問6 有機溶剤を取り扱う場合の措置について、有機溶剤中毒予防規則に違反しているものは次のうちどれか。
ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所の空気清浄装置を設けていない局所排気装置の排気口で、厚生労働大臣が定める濃度以上の有機溶剤を排出するものの高さを、屋根から2mとしている。
(2)第三種有機溶剤等を用いて払しょくの業務を行う屋内作業場について、定期に、当該有機溶剤の濃度を測定していない。
(3)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に最大0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有する側方吸引型外付け式フードの局所排気装置を設け、かつ、作業に従事する労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
(4)屋内作業場で、第二種有機溶剤等を用いる試験の業務に労働者を従事させるとき、有機溶剤作業主任者を選任していない。
(5)有機溶剤等を入れてあった空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものを、屋外の一定の場所に集積している。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、試験協会が2022年4月に公表した第1種衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。
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2022年04月公表問題 | 問06 | 難易度 | 有機溶剤中毒予防規則に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。 |
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有機溶剤中毒予防規則 | 4 |
問6 有機溶剤を取り扱う場合の措置について、有機溶剤中毒予防規則に違反しているものは次のうちどれか。
ただし、同規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。
(1)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所の空気清浄装置を設けていない局所排気装置の排気口で、厚生労働大臣が定める濃度以上の有機溶剤を排出するものの高さを、屋根から2mとしている。
(2)第三種有機溶剤等を用いて払しょくの業務を行う屋内作業場について、定期に、当該有機溶剤の濃度を測定していない。
(3)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に最大0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有する側方吸引型外付け式フードの局所排気装置を設け、かつ、作業に従事する労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。
(4)屋内作業場で、第二種有機溶剤等を用いる試験の業務に労働者を従事させるとき、有機溶剤作業主任者を選任していない。
(5)有機溶剤等を入れてあった空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものを、屋外の一定の場所に集積している。
正答(3)
【解説】
(1)違反ではない。空気清浄装置を設けていない局所排気装置の排気口であったとしても、有機則第15条の2第2項により、屋根から2mとしているのであれば違反とはならない。
なお、局所排気装置に空気清浄装置を設けなければならないという規定はない。
【有機溶剤中毒予防規則】
(排気口)
第15条の2 (第1項 略)
2 事業者は、空気清浄装置を設けていない局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置(屋内作業場に設けるものに限る。)又は第十二条第一号の排気管等の排気口の高さを屋根から一・五メートル以上としなければならない。ただし、当該排気口から排出される有機溶剤の濃度が厚生労働大臣が定める濃度に満たない場合は、この限りでない。
(2)違反ではない。有機則第28条第1項の規定によれば、作業環境測定を行わなければならないのは、「(安衛)令別表第六の二第一号から第四十七号までに掲げる有機溶剤」であるが、これは第1種及び第2種有機溶剤である(※)。
※ 安衛令別表第6の第14号、第23号26号、第27号、第29号、第31号~第33号、第36号及び第43号は削除されている。従って第3種有機溶剤は、第48号~第54号の物、及び、それらの混合物であって第1種及び第2種有機溶剤ではないものである。
従って、払しょくの業務を行う屋内作業場であるかどうかにかかわらず、第三種有機溶剤等を用いて行う作業について、有機溶剤の濃度を測定していなくても違反とはならない。
そもそも、第三種有機溶剤等はいずれも混合物(ガソリンや石油ナフサなど)であり、測定を行うことが原理的に不可能である。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 有機溶剤 労働安全衛生法施行令(以下「令」という。)別表第六の二に掲げる有機溶剤をいう。
二 (略)
三 第一種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。
イ 令別表第六の二第二十八号又は第三十八号に掲げる物
ロ イに掲げる物のみから成る混合物
ハ イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの
四 第二種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。
イ 令別表第六の二第一号から第十三号まで、第十五号から第二十二号まで、第二十四号、第二十五号、第三十号、第三十四号、第三十五号、第三十七号、第三十九号から第四十二号まで又は第四十四号から第四十七号までに掲げる物
ロ イに掲げる物のみから成る混合物
ハ イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物又は前号イに掲げる物を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するもの(前号ハに掲げる物を除く。)
五 第三種有機溶剤等 有機溶剤等のうち第一種有機溶剤等及び第二種有機溶剤等以外の物をいう。
六 (略)
2 (略)
(測定)
第28条 令第二十一条第十号の厚生労働省令で定める業務は、令別表第六の二第一号から第四十七号までに掲げる有機溶剤に係る有機溶剤業務のうち、第三条第一項の場合における同項の業務以外の業務とする。
2及び3 (略)
(3)違反となる。第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務は、有機則第1条第1項(第六号ヌ)により、有機溶剤業務である。従って、同規則第5条の規定により、これを屋内作業場で行う場合には、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
本問は、問題文によって「同規則に定める適用除外及び設備の特例はない」のであるから、作業に従事する労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させたとしても、同規則第5条の規定は除外されない。
従って、本肢の局所排気装置は同規則第16条第1項の要件を満たさなければならない。そして、同規則第16条第1項によれば、外付け式フードの場合、制御風速は側方吸引型では0.5m/s以上でなければならないとされている。
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~リ (略)
ヌ 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
ル及びヲ (略)
2 (略)
(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)
第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。
(局所排気装置の性能)
第16条 局所排気装置は、次の表の上欄に掲げる型式に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。
型式 | 制御風速(メートル/秒) | |
---|---|---|
囲い式フード | 0.4 | |
外付け式フード | 側方吸引型 | 0.5 |
下方吸引型 | 0.5 | |
上方吸引型 | 1.0 | |
備考 一 この表における制御風速は、局所排気装置のすべてのフードを開放した場合の制御風速をいう。 二 この表における制御風速は、フードの型式に応じて、それぞれ次に掲げる風速をいう。 イ 囲い式フードにあつては、フードの開口面における最小風速 ロ 外付け式フードにあつては、当該フードにより有機溶剤の蒸気を吸引しようとする範囲内における当該フードの開口面から最も離れた作業位置の風速 |
2 (略)
(4)違反ではない。有機則第19条カッコ書きの規定により、作業にかかわらず「有機溶剤等を用いる試験の業務」に労働者を従事させるときは、有機溶剤作業主任者を選任しなくとも違反ではない。
試験・研究の業務に従事するような者は、有機溶剤の有害性や健康防止対策について十分な知識があるだろうから、作業主任者を選任する必要はないというのが法令の考えなのである。現実は、必ずしもそうではないのが実態ではあるが・・・。
【労働安全衛生法】
(作業主任者)
第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
【労働安全衛生法施行令】
(作業主任者を選任すべき作業)
第6条 法第十四条の政令で定める作業は、次のとおりとする。
一~二十一 (略)
二十二 屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において別表第六の二に掲げる有機溶剤(当該有機溶剤と当該有機溶剤以外の物との混合物で、当該有機溶剤を当該混合物の重量の五パーセントを超えて含有するものを含む。第二十一条第十号及び第二十二条第一項第六号において同じ。)を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるものに係る作業
二十三 (略)
【有機溶剤中毒予防規則】
(定義等)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一~五 (略)
六 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。
イ~ヌ (略)
ル 有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務
ヲ (略)
2 (略)
(有機溶剤作業主任者の選任)
第19条 令第六条第二十二号の厚生労働省令で定める業務は、有機溶剤業務(第一条第一項第六号ルに掲げる業務を除く。)のうち次に掲げる業務以外の業務とする。
一及び二 (略)
2 (略)
(5)違反ではない。有機溶剤等を入れてあった空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものについて、有機則第36条は、屋外の一定の場所に集積していること等を規定している。
もっとも、現実にそんなことをすれば、近隣住民から苦情が出るだろうし、自然発火のおそれも否定できない。実務では、容器を密閉して室内の決められた場所に集積する必要がある。なお、その場合でも爆発火災のおそれには十分注意すること。
【有機溶剤中毒予防規則】
(空容器の処理)
第36条 事業者は、有機溶剤等を入れてあつた空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものについては、当該容器を密閉するか、又は当該容器を屋外の一定の場所に集積しておかなければならない。