問6 事業者が、法令に基づく次の措置を行ったとき、その結果について所轄労働基準監督署長に報告することが義務付けられているものはどれか。
(1)高圧室内作業主任者の選任
(2)特定化学設備についての定期自主検査
(3)定期の有機溶剤等健康診断
(4)雇入時の特定化学物質健康診断
(5)鉛業務を行う屋内作業場についての作業環境測定
このページは、試験協会が2021年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。
柳川に著作権があることにご留意ください。
2021年04月公表問題 | 問06 | 難易度 | 監督署長への報告義務の対象のうち基本的なものは覚えておく。本問は正答できなければならない。 |
---|---|---|---|
監督署長への報告業務 | 1 |
問6 事業者が、法令に基づく次の措置を行ったとき、その結果について所轄労働基準監督署長に報告することが義務付けられているものはどれか。
(1)高圧室内作業主任者の選任
(2)特定化学設備についての定期自主検査
(3)定期の有機溶剤等健康診断
(4)雇入時の特定化学物質健康診断
(5)鉛業務を行う屋内作業場についての作業環境測定
正答(3)
【解説】
安衛法で、一般の事業者に対して行政庁(厚労大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長)へ提出することが義務付けられているものに「届出」と「報告」がある。「届出」は行政庁に対して一定の事項の通知をする行為であり、行政庁がその内容を審査して問題があれば修正を指導することがある。これに対し、「報告」は法令上は、事実、状況等を行政庁に告げ知らせることであり、法令上は行政は受け取るだけである。
従って、行政庁は、それを知ることによって何らかの施策に活かせるものということになる。それがひとつのヒントになろう。
なお、安衛法の「報告」の義務は、いくつかの条文に定められている(※)が、第100条によって包括的に定められており、これを根拠として省令に様々な定めがある。
※ そして、これらの報告は2025年1月1日より原則として電子申請が義務付けられる。このため、(3)の解説に挙げた条文も改正されるが、本問の正誤に影響はない。なお、改正の詳細は本サイトの「労働者死傷病報告等の電子申請の義務化」を参考にして頂きたい。
(1)誤り。高圧室内作業に限らず、作業主任者は作業を行わせるときに、そのつど選任しなければならない(もちろん、実際には予め包括的に選任しておけばよいが、作業のときに作業主任者が明確になっており、かつその職務を行わなければならない。)。そんなものをいちいち報告させるはずがあるまい。
【高気圧作業安全衛生規則】
(作業主任者)
第10条 事業者は、令第6条第一号の高圧室内作業については、高圧室内作業主任者免許を受けた者のうちから、作業室ごとに、高圧室内作業主任者を選任しなければならない。
2 (略)
(2)誤り。特定化学設備に限らず定期自主検査については、記録の保存義務はあるが報告義務はない。
【特定化学物質障害予防規則】
第31条 事業者は、特定化学設備又はその附属設備については、二年以内ごとに一回、定期に、次の各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。ただし、二年を超える期間使用しない特定化学設備又はその附属設備の当該使用しない期間においては、この限りでない。
一及び二 (略)
2 (略)
(定期自主検査の記録)
第32条 事業者は、前二条の自主検査を行なつたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。
一から六 (略)
(3)正しい。有機則第30条の3により、定期の有機溶剤等健康診断を行ったときは、遅滞なく所轄の労働基準監督署長に報告しなければならない。
【有機溶剤中毒予防規則】
第29条 令第22条第1項第六号の厚生労働省令で定める業務は、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあつては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、第3条第1項の場合における同項の業務以外の業務とする。
2 事業者は、前項の業務に常時従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及びその後5月以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
一~四 (略)
3~6 (略)
(健康診断結果報告)
第30条の3 事業者は、第29条第2項、第3項又は第5項の健康診断(定期のものに限る。)を行つたときは、遅滞なく、有機溶剤等健康診断結果報告書(様式第三号の二)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(4)誤り。特定化学物質健康診断に限らず、雇入時の健康診断についての報告は義務付けられていない。
特定化学物質健康診断について言えば、雇入時の特殊健康診断の結果は、その事業場における特化物へのばく露状況を反映しているわけではない。従って、提出させる意味がないのである。
【特定化学物質障害予防規則】
第39条 事業者は、令第二十二条第一項第三号の業務(石綿等の取扱い又は試験研究のための製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務及び別表第一第三十七号に掲げる物を製造し、又は取り扱う業務を除く。)に常時従事する労働者に対し、別表第三の上欄に掲げる業務の区分に応じ、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後同表の中欄に掲げる期間以内ごとに一回、定期に、同表の下欄に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。
2から6 (略)
(健康診断結果報告)
第41条 事業者は、第三十九条第一項から第三項までの健康診断(定期のものに限る。)を行つたときは、遅滞なく、特定化学物質健康診断結果報告書(様式第三号)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
(5)誤り。鉛業務に限らず、作業環境測定の結果を監督署長に報告する義務はない。