第1種衛生管理者試験 2023年4月公表 問42

免疫と抗原




問題文
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未来を指し示す女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2023年04月公表問題 問42 難易度 免疫等に関する新タイプの問題。しかし、過去問の学習で正答できる。
免疫と抗原

問42 免疫に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)抗原とは、免疫に関係する細胞によって異物として認識される物質のことである。

(2)抗原となる物質には、たん白質、糖質などがある。

(3)抗原に対する免疫が、逆に、人体の組織や細胞に傷害を与えてしまうことをアレルギーといい、主なアレルギー性疾患としては、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などがある。

(4)免疫の機能が失われたり低下したりすることを免疫不全といい、免疫不全になると、感染症にかかりやすくなったり、がんに患しやすくなったりする。

(5)免疫には、リンパ球が産生する抗体によって病原体を攻撃する細胞性免疫と、リンパ球などが直接に病原体などを取り込んで排除する体液性免疫の二つがある。

正答(5)

【解説】

本問は、免疫に関する過去11回の公表問題とはタイプが異なる問題である。おそらく衛生管理者試験掲示板に情報を頂いた「抗体」に関する未公表問題であろう。しかし、過去問の学習で十分に正答可能である。

(1)正しい。抗原(antigen)とは、ヒトの体内に入って免疫反応を起こす非自己的な物質のことである。

(2)正しい。様々な物質や微生物が抗原となり、抗原となる物質には、たん白質、糖、毒素の他、様々な有機物や無機物も含まれる。なお、細菌やウイルスの表面に存在するたん白質や糖質なども抗原となる。

(3)正しい。アレルギー反応は免疫の過剰反応によって引き起こされる症状である。Ⅰ型からⅣ型がある。GHS分類で、皮膚感作性とは、皮膚接触後アレルギー反応を誘発することである。このうちⅠ型(即時型)アレルギーはIgE抗体が原因で発生し、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそくの他、花粉症、蕁麻疹じんましん、食物(蕎麦・卵・牛乳・ナッツなど)アレルギー、蜂毒アレルギーなどがある。

(4)正しい。免疫の機能が失われたり低下したりすることを免疫不全という。免疫不全になると、ウイルスへの免疫力が低下するので感染症にかかりやすくなることは当然である。

また、免疫細胞の一部には初期のがんを抑制できるものもある。このため、後天性の免疫不全症候群(エイズ)や臓器移植に伴って生じる免疫抑制状態で、がんに患しやすくなることが知られている。

(5)誤り。細胞性免疫と体液性免疫免疫の説明が逆になっている。本肢は過去問にはないが、2020年4月公表問題の問42の解説を理解しておけば正答できる。

  • 体液性免疫(液性免疫)の仕組み
  • ① ヘルパーT細胞(T細胞のひとつ)の産生するサイトカインにより、B細胞が刺激されて形質細胞へ分化し、大量の抗体を産生する
  • ② 次にその抗体が体液中を循環して全身に広がり、抗原に結合してマクロファージによる貪食を助けたり、ウイルスの感染力や毒素の毒性を失わせたりするものである。
  • 細胞性免疫の仕組み
  • 局所的に起こる免疫反応で、細胞傷害性T細胞(リンパ球T細胞のひとつ)やマクロファージが直接細胞を攻撃する免疫反応である。

※ リンパ球には、T細胞と、抗体(免疫グロブリン)を産生するB細胞がある。

2023年04月17日執筆