第1種衛生管理者試験 2020年10月公表 問18

有機溶剤の人体に対する影響




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合格

 このページは、試験協会が2020年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年10月公表問題 問18 難易度 有機溶剤による健康障害についての基本的な問題である。確実に正答できなければならない。
有機溶剤の人体への影響

問18 有機溶剤の人体に対する影響に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)脂溶性があり、脂肪の多い脳などに入りやすい。

(2)高濃度ばく露による急性中毒では、中枢神経系抑制作用により酩酊めいてい状態をきたし、重篤な場合は死に至る。

(3)低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、頭痛、めまい、記憶力減退、不眠などの不定愁訴がみられる。

(4)皮膚や粘膜に対する症状には、黒皮症、鼻中隔穿せん孔などがある。

(5)一部の有機溶剤は、肝機能障害や腎機能障害を起こす。

正答(4)

【解説】

酔っ払ったブタ

有機溶剤の人体に対する影響などというと難しく聞こえるが、酒類もエタノールの濃度が5wt%を超えれば有機溶剤である。

アルコールによる影響を考えれば、簡単に正答に達することができる。

(1)正しい。有機溶剤の特徴として脂溶性に富むこと、揮発性が大きいことが挙げられる。このため、脂肪の多い脳などに入りやすい。

(2)正しい。これは解説するまでもありまい。酒類で引き起こされる急性アルコール中毒がよく知られている。

酒類の一気飲みなどで、中枢神経系抑制作用による酩酊状態をきたし、重篤な場合の死亡事故がしばしば発生する。有機溶剤の高濃度ばく露でも同様なことが起きるのである。

(3)正しい。低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、頭痛、めまい、記憶力減退、不眠などの不定愁訴がみられる。

(4)誤り。有機溶剤は、様ざまな皮膚障害を引き起こすが、黒皮症や鼻中隔穿孔がみられることはない。なお、黒皮症は砒素によって、鼻中隔穿孔はクロム、砒素などによって発症することがある。

(5)正しい。血液中の有機溶剤は、そのままでは分子量が小さく、水溶性の物を除けば腎臓の糸球体で濾過されても尿細管から再吸収されてしまう。腎臓は、そのとき高濃度の有機溶剤にさらされることとなり、多くの有機溶剤は腎機能障害をもたらす。

また、有機溶剤は、一部は呼気から排出されるが、肝臓で分解されて排出される。そのため肝臓に影響を与え、肝機能障害を起こすことがある。

2021年01月01日執筆