問30 労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値や最頻値によって表される。
(2)集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
(3)健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、このようなデータを静態データという。
(4)健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。
(5)ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2023年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2023年10月公表問題 | 問30 | 難易度 | 2021年10月公表問題から連続5回目の出題。しかも、内容は過去問で問われていることと同じである。 |
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労働衛生関連統計 | 2 |
問30 労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値や最頻値によって表される。
(2)集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
(3)健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、このようなデータを静態データという。
(4)健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。
(5)ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
正答(1)
【解説】
統計に関するこのタイプの知識問題は、最初は2018年4月公表問題で示されたが、その後、6回は示されていなかった。ところが、2021年10月公表問題以降は、毎回、示されている。この傾向は、今後も続くと思われる。確実に正答できるようにしたい。なお、選択肢はすべて過去問とほぼ同じである。
(1)誤り。平均値はそのグループ全体の傾向を表し、中央値とはちょうど真ん中のサンプルの値(※)を表している。バラツキとは関係がない。バラツキを示す指標は、標準偏差や分散である。
※ サンプル数が偶数のときは、真ん中の2つのサンプルの平均値。
(2)正しい。平均値が正常値の場合、分散がゼロであればそのグループはすべてが正常値であるが、分散が大きければ異常なケースが存在している可能性がある。分散が異なれば、異なった特徴をもつ集団であると評価しなければならない。
(3)正しい。静態データ(ストックデータ)とは、ある時点の集団に関するデータである。「有所見率」は健康診断を行った時点におけるその集団のデータであるから静態データである。
一方、動態データ(フローデータ)とは、ある期間の集団に関するデータであり、たとえばある1年間における出生数や死亡数などである。
(4)正しい。計数データとは個数を数えたデータのことであり、計量データとは連続的な量を測定したデータである。計数データは誤差をなくすことは可能であるが、計量データは誤差が避けられない。
健康診断において、対象人数、受診者数などは計数データであり、身長、体重などのデータは計量データである。
(5)正しい。ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められても、たまたま(偶然)ということもあり得る。また、他に共通な原因があるだけで、その事象と健康事象との間には因果関係がないこともあり得る。