しない。
(5)正しい。上記に示すように、本問の事業場は、設問に記載された状況のみから判断した場合、いずれの違反要件にも該当しない。