問34 厚生労働省の「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」に基づく健康保持増進対策に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)健康保持増進対策の推進に当たっては、事業者が労働者等の意見を聴きつつ事業場の実態に即した取組を行うため、労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用する。
(2)健康測定の結果に基づき行う健康指導には、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、口腔保健指導、保健指導が含まれる。
(3)健康保持増進措置は、主に生活習慣上の課題を有する労働者の健康状態の改善を目指すために個々の労働者に対して実施するものと、事業場全体の健康状態の改善や健康増進に係る取組の活性化等、生活習慣上の課題の有無に関わらず労働者を集団として捉えて実施するものがある。
(4)健康保持増進に関する課題の把握や目標の設定等においては、労働者の健康状態等を客観的に把握できる数値を活用することが望ましい。
(5)健康測定とは、健康指導を行うために実施される調査、測定等のことをいい、疾病の早期発見に重点をおいた健康診断の各項目の結果を健康測定に活用することはできない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2023年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2023年04月公表問題 | 問34 | 難易度 | THP指針全般に関する問題は、新指針になってからは初出。今後の出題の可能性は、やや微妙か。 |
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THP指針 | 5 |
問34 厚生労働省の「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」に基づく健康保持増進対策に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。
(1)健康保持増進対策の推進に当たっては、事業者が労働者等の意見を聴きつつ事業場の実態に即した取組を行うため、労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用する。
(2)健康測定の結果に基づき行う健康指導には、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、口腔保健指導、保健指導が含まれる。
(3)健康保持増進措置は、主に生活習慣上の課題を有する労働者の健康状態の改善を目指すために個々の労働者に対して実施するものと、事業場全体の健康状態の改善や健康増進に係る取組の活性化等、生活習慣上の課題の有無に関わらず労働者を集団として捉えて実施するものがある。
(4)健康保持増進に関する課題の把握や目標の設定等においては、労働者の健康状態等を客観的に把握できる数値を活用することが望ましい。
(5)健康測定とは、健康指導を行うために実施される調査、測定等のことをいい、疾病の早期発見に重点をおいた健康診断の各項目の結果を健康測定に活用することはできない。
正答(5)
【解説】
本問は、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(THP指針)に関する問題である。
THP指針は2020年3月に大幅な改正が行われ、その後は「康測定における運動機能検査の項目とその測定種目」しか出題されなくなっていた。
その意味で、やや意表を突く設問である。今後の出題傾向は分からないが、当サイトの衛生管理者試験掲示板に寄せられた情報では、あまり重要視する必要はないかもしれない。
(1)適切である。THP指針の「3 健康保持増進対策の推進に当たっての基本事項」には「健康保持増進対策の推進に当たっては、事業者が労働者等の意見を聴きつつ事業場の実態に即した取組を行うため、労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用して以下の項目(略す:引用者)に取り組むとともに、各項目の内容について関係者に周知することが必要である
」とされている。
(2)適切である。THP指針の4の(2)のイの「(ロ)健康指導の実施」には、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、口腔保健指導、保健指導が挙げられている。
(3)適切である。THP指針の2の「① 健康保持増進対策における対象の考え方」には「健康保持増進措置は、主に生活習慣上の課題を有する労働者の健康状態の改善を目指すために個々の労働者に対して実施するものと、事業場全体の健康状態の改善や健康増進に係る取組の活性化等、生活習慣上の課題の有無に関わらず労働者を集団として捉えて実施するものがある
」とされている。
(4)適切である。THP指針の5の「(1)客観的な数値の活用」には「課題の把握や目標の設定等においては、労働者の健康状態等を客観的に把握できる数値を活用することが望ましい
」とされている。
(5)適切ではない。THP指針の4の(2)のイの「(イ)労働者の健康状態の把握」には「健康測定とは、健康指導を行うために実施される調査、測定等のことをいい、疾病の早期発見に重点をおいた健康診断を活用しつつ、追加で生活状況調査や医学的検査等を実施するものである
」とされている(※)。
※ かつての旧THP指針では、「「健康測定」とは、それぞれの労働者の健康状態を把握し、その結果に基づいた運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、保健指導等の健康指導を行うために実施される生活状況調査や医学的検査等のことをいい、疾病の早期発見に重点をおいた健康診断とはその目的が異なるものである
」とされていた。
これが現在のような形に修正されたのは、THPに対する国の補助事業が終わると、当時のTHP指針に厳格に基づいた活動がほとんど行われなくなり、その状況下で健康診断とは別に健康測定の実施を事業者に求めることが非現実的と考えられたためである。日本の経済が急速に発展する時代に作られたTHPの考え方が、経済が低調になる中で大きく縮小せざるを得なかったのである。