問18 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。
(2)熱けいれんは、高温環境下での労働において、皮膚の血管に血液がたまり、脳への血液の流れが少なくなることにより発生し、めまい、失神などの症状がみられる。
(3)全身振動障害では、レイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害がみられ、局所振動障害では、関節痛などの筋骨格系障害がみられる。
(4)低体温症は、低温下の作業で全身が冷やされ、体の中心部の温度が35℃程度以下に低下した状態をいう。
(5)マイクロ波は、赤外線より波長が短い電磁波で、照射部位の組織を加熱する作用がある。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2023年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
他の問題の解説をご覧になる場合は、下表の左欄、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2023年10月公表問題 | 問18 | 難易度 | 過去に類似の出題例は多い。ほぼ過去問の学習で正答可能。正答できる必要がある。 |
---|---|---|---|
作業環境中の有害要因 | 3 |
問18 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた酸素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。
(2)熱けいれんは、高温環境下での労働において、皮膚の血管に血液がたまり、脳への血液の流れが少なくなることにより発生し、めまい、失神などの症状がみられる。
(3)全身振動障害では、レイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害がみられ、局所振動障害では、関節痛などの筋骨格系障害がみられる。
(4)低体温症は、低温下の作業で全身が冷やされ、体の中心部の温度が35℃程度以下に低下した状態をいう。
(5)マイクロ波は、赤外線より波長が短い電磁波で、照射部位の組織を加熱する作用がある。
正答(4)
【解説】
(1)誤り。減圧症は、潜函作業者、潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた窒素の気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻痺などの症状がみられる。
酸素が気泡化して起こす症状ではない。
(2)誤り。熱けいれんとは、暑熱時に多量の発汗をした場合に、真水や塩分濃度の低い飲料を補給して、血液中の塩分濃度が低下して起きる、痛みを伴う筋肉のけいれんのことである。
本肢の「高温環境下での労働において、皮膚の血管に血液がたまり、脳への血液の流れが少なくなることにより発生し、めまいや失神などの症状がみられる」のは「熱疲労」と呼ばれる。
(3)誤り。局所振動障害で現れる症状が、全身振動障害の症状として説明されている。
全身振動障害で、現時点で問題となってるのは腰痛であるが、内臓機能障害も指摘されている。なお、車酔いのような一過性の症状がみられることもある。レイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害がみられることはない。
一方、局所振動障害では、レイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害がみられる。なお、関節痛などの筋骨格系障害などがみられるとする報告(※)もある。
※ 日本産業衛生学会振動障害研究会「振動障害の診断ガイドライン 2013」(産衛誌 2013 Vol.55)、長瀬博文他「チェンソー作業者の症状発現と作業、生活、身体要因との関連性についての多変量解析」(産業医学 1990年 Vol.32)
(4)正しい。低体温症は、低温下の作業などで、全身が冷やされて深部体温が 35℃程度以下に低下した状態をいう。心臓や脳などが正常に働かなくなり、意識消失、筋の硬直などの症状がみられ、生命の危険を伴うこともある。
(5)誤り。文献によって定義は異なるが、マイクロ波の波長は1mm ~1m 程度、赤外線は 700nm ~ 1mm 程度で、マイクロ波の方が波長は長い。なお、電磁波であること、照射部位の組織を加熱する作用があることは正しい。強力なマイクロ波は眼球の水晶体の温度を上げるため白内障を発症するリスクがあり、労基則別表第1の2には「マイクロ波にさらされる業務による白内障等の眼疾患」が挙げられている。