第1種衛生管理者試験 2023年4月公表 問33

食中毒発生の原因と予防方法




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2023年10月公表問題 問33 難易度 今回の公表問題はほぼ過去問の内容と同じである。正答できなければならない。
食中毒

問33 食中毒に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)感染型食中毒は、食物に付着した細菌そのものの感染によって起こる食中毒で、サルモネラ菌によるものがある。

(2)赤身魚などに含まれるヒスチジンが細菌により分解されて生成されるヒスタミンは、加熱調理によって分解する。

(3)エンテロトキシンは、フグ毒の主成分で、手足のしびれや呼吸麻を起こす。

(4)カンピロバクターは、カビの産生する毒素で、腹痛や下痢を起こす。

(5)ボツリヌス菌は、缶詰や真空パックなど酸素のない密封食品中でも増殖するが、熱には弱く、60℃、10分間程度の加熱で殺菌することができる。

正答(1)

【解説】

(1)正しい。感染型食中毒は、食物に付着した細菌そのものの感染によって起こる食中毒である。代表的なものはサルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクターなどがある。

(2)誤り。赤身魚やその加工品などに含まれるヒスチジンが、ヒスタミン産生菌によって分解されてヒスタミンに変換されることは正しい。しかし、ヒスタミンは加熱調理によっても分解しない。

(3)誤り。エンテロトキシンは、黄色ブドウ球菌が食品中で増殖して産生する毒素である。ブドウ球菌食中毒の原因となる。

なお、ふぐ毒には、テトロドトキシンという猛毒が含まれており、手足のしびれや呼吸麻を起こすことは正しい。

(4)誤り。カンピロバクターは、ニワトリ、ウシ等の家きんや家畜の他、ペット、野鳥、野生動物など多くの動物がもつ菌である。カンピロバクター食中毒は、日本の細菌性食中毒では発生件数が最も多く、年間300件、患者数2,000人程度で推移している。

(5)誤り。ボツリヌス菌の芽胞は100℃の加熱に耐えるほど熱に強く、これを死滅させるには、120度、4分以上またはこれと同等の加熱殺菌が必要とされている。60℃、10分間程度の加熱で殺菌することはできない。なお、ボツリヌス菌は毒性の強い神経毒(ボツリヌス毒素)を産生するが、菌そのものは体内に入っても大腸菌によって死滅する。

ボツリヌス菌による食中毒の直接の原因はボツリヌス毒素である。これは比較的低い熱でも失活し、食べる前に80℃で30分程度、100℃なら10分程度、加熱すれば食中毒のリスクは低くなる。

ボツリヌス菌は、ビン詰、缶詰、容器包装詰め食品、保存食品など酸素のない状態の食品が原因となりやすい。毒素は、筋肉の麻痺症状を起こす。重症になると呼吸筋も麻痺して呼吸が困難となって死亡する例もある。

2023年10月06日執筆