第1種衛生管理者試験 2023年4月公表 問17

化学物質による健康障害




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未来を指し示す女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

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2023年04月公表問題 問17 難易度 過去に類似の出題例は多い。本問もほぼ過去問の学習で正答可能。正答できる必要がある。
化学物質による健康障害

問17 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)塩素による中毒では、再生不良性貧血、溶血などの造血機能の障害がみられる。

(2)シアン化水素による中毒では、細胞内の酸素の利用の障害による呼吸困難、けいれんなどがみられる。

(3)ふっ化水素による中毒では、脳神経細胞が侵され、幻覚、錯乱などの精神障害がみられる。

(4)酢酸メチルによる慢性中毒では、微細動脈りゅうを伴う脳卒中などがみられる。

(5)二酸化窒素による慢性中毒では、骨の硬化、斑状歯などがみられる。

正答(2)

【解説】

(1)誤り。過去問と全く同じである。後天性の再生不良性貧血については、一部の例で抗菌薬や解熱鎮痛薬などの薬剤が発症に関与している可能性があるが、塩素が原因となったという報告はない。発症の引き金となる原因はほとんどの場合不明である。

なお、溶血については、塩素が血液中に混入した場合、溶血を発生する危険性があるため誤りとは言えない。

塩素の急性毒性としては、皮膚腐食性、眼刺激性、呼吸器系への障害及び刺激性などがある。長期ばく露による健康障害としては、呼吸器系、腎臓、臭覚器の障害の他、歯の障害などがみられる。

(2)正しい。過去問と全く同じである。シアン化水素は、ミトコンドリア内のチトクロームオキシダーゼという酵素と結合することにより、細胞の酸素代謝を直接阻害する。これにより呼吸困難、痙攣などがみられる。

(3)誤り。ふっ化水素による中毒で、脳神経細胞が侵され、幻覚、錯乱などの精神障害がみられるという報告はない。なお、弗化水素に限らず、弗化物による慢性中毒として、斑状歯(歯牙弗化物症)や骨硬化症がみられる。

(4)誤り。酢酸メチルによる慢性中毒で、微細動脈りゅうを伴う脳卒中などがみられるとする報告はない。酢酸メチルの慢性ばく露では、眼の刺激、乾燥、発赤、かすみ、皮膚のひび割れなどがあり、遅発性症状として肺水腫や視神経の症状がみられる。

(5)誤り。二酸化窒素による慢性中毒で、骨の硬化、斑状歯などがみられるとする報告はない。なお、二酸化窒素はのど、気管、肺などの呼吸器に悪影響を与える。肺機能への影響及び肺水腫が認められたとする報告等がある。

2023年04月13日執筆