問13 有機溶剤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)有機溶剤は、呼吸器から吸収されやすいが、皮膚から吸収されるものもある。
(2)メタノールによる障害として顕著なものは、網膜細動脈瘤を伴う脳血管障害である。
(3)キシレンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物は、メチル馬尿酸である。
(4)有機溶剤による皮膚又は粘膜の症状としては、皮膚の角化、結膜炎などがある。
(5)低濃度の有機溶剤の繰り返しばく露では、頭痛、めまい、物忘れ、不眠などの不定愁訴がみられる。
このページは、試験協会が2021年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2021年04月公表問題 | 問13 | 難易度 | きちんと学習していれば正答できる問題。確実に正答しておきたい問題である。 |
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有機溶剤による健康影響 | 3 |
問13 有機溶剤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)有機溶剤は、呼吸器から吸収されやすいが、皮膚から吸収されるものもある。
(2)メタノールによる障害として顕著なものは、網膜細動脈瘤を伴う脳血管障害である。
(3)キシレンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物は、メチル馬尿酸である。
(4)有機溶剤による皮膚又は粘膜の症状としては、皮膚の角化、結膜炎などがある。
(5)低濃度の有機溶剤の繰り返しばく露では、頭痛、めまい、物忘れ、不眠などの不定愁訴がみられる。
正答(2)
【解説】
(1)正しい。有機溶剤は、揮発性が高いため呼吸器から吸収されやすいが、皮膚から吸収されないわけではない。2015年の福井県の化学工場におけるo-トルイジンによる膀胱がんの発生事例は、経皮吸収によるものと考えられている。
クロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、スチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンなどは経皮吸収の恐れがある。
なお、SDSでおなじみの「皮膚刺激性・皮膚腐食性」は皮膚そのものに影響することであり、「皮膚吸収のおそれ」とは別なことなので留意すること。
(2)誤り。メタノールによる健康障害として顕著なものは、眼に対する重篤な損傷、中枢神経系への影響、麻酔作用などである。
網膜細動脈瘤は高血圧のある場合に生じるおそれがある疾病である。脳血管障害もどちらかといえば生活習慣病である。
(3)正しい。キシレンのばく露の生物学的モニタリングの指標としての尿中代謝物は、メチル馬尿酸である。この他、以下のものも併せて覚えておく。
物質名 | 検査内容 |
---|---|
トルエン | 尿中馬尿酸 |
キシレン | 尿中メチル馬尿酸 |
スチレン | 尿中マンデル酸 |
テトラクロルエチレン | 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物 |
1.1.1-トリクロルエタン | 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物 |
トリクロルエチレン | 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物 |
N.N-ジメチルホルムアミド | 尿中N-メチルホルムアミド |
ノルマルヘキサン | 尿中2,5-ヘキサンジオン |
鉛 | 血液中鉛、尿中デルタアミノレブリン酸 |
(4)正しい。有機溶剤による皮膚の急性の症状としては、皮膚の痛み、紅斑、水疱などがあり、脱脂作用によって亀裂、角化(苔癬化)、紅斑局面などを引き起こすことがある。
眼の粘膜の急性症状としては、流涙、充血、眼痛などを起こし、結膜炎を引き起こすことがある。
(5)正しい。低濃度の有機溶剤の繰り返しばく露により、精神・神経障害(多発神経炎、視神経炎、小脳失調、初老期痴呆など)を起こすことがある。その症状として、頭痛、頭重感、いらいら、めまい、不眠、記憶力の低下、失神、手足のしびれ感、神経痛、脱力、麻痺などの不定愁訴がみられる。