第1種衛生管理者試験 2023年4月公表 問14

有機溶剤による健康影響等




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未来を指し示す女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

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2023年04月公表問題 問14 難易度 有機溶剤による健康影響等は過去問の定番である。過去問の学習で正答可能な問題。
有機溶剤による健康影響

問14 有機溶剤に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)有機溶剤の多くは、揮発性が高く、その蒸気は空気より軽い。

(2)有機溶剤は、脂溶性が低いため、脂肪の多い脳などには入りにくい。

(3)ノルマルヘキサンによる障害として顕著なものには、白血病や皮膚がんがある。

(4)二硫化炭素は、動脈硬化を進行させたり、精神障害を生じさせることがある。

(5)N,N-ジメチルホルムアミドによる障害として顕著なものには、視力低下を伴う視神経障害がある。

正答(4)

【解説】

(1)誤り。有機溶剤の多くは、揮発性が高いことは正しい。しかし、その蒸気は空気より重い。そのため、有機溶剤のセンサは天井よりも床につける方がよく、局所排気装置は上方吸引より下方吸引の方が効率的である。

(2)誤り。有機溶剤の特徴の一つは、脂溶性が高いことである。そのため、脂肪の多い脳などに蓄積されやすい。

(3)誤り。ノルマルヘキサンについては過去 10 回の公表問題で初出。ノルマルヘキサンによる障害として、白血病や皮膚がんなどの発がん性は知られていない(一部の動物実験で肝細胞腫瘍の増加がみられるが、証拠としては不十分。IARC において評価は行われていない。)。

ノルマルヘキサンによる健康影響として顕著なものには、手足の感覚麻痺、歩行困難等の多発性神経炎、貧血などの造血障害がある。

(4)正しい。二硫化炭素による動脈硬化は過去 10 回の公表問題では初出。二硫化炭素は躁うつ病、多発性神経障害、神経衰弱等を発症させることはよく知られている。しかし、動脈硬化を進行させることはあまり知られておらず、衛生管理者の問題として適切かという疑問は感じる。

(5)誤り。N,N-ジメチルホルムアミドは眼に対する刺激性があるが、視力低下を伴う視神経障害は確認されていない。なお、本物質は発がん性及び生殖毒性がある他、肝臓への障害、皮膚に対する刺激性などがあると考えられている。

2023年04月13日執筆