問12 次の化学物質のうち、常温・常圧(25℃、1気圧)の空気中で蒸気として存在するものはどれか。
ただし、蒸気とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。
(1)塩化ビニル
(2)ジクロロベンジジン
(3)アクリロニトリル
(4)エチレンオキシド
(5)二酸化マンガン
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2023年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2023年04月公表問題 | 問12 | 難易度 | 化学物質の物性に関する基本的な知識問題。定番の問題であり、確実に正答できなければならない。 |
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化学物質の物性 | 3 |
問12 次の化学物質のうち、常温・常圧(25℃、1気圧)の空気中で蒸気として存在するものはどれか。
ただし、蒸気とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。
(1)塩化ビニル
(2)ジクロロベンジジン
(3)アクリロニトリル
(4)エチレンオキシド
(5)二酸化マンガン
正答(3)
【解説】
定番の問題である。この公表問題では、過去 10 回の公表問題にすべて前例がある。その意味では、落としたくない問題である。
蒸気とガスについては様ざまな定義があり、定義によってはどちらに該当するかが異なることもある。そのため、本問は但書で蒸気の定義を示している。そして、常温・常圧で液体又は固体の状態にならないものは蒸気ではないと言っている。常温・常圧で気体となっているものは、ガスであって蒸気ではないのである。従って、沸点が常温よりも高いものを選べばよいことになろう。
また、揮発とは物体の状態が液体から気体に変化することで、昇華とは固体から気体に代わることである。日常用語の「蒸発」は液体表面から気化する現象で、蒸気圧が気圧よりも高くなると「沸騰」して液体内部からも気化するようになる。
なお、ミストや湯気は液体であり、ヒュームは固体であって蒸気ではない。
今回、エチレンオキシドと二酸化マンガンは初出であるが、正答のアクリロニトリルは過去に出題例がある。
(1)蒸気として存在しない。塩化ビニル(モノマー)は、常温・常圧ではガスとして存在する。蒸気ではない。
なお、労働衛生の世界で「塩化ビニル」と言えば、モノマーのことを指すことは常識として知っておくこと。水道管などの材料の塩化ビニルはポリマーである。ただし、ポリマーであっても、粉状のものには有害性はあり、TLV-TWAは1g/m3(レスピラブル粒子として)とされている。
(2)蒸気として存在しない。ジクロロベンジジンは、常温・常圧では灰色~紫色の結晶として存在する。蒸気圧は6×10-7Pa(20℃)程度であり、粉じんとなることはあっても蒸気となることは考えにくい。
(3)蒸気として存在する。アクリロニトリルの融点は約-82℃で、沸点は77.3℃であり、常温では液体である。蒸気圧は109mmHgであり、空気中では蒸気として存在し得る。
(4)蒸気として存在しない。エチレンオキシドは、常温・常圧ではガスとして存在する。沸点は 10.7 ℃である。本問の定義では蒸気ではない。
(5)蒸気として存在しない。二酸化マンガンは、常温・常圧では、黒~茶色の固体として存在する。安定した物質で 553 ℃で分解する。蒸気ではない。