第1種衛生管理者試験 2024年04月公表 問17

化学物質と発症するおそれのある主たるがん




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2024年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2024年04月公表問題 問17 難易度 これは労基則別表1の2からの出題である。やや高度な内容ではあるが正答しておきたい問題。
化学物質によるがん

問17 化学物質と、それにより発症するおそれのある主たるがんとの組合せとして、正しいものは次のうちどれか。

(1) 塩化ビニル ・・・ 肝血管肉腫
(2) ベンジジン ・・・ 皮膚がん
(3) ビス(クロロメチル)エーテル ・・・ 膀胱ぼうこうがん
(4) クロム酸 ・・・ 大腸がん
(5) 石綿 ・・・ 胃がん

正答(1)

【解説】

本問は、基本的に労基則別表1の2(職業病リスト)第七号からの出題と言ってよいであろう。以下にその一覧表化したものを掲げる。この表の左欄の業務が右欄の疾病の原因となることが分かっているので、左欄の業務に従事していて右欄の疾病に罹患した場合は、原則として業務上疾病として補償されることとなる。

がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程 疾病
ベンジジンにさらされる業務 尿路系腫瘍
ベーターナフチルアミンにさらされる業務 尿路系腫瘍
四―アミノジフェニルにさらされる業務 尿路系腫瘍
四―ニトロジフェニルにさらされる業務 尿路系腫瘍
ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務 肺がん
ベリリウムにさらされる業務 肺がん
ベンゾトリクロライドにさらされる業務 肺がん
石綿にさらされる業務 肺がん又は中皮腫
ベンゼンにさらされる業務 白血病
塩化ビニルにさらされる業務 肝血管肉腫又は肝細胞がん
一・二―ジクロロプロパンにさらされる業務 胆管がん
ジクロロメタンにさらされる業務 胆管がん
電離放射線にさらされる業務 白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫
オーラミンを製造する工程における業務 尿路系腫瘍
マゼンタを製造する工程における業務 尿路系腫瘍
コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務 肺がん
クロム酸塩又は重クロム酸塩を製造する工程における業務 肺がん又は上気道のがん
ニッケルの製錬又は精錬を行う工程における業務 肺がん又は上気道のがん
砒素を含有する鉱石を原料として金属の製錬若しくは精錬を行う工程又は無機砒素化合物を製造する工程における業務 肺がん又は皮膚がん
すす、鉱物油、タール、ピッチ、アスファルト又はパラフィンにさらされる業務 皮膚がん

(1)正しい。塩化ビニルは肝血管肉腫の原因となることが確認されている。

具体的には、1974年に米国の化学工場の塩ビ重合工程で働いていた3名の労働者が肝血管肉腫で死亡した。これは、一般には極めて稀な腫瘍であったため、職業起因性が疑われた。さらに、米国及び欧州諸国の塩ビ関係労働者について肝血管肉腫の発生が調査され、同様な症例があることが確認された。一方、イタリアでは塩ビを吸入させた動物に肝血管肉腫の発生することを認めた。このことは米国でも追認され、塩化ビニルにより肝血管肉腫が発症することが確認された。

(2)誤り。ベンジジンは膀胱がんの原因となることが確認されているが、皮膚がんの原因となるという証拠はない。皮膚がんの原因は紫外線などがある。化学物質としては砒素が挙げられよう。

(3)誤り。ビス(クロロメチル)エーテルは労基則別表1の2に示されているように肺がんの原因物質であり、安衛法上の製造禁止物質となっている。膀胱がんの原因となるという証拠はない。膀胱がんの原因として確認されているものはo-トルイジンの他、β-ナフチルアミン、4-アミノビフェニル、ベンチジンなどである。

(4)誤り。クロム酸は肺がん又は上気道のがんの原因となる。大腸がんのリスク要因としては、食生活(赤肉、加工肉等)、飲酒、喫煙などが指摘されている。

(5)誤り。石綿は肺がん又は中皮腫の原因となるが、胃がんの原因となるという証拠はない。胃がんは「ゴム製造業」について増加するという証拠がある。

  1. (1):昭和50年6月20日基発第348号(最終改正:平成7年3月27日基発第145号)「塩化ビニル障害の予防について」による
  2. (4):昭和59年12月4日基発第646号(最終改正:平成31年4月10日基発0410第1号)「クロム又はその化合物(合金を含む。)による疾病の認定基準について」による
2024年04月06日執筆