第1種衛生管理者試験 2022年4月公表 問20

特殊健康診断




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2022年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2022年04月公表問題 問20 難易度 特殊健康診断に関する知識問題である。過去問は少ないが確実に正答できなければならない。
特殊健康診断

問20 特殊健康診断に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)有害物質による健康障害は、多くの場合、諸検査の異常などの他覚的所見より、自覚症状が先に出現するため、特殊健康診断では問診の重要性が高い。

(2)特殊健康診断における生物学的モニタリングによる検査は、有害物の体内摂取量や有害物による健康影響の程度を把握するための検査である。

(3)体内に取り込まれた鉛の生物学的半減期は、数時間と短いので、鉛健康診断における採尿及び採血の時期は、厳重にチェックする必要がある。

(4)振動工具の取扱い業務に係る健康診断において、振動障害の有無を評価するためには、夏季における実施が適している。

(5)情報機器作業に係る健康診断では、眼科学的検査などとともに、上肢及び下肢の運動機能の検査を行う。

正答(2)

【解説】

(1)誤り。有害物質による健康診断では、問診が重要であることは言うまでもない。それは、問診における自覚症状やばく露状況の把握が重要だからであって、本肢のような理由からではない。

そもそも、有害物質による健康障害で、諸検査の異常などの他覚的所見より自覚症状が先に出現するとは限らない。また、問診では重要な所見を見落とすリスクもある。

(2)正しい。特殊健康診断における生物学的モニタリングによる検査は、有害物の体内摂取量や有害物による健康影響の程度を把握するための検査である。

体内に摂取された有害物の量と、排泄された量との関係が明らかな有害物の場合に、排泄された物質の量を分析することによって、体内に蓄積された有害物の量を推定するのである。

(3)誤り。体内に取り込まれた鉛の生物学的半減期は対象となる組織にもよるが、血中及び軟部組織における鉛の半減期は約 28~36 日で、骨の場合は5年~60年と推定されている。このため、遺骨は、生存時における長期にわたる鉛の低レベルばく露の指標媒体とすることができる。

なお、有機溶剤の生物学的半減期は、数時間と短いので、鉛健康診断における採尿及び採血の時期は、厳重にチェックする必要がある。

(4)誤り。「振動工具(チエンソー等を除く。)の取扱い等の業務に係る特殊健康診断について」において、振動工具の取扱い業務に係る特殊健康診断の実施時期は、少なくとも1回は冬季に行われることとされている。

日本産業衛生学会の「振動障害の診断ガイドライン 2013」でも「冷水浸漬検査の水温は 10℃± 0.5℃以内とし、恒温漕内の水温均一化のために検査中は攪拌する。検査は原則として寒冷期(秋から冬)に、午前 9 時から午後 6 時の間に実施する」とされている。

(5)誤り。「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」によれば、情報機器作業に係る健康診断では、眼科学的検査などとともに、上肢の運動機能運動機能の検査を行うこととされている。下肢の運動機能の検査を行うこととはされていない。

2022年04月03日執筆