問10 労働基準法に基づく有害業務への就業制限に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)満18歳未満の者は、多量の低温物体を取り扱う業務に就かせてはならない。
(2)妊娠中の女性は、異常気圧下における業務に就かせてはならない。
(3)満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性から、著しく暑熱な場所における業務に従事しない旨の申出があった場合には、当該業務に就かせてはならない。
(4)満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性から、さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務に従事したい旨の申出があった場合には、当該業務に就かせることができる。
(5)満18歳以上で産後1年を経過した女性は、多量の低温物体を取り扱う業務に就かせることができる。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2023年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2023年04月公表問題 | 問10 | 難易度 | 本問は女性保護と年少者保護規定の組合せ問題である。本問は過去問の学習で正答できる。 |
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労基法による保護規定 | 2 |
問10 労働基準法に基づく有害業務への就業制限に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)満18歳未満の者は、多量の低温物体を取り扱う業務に就かせてはならない。
(2)妊娠中の女性は、異常気圧下における業務に就かせてはならない。
(3)満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性から、著しく暑熱な場所における業務に従事しない旨の申出があった場合には、当該業務に就かせてはならない。
(4)満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性から、さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務に従事したい旨の申出があった場合には、当該業務に就かせることができる。
(5)満18歳以上で産後1年を経過した女性は、多量の低温物体を取り扱う業務に就かせることができる。
正答(4)
【解説】
(1)正しい。労基法第 62 条第1項及び年少則第8条(第三十六号)の規定により、満 18 歳未満の者は、多量の低温物体を取り扱う業務に就かせてはならない。
【労働基準法】
(危険有害業務の就業制限)
第62条 使用者は、満18才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
② 使用者は、満18才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
③ 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
【年少者労働基準規則】
(年少者の就業制限の業務の範囲)
第8条 法第62条第1項の厚生労働省令で定める危険な業務及び同条第2項の規定により満18歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。ただし(以下略)
一~三十六 (略)
三十六 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
三十七~四十六 (略)
(2)正しい。労基法第 64 条の3第1項及び女性則第2条第1項(第二十三号)の規定により、妊娠中の女性は、異常気圧下における業務に就かせてはならない。
【労働基準法】
(危険有害業務の就業制限)
第64条の3 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
②及び③ (略)
【女性労働基準規則】
(危険有害業務の就業制限の範囲等)
第2条 法第64条の3第1項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。
一~二十二 (略)
二十三 異常気圧下における業務
二十四 (略)
2 (略)
(3)正しい。労基法第 64 条の3第1項及び女性則第2条第2項(同第1項第二十号)の規定により、満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性から、著しく暑熱な場所における業務に従事しない旨の申出があった場合には、当該業務に就かせてはならない。
なお、満18歳未満の者は、著しく暑熱な場所における業務に就かせてはならない(年少則第8条第三十六号)。また、産後8週間を経過していない女性は原則として就業させてはならない(労基法第 66 条)ことも覚えておく。
【労働基準法】
(危険有害業務の就業制限)
第64条の3 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
②及び③ (略)
【女性労働基準規則】
(危険有害業務の就業制限の範囲等)
第2条 法第64条の3第1項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。
一~十九 (略)
二十 著しく暑熱な場所における業務
二十一~二十四 (略)
2 法第六十四条の三第一項の規定により産後一年を経過しない女性を就かせてはならない業務は、前項第一号から第十二号まで及び第十五号から第二十四号までに掲げる業務とする。ただし、同項第二号から第十二号まで、第十五号から第十七号まで及び第十九号から第二十三号までに掲げる業務については、産後一年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に限る。
(4)誤り。労基法第 64 条の3第1項及び女性則第2条第2項(同第1項第二十四号)の規定により、満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性から、さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務に従事したい旨の申出があった場合であっても、当該業務に就かせることができない。
【労働基準法】
(危険有害業務の就業制限)
第64条の3 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
②及び③ (略)
【女性労働基準規則】
(危険有害業務の就業制限の範囲等)
第2条 法第64条の3第1項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。
一~二十三 (略)
二十四 さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務
2 法第64条の3第1項の規定により産後1年を経過しない女性を就かせてはならない業務は、前項第一号から第十二号まで及び第十五号から第二十四号までに掲げる業務とする。ただし、同項第二号から第十二号まで、第十五号から第十七号まで及び第十九号から第二十三号までに掲げる業務については、産後一年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に限る。
(5)正しいとしておく。労基法第62条の年少者保護規定は満18歳未満の者を対象にしており、同法第64条の3第1項は産後1年を経過していない女性を対象としている。
なお、同法第64条の3第2項は、一部の規定を妊産婦以外の女性に適用するとしている。この規定により、女性則第3条は、同規則第2条第1項第一号及び第十八号を妊産婦以外の女性にも適用している(従って、同規則第2条の規定と合わせて、同規則第2条第1項第一号及び第十八号はすべての女性に適用される)。しかし、これはいずれも「多量の低温物体を取り扱う業務」ではない。
従って、満18歳以上で産後1年を経過した女性を、多量の低温物体を取り扱う業務に就かせることは法によって禁止されていない。しかし、衛生管理者試験ではそこまで気にしなくて良いが、本肢が「できる」となっているため、厳密には誤りの肢である。なぜなら「禁止されていない」ことと「できる」ことは、法律的にはまったく意味が異なるからである。
できるというのであれば、労使協定や就業規則あるいは雇用契約で「やらない」と定めてあっても、使用者はそれをすることができることになる。もちろん、そのようなことはあり得ないことである。
【労働基準法】
(危険有害業務の就業制限)
第62条 使用者は、満18才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
② 使用者は、満18才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
③ 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
(危険有害業務の就業制限)
第64条の3 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
② 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、厚生労働省令で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。
③ (略)
【女性労働基準規則】
(危険有害業務の就業制限の範囲等)
第2条 法第64条の3第1項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。
一 次の表の上欄に掲げる年齢の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる重量以上の重量物を取り扱う業務
(表 略)
二~十七 (略)
十八 次の各号に掲げる有害物を発散する場所の区分に応じ、それぞれ当該場所において行われる当該各号に定める業務
イ~ハ (略)
十九~二十四 (略)
2 法第六十四条の三第一項の規定により産後一年を経過しない女性を就かせてはならない業務は、前項第一号から第十二号まで及び第十五号から第二十四号までに掲げる業務とする。ただし、同項第二号から第十二号まで、第十五号から第十七号まで及び第十九号から第二十三号までに掲げる業務については、産後一年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に限る。
第3条 法第64条の3第2項の規定により同条第一項の規定を準用する者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性以外の女性とし、これらの者を就かせてはならない業務は、前条第1項第一号及び第十八号に掲げる業務とする