問42 耳とその機能に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)騒音性難聴は、音を神経に伝達する内耳の聴覚器官の有毛細胞の変性によって起こる。
(2)耳介で集められた音は、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。
(3)内耳は、前庭、半規管及び蝸牛(うずまき管)の三つの部位からなり、前庭と半規管が平衡感覚、蝸牛が聴覚をそれぞれ分担している。
(4)前庭は、体の回転の方向や速度を感じ、半規管は、体の傾きの方向や大きさを感じる。
(5)鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2023年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
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2023年10月公表問題 | 問42 | 難易度 | 聴覚に関する問題は過去12回では、3度の出題例がある。内容的にもやや高度だが正答したい。 |
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耳とその機能 | 4 |
問42 耳とその機能に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)騒音性難聴は、音を神経に伝達する内耳の聴覚器官の有毛細胞の変性によって起こる。
(2)耳介で集められた音は、鼓膜を振動させ、その振動は耳小骨によって増幅され、内耳に伝えられる。
(3)内耳は、前庭、半規管及び蝸牛(うずまき管)の三つの部位からなり、前庭と半規管が平衡感覚、蝸牛が聴覚をそれぞれ分担している。
(4)前庭は、体の回転の方向や速度を感じ、半規管は、体の傾きの方向や大きさを感じる。
(5)鼓室は、耳管によって咽頭に通じており、その内圧は外気圧と等しく保たれている。
正答(4)
【解説】
(1)正しい。騒音性難聴は大きな音に長期間さらされたことによって起こる外有毛細胞障害に伴う慢性の感音性難聴である。
なお、有毛細胞は外有毛細胞(約12,000個)と内有毛細胞(約3,500個)の2種があり、外有毛細胞は3列、内有毛細胞は1列に並んでいる。
(2)正しい。耳介で集められた音は、外耳道を伝わって鼓膜を振動させ、その振動が、ツチ骨、キヌタ骨及びアブミ骨と呼ばれる耳小骨を伝わって内耳へ伝わる。なお、このとき耳小骨はテコの仕組みで音を増幅していく。
(3)正しい。内耳は、前庭、半規管及び蝸牛の三つの部位からなる。前庭と半規管は(4)の解説に示すように平衡感覚を分担している。一方、蝸牛は、内側に有毛細胞という振動を感じる細胞が生えた渦巻き型の器官であり、耳小骨から伝えられた振動(音)を信号に変換して脳に伝える役割をしている。
蝸牛が渦巻き状をしているのは、入り口側は高い音を、奥側は低い音を感知するようになっているのである。
(4)誤り。半規管は、体の回転の方向や速度を感じ、前庭は、体の傾きの方向や大きさを感じる。半規管と前庭の説明が逆になっている。
前庭は三半規管の根元の部分にあり、単純に言えば、物体を感じることができる有毛細胞が内側にびっしりと生えた容器だと思えばよい。その容器の中(有毛細胞の上)に小さな耳石が入っている。脳は、この耳石がある部分が「下」であると感知することで、身体の傾きを知るのである。
三半規管は、「外側半規管」「前半規管」「後半規管」という3つの中空のリングからなる器官である。リングの中はリンパ液で満たされており、身体が回転すると、その動きによってリンパ液がリング内を回るように流れる。これを感知して、脳は身体の回転を知るのである。
(5)正しい。鼓室は、中耳にある鼓膜の内側の部屋である。この部分の気圧が鼓膜の外側と異なると音が聞こえにくくなる。そこで、耳管が鼓室と咽頭をつないで、鼓室の内圧を外気圧と等しくなるようにしているのである。