第1種衛生管理者試験 2023年4月公表 問04

定期自主検査の実施義務の対象




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未来を指し示す女性

※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2023年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2023年04月公表問題 問04 難易度 定期自主検査の対象は広範にわたるが、主要なものは覚えておく。本問は難易度は高いが正答可能な範囲。
定期自主検査の対象

問4 次の装置のうち、法令上、定期自主検査の実施義務が規定されているものはどれか。

(1)塩化水素を重量の 20 %含有する塩酸を使用する屋内の作業場所に設けた局所排気装置

(2)アーク溶接を行う屋内の作業場所に設けた全体換気装置

(3)エタノールを使用する作業場所に設けた局所排気装置

(4)アンモニアを使用する屋内の作業場所に設けたプッシュプル型換気装置

(5)トルエンを重量の10%含有する塗料を用いて塗装する屋内の作業場所に設けた局所排気装置

正答(5)

【解説】

定期自主検査の実施は安衛法第45条によって義務付けられ、安衛令第15条第1項に対象が定められている。そして、同項第九号は、局所排気装置等のうち省令で定めるものを定期自主検査の対象としている。

これを受けて、各特別側で定期自主検査を実施すべき局所排気装置等が定められている。

【労働安全衛生法】

(定期自主検査)

第45条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。

2~4 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(定期に自主検査を行うべき機械等)

第15条 法第45条第一項の政令で定める機械等は、次のとおりとする。

一~八 (略)

 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置で、厚生労働省令で定めるもの

十及び十一 (略)

 (略)

別表第3 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)

一及び二 (略)

 第三類物質

 アンモニア

 (略)

 塩化水素

4から9 (略)

別表第6の2 有機溶剤(第六条、第二十一条、第二十二条関係)

一~三十六 (略)

三十七 トルエン

三十八~五十五 (略)

【特定化学物質障害予防規則】

(定期自主検査を行うべき機械等)

第29条 令第十五条第一項第九号の厚生労働省令で定める局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置及び排液処理装置(特定化学物質(特別有機溶剤等を除く。)その他この省令に規定する物に係るものに限る。)は、次のとおりとする。

 第三条、第四条第四項、第五条第一項、第三十八条の十二第一項第二号、第三十八条の十七第一項第一号若しくは第三十八条の十八第一項第一号の規定により、又は第五十条第一項第六号若しくは第五十条の二第一項第一号、第五号、第九号若しくは第十二号の規定に基づき設けられる局所排気装置(第三条第一項ただし書及び第三十八条の十六第一項ただし書の局所排気装置を含む。)

 第三条、第四条第四項、第五条第一項、第三十八条の十二第一項第二号、第三十八条の十七第一項第一号若しくは第三十八条の十八第一項第一号の規定により、又は第五十条第一項第六号若しくは第五十条の二第一項第一号、第五号、第九号若しくは第十二号の規定に基づき設けられるプッシュプル型換気装置(第三十八条の十六第一項ただし書のプッシュプル型換気装置を含む。)

三~五 (略)

【有機則】

(定義)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一~三 (略)

 第二種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。

 令別表第六の二第一号から第十三号まで、第十五号から第二十二号まで、第二十四号、第二十五号、第三十号、第三十四号、第三十五号、第三十七号、第三十九号から第四十二号まで又は第四十四号から第四十七号までに掲げる物

ロ及びハ (略)

五及び六 (略)

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(局所排気装置の定期自主検査)

第20条 令第十五条第一項第九号の厚生労働省令で定める局所排気装置(有機溶剤業務に係るものに限る。)は、第五条又は第六条の規定により設ける局所排気装置とする。

2及び3 (略)

(1)規定されていない。塩化水素は第三類特定化学物質である。第三類特定化学物質は、基本的に大量漏洩ろうえいによる災害を防止するという観点から規制されている。そのため局所排気装置の設置は義務付けられていない。

従って、局所排気装置に定期自主検査が義務付けられているわけがないのである。そのことを知っていれば(1)と(4)は誤りだと分かるであろう。

(2)規定されていない。全体換気装置は安衛令第15条第1項第九号の対象ではない。なお、金属をアーク溶接する作業等を行う場所には全体換気装置等の設置が必要となることは覚えておく必要がある。

なお、アーク溶接は粉じん則の対象ではない(アーク切断は対象)。

(3)規定されていない。エタノールは有機溶剤でもなければ特定化学物質でもない。従って、局所排気装置の設置が義務付けられているわけがないし、局所排気装置に定期自主検査が義務付けられているはずもない。

(4)規定されていない。アンモニアは特化則の第3類物質であり、アンモニアを使用する屋内の作業場所にプッシュプル型換気装置の設置は義務付けられていない。従って、定期自主検査は義務付けられていない。

(5)規定されている。トルエンは、有機則第1条第四号の規定により第2種有機溶剤である。第2種有機溶剤を取扱う屋内の作業場には有機則第5条により局所排気装置を取り付けなければならず、この局所排気装置は有機則第20条により定期自主検査が必要となる。

【まとめ】

  • 法令で設置の義務のある局所排気装置とプッシュプル型換気装置は、定期自主検査が必要
  • 第一類特定化学物質と第二類特定化学物質には、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の設置が義務付けられている。
  • 第1種有機溶剤と第2種有機溶剤には、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の設置が義務付けられている。
  • 第3種有機溶剤は、タンク等の内部などで局所排気装置又はプッシュプル型換気装置の設置が義務付けられている。
2023年04月08日執筆