第1種衛生管理者試験 2023年4月公表 問06

有機溶剤中毒予防規則の規定




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年10月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2023年10月公表問題 問06 難易度 有機則は銀出事項である。過去問を学習していれば正答できる問題である。
有機則の規定

問6 有機溶剤等を取り扱う場合の措置について、有機溶剤中毒予防規則に違反しているものは次のうちどれか。

ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。

(1)地下室の内部で第一種有機溶剤等を用いて作業を行わせるとき、その作業場所に局所排気装置を設け、有効に稼働させているが、作業者に送気マスクも有機ガス用防毒マスクも使用させていない。

(2)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に最大0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有する側方吸引型外付け式フードの局所排気装置を設け、かつ、作業に従事する労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。

(3)屋内作業場に設けた空気清浄装置のない局所排気装置の排気口で、厚生労働大臣が定める濃度以上の有機溶剤を排出するものの高さを、屋根から1.5mとしている。

(4)屋外作業場において有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務に常時従事する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、有機溶剤等健康診断を行っている。

(5)有機溶剤等を入れてあった空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものを、密閉して屋内の一定の場所に集積している。

正答(2)

【解説】

有機則の問題は、特定の業務について出題されることが多いが、今回は、有機溶剤業務一般について問われている。

(1)違反とはならない。基本的に呼吸用保護具(防毒マスク等)を使用しなければならないのは、局所排気装置等を使用しない場合である。

地下室の内部で第一種有機溶剤等を用いて作業を行わせるときであっても、その作業場所に局所排気装置を設け、有効に稼働させているのであれば、作業者に送気マスクや有機ガス用防毒マスクを使用させなくても違反とはならない。

【有機則】

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(送気マスクの使用)

第32条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスクを使用させなければならない。

 (略)

 第九条第二項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務

2及び3 (略)

(呼吸用保護具の使用)

第33条 事業者は、次の各号のいずれかに掲げる業務に労働者を従事させるときは、当該業務に従事する労働者に送気マスク、有機ガス用防毒マスク又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具を使用させなければならない。

 第六条第一項の規定により全体換気装置を設けたタンク等の内部における業務

 第八条第二項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置を設けないで行うタンク等の内部における業務

 第九条第一項の規定により有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備及び局所排気装置を設けないで吹付けによる有機溶剤業務を行う屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所における業務

四~七 (略)

2及び3 (略)

(2)違反となる。有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務は、有機則第1条第1項(第6号ヌ)により、有機溶剤業務である。従って、有機則第5条により、屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるときは密閉設備、局所排気装置等の接地をしなければならない。

そして、本問の場合「同規則に定める適用除外及び設備の特例はない」のであるから、側方吸引型外付け式フードの局所排気装置の制御風速は、0.5m/sの制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。最大0.4m/sの制御風速では足りない。

なお、一定の場合の特例として、作業に従事する労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させることで、局所排気装置の設置を行わないことはできるが、通常の作業でそれが可能となるわけではない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イ~リ (略)

 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務

ル及びヲ (略)

 (略)

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(局所排気装置の性能)

第16条 局所排気装置は、次の表の上欄に掲げる型式に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。

型式 制御風速(メートル/秒)
囲い式フード 0.4
外付け式フード 側方吸引型 0.5
下方吸引型 0.5
上方吸引型 1.0

備考

一 この表における制御風速は、局所排気装置のすべてのフードを開放した場合の制御風速をいう。

二 この表における制御風速は、フードの型式に応じて、それぞれ次に掲げる風速をいう。

イ 囲い式フードにあつては、フードの開口面における最小風速

ロ 外付け式フードにあつては、当該フードにより有機溶剤の蒸気を吸引しようとする範囲内における当該フードの開口面から最も離れた作業位置の風速

 (略)

(3)違反とはならない。有機則第 15 条の2第2項により、空気清浄装置のない局所排気装置の排気口については、厚生労働大臣が定める濃度以上の有機溶剤を排出するものであっても、その高さを屋根から1.5mとすれば違反とはならない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(排気口)

第15条の2 事業者は、局所排気装置、プッシュプル型換気装置(第二章の規定により設けるプッシュプル型換気装置をいう。以下この章、第十九条の二及び第三十三条第一項第六号において同じ。)、全体換気装置又は第十二条第一号の排気管等の排気口を直接外気に向かつて開放しなければならない。

 事業者は、空気清浄装置を設けていない局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置(屋内作業場に設けるものに限る。)又は第十二条第一号の排気管等の排気口の高さを屋根から一・五メートル以上としなければならない。ただし、当該排気口から排出される有機溶剤の濃度が厚生労働大臣が定める濃度に満たない場合は、この限りでない。

(4)違反とはならない。引っ掛けの肢である。有機則では屋外作業場における有機溶剤業務には、健康診断を義務付けていない。本肢は、「1年以内ごとに1回」にとらわれてしまうと正答できない。

義務付けられていない以上、健康診断をどのような頻度で行ったとしても違反とはなりようがない。

【安全衛生法】

(健康診断)

第66条 (第1項 略)

 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。

3~5 (略)

【安全衛生法施行令】

(健康診断を行うべき有害な業務)

第22条 法第66条第2項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。

一~五 (略)

 屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるもの

2及び3 (略)

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イ~チ (略)

 有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務(ヲに掲げる業務に該当する塗装の業務を除く。)

ヌ~ヲ (略)

 (略)

(健康診断)

第29条 令第22条第1項第六号の厚生労働省令で定める業務は、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあつては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、第3条第1項の場合における同項の業務以外の業務とする。

 事業者は、前項の業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

一~四 (略)

3~6 (略)

(5)違反とはならない。有機溶剤等を入れてあった空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものを、密閉して屋内の一定の場所に集積しているのであるから、有機則第 36 条に適合している。

【有機溶剤中毒予防規則】

(空容器の処理)

第36条 事業者は、有機溶剤等を入れてあつた空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものについては、当該容器を密閉するか、又は当該容器を屋外の一定の場所に集積しておかなければならない。

2023年10月03日執筆