第1種衛生管理者試験 2020年10月公表 問17

化学物質による健康障害




問題文
トップ
合格

 このページは、試験協会が2020年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2020年10月公表問題 問17 難易度 化学物質による健康障害に関する基本的な知識問題。頻出事項であり、正答できなければならない。
化学物質による健康障害

問17 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)硫化水素による中毒では、意識消失、呼吸麻などがみられる。

(2)ノルマルヘキサンによる健康障害では、末しょう神経障害などがみられる。

(3)N,N -ジメチルホルムアミドによる健康障害では、頭痛、肝機能障害などがみられる。

(4)ふっ化水素による中毒では、貧血、溶血、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼなどがみられる。

(5)ベンゼンによる健康障害では、再生不良性貧血、白血病などがみられる。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。硫化水素による中毒では、700~800ppmで意識消失、1,000~2,000ppmで呼吸麻痺などがみられる。なお、700ppm程度より濃度が高くなると臭気を感じなくなることも覚えておこう。

ガス濃度[ppm] 作用
0.025 臭いで感知しうる限界
0.3 明瞭に感知される
5~10 悪臭を強く感じる
20~50 目の炎症
50~150 頭痛、めまい、吐き気
150~200 悪臭の麻痺により臭気を感じなくなる
300 亜急性中毒(意識不明)
700~800 臭気を感ぜずに意識不明、30 分で生命危機
1000~2000 失神、痙攣、呼吸停止、死に至る

(2)正しい。ノルマルヘキサンは、反復ばく露により、知覚運動の末梢神経障害を誘発する。日本のサンダル作業者と台湾の印刷作業者において、著しい末梢神経障害が報告されている。

(3)正しい。職業暴露における疫学調査で、頭痛、消化不良といった訴えや肝機能障害、気道への刺激、γ-GPT の上昇等が認められている。急性の職業性ばく露症例では、標的器官は肝臓で、肝臓への影響とそれに伴う消化器系の障害が報告されている

(4)誤り。弗化水素による中毒で、貧血、溶血、メトヘモグロビン形成によるチアノーゼなどがみられるという報告はない。なお、弗化水素に限らず、弗化物による慢性中毒として、斑状歯(歯牙弗化物症)や骨硬化症がみられる。

(5)正しい。ベンゼンの長期ばく露による毒性として造血器障害、悪性腫瘍等があり、疾患としては再生不良性貧血、溶血、白血病等を生じる。

  1. (1):表は環境省長野自然環境事務所「地獄谷歩道沿いの管理作業における安全対策マニュアル作成の手引き」(2012年3月)による。
  2. (2):国立医薬品食品衛生研究所の資料を参照した。
  3. (3):環境省の資料を参照した。
2021年01月01日執筆