第1種衛生管理者試験 2020年10月公表 問40

腎臓の働きと尿




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 このページは、試験協会が2020年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年10月公表問題 問40 難易度 腎臓の働き及び尿に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない。
腎臓の働きと尿

問40 腎臓又は尿に関する次のAからDの記述について、誤っているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A ネフロン(腎単位)は、尿を生成する単位構造で、1個の腎小体とそれに続く1本の尿細管から成り、1個の腎臓中に約100万個ある。

B 尿の約95%は水分で、約5%が固形物であるが、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われている。

C 腎機能が正常な場合、糖はボウマンのう中にし出されないので尿中には排出されない。

D 腎機能が正常な場合、大部分のたん白質はボウマン囊中に濾し出されるが、尿細管でほぼ100%再吸収されるので、尿中にはほとんど排出されない。

(1)A,B

(2)A,C

(3)A,D

(4)B,C

(5)C,D

正答(5)

【解説】

何故か試験協会は、衛生管理者には腎臓の詳しい働きについての知識が必要だと思っているらしい。これがよく出題されるのである。

もともと腎臓という臓器は、太古の動物が海から川へ進出したときに手に入れたものである。彼らの皮膚は半透膜だったため、真水の川では塩分の多い体内に水が侵入してくるので、これを体外に排出する仕組みが必要になったのである。現在では、血液中の老廃物を尿として体外に排出する機能を有している。

老廃物をこしとる仕組みとして、腎臓内にはネフロンと呼ばれる多数の「装置」が備わっている。個々のネフロンは腎小体(「糸球体」と「ボウマン囊」)及び「尿細管」という組織から成り立っている。

血液は、「糸球体」「ボウマン囊」「尿細管」の順で流れる。最初の糸球体を血液が通過するとき、蛋白質や血球は通過できず、それ以外の糖質、アミノ酸、電解質、尿素などはボウマン囊へ濾し出される。ただ、糖質、アミノ酸、電解質などは有用なものなので、尿細管で大部分の水分と共に再吸収される。残りの尿素などが尿として排出されるのである。

A 正しい。ネフロン(腎単位)は、尿を生成する単位構造で、1個の腎小体とそれに続く1本の尿細管から成る。1個の腎臓中に約100万個程度存在し、左右合わせて200万個程度である。それぞれのネフロンにおいて、濾過、再吸収、分泌、濃縮が行われて尿が排出される。

B 正しい。やや微妙ではあるが、(5)が明らかに誤っているので正しいとする。尿の約95%は水分だとするが、これはそのときの状況によって大きく変わる。ちなみにWikipediaの尿によれば尿の約98%は水分で、約2%が固形物とされるが、文献によってかなり異なる。

なお、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われていることは正しい。

C 誤り。正常な腎機能であっても、糖はボウマン囊中に濾し出される。ただし、ほとんどは尿細管で再吸収されるので、尿中に排出されないことは正しい。

D 誤り。腎機能が正常な場合、大部分の蛋白質は糸球体を濾すことはできない。なお、本肢は「蛋白質」を「糖」と修正すれば正しい。

2021年01月03日執筆