第1種衛生管理者試験 2022年4月公表 問16

作業環境中の有害要因による健康障害




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、試験協会が2022年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。

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2022年04月公表問題 問16 難易度 作業環境中の有害要因に関する基本的な知識問題。頻出事項でもあり、正答できなければならない。
作業環境中の有害要因

問16 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)全身振動障害では、レイノー現象などの末しょう循環障害や手指のしびれ感などの末しょう神経障害がみられ、局所振動障害では、関節痛などの筋骨格系障害がみられる。

(2)減圧症は、潜かん作業者、潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた窒素の気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻などの症状がみられる。

(3)凍そうは、皮膚組織の凍結死を伴うしもやけのことで、0℃以下の寒冷にばく露することによって発生する。

(4)電離放射線による中枢神経系障害は、確率的影響に分類され、被ばく線量がしきい値を超えると発生率及び重症度が線量の増加に応じて増加する。

(5)金属熱は、金属の溶融作業において、高温環境により体温調節中枢が麻することにより発生し、長期間にわたる発熱、関節痛などの症状がみられる。

正答(2)

【解説】

(1)誤り。局所振動障害で現れる症状が、全身振動障害の症状として説明されている。

全身振動障害で、現時点で問題となってるのは腰痛であるが、内臓機能障害も指摘されている。なお、車酔いのような一過性の症状がみられることもある。レイノー現象などの末しょう循環障害や手指のしびれ感などの末しょう神経障害がみられることはない。

一方、局所振動障害では、レイノー現象などの末しょう循環障害や手指のしびれ感などの末しょう神経障害がみられる。なお、関節痛などの筋骨格系障害などがみられるとする報告(※)もある。

(2)正しい。減圧症は、潜かん作業者、潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた窒素の気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻などの症状がみられる。

(3)誤り。凍瘡とは、普通の「しもやけ」のことである。氷点下のような極寒条件よりも、気温5℃前後の環境や、昼夜の気温差が激しいときなどに起こる。

また、皮膚組織の凍結壊死を伴う場合は「凍傷」と呼ばれ、「しもやけ」とは異なる。気温が-4℃以下に長時間晒されたような場合に発生する。

(4)誤り。電離放射線による健康への影響は、確定的影響と確率的影響に分けられる。確定的影響では、線量が大きいほど障害の程度が重篤となり、しきい値がある。一方、確率的影響では、線量が大きいほど障害に罹患する確率が高くなり、しきい値がないと考えられている。また、被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを挽発性影響と呼ぶ。受験対策としては、急性影響、白内障及び不妊が確定的影響で、他は確率的影響だと覚えておけばよい。

そして、電離放射線による中枢神経系障害は、放射線による急性障害の中でもっとも重篤な影響に分類されており、数十グレイ以上の高線量を短時間内に被ばくした場合に発生する。急性障害であり、確定的影響に分類される。

(5)誤り。金属熱は、金属熱は、鉄、アルミニウムなどの金属を溶融する作業などで金属のヒュームを吸入することにより発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられる。金属熱は、金属の溶融作業において、高温環境により体温調節中枢が麻することにより発生するものではない。

2022年04月03日執筆