第1種衛生管理者試験 2020年10月公表 問16

作業環境中の有害要因による健康障害




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 このページは、試験協会が2020年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年10月公表問題 問16 難易度 作業環境中の有害要因に関する基本的な知識問題。頻出事項でもあり、正答できなければならない。
作業環境中の有害要因

問16 作業環境における有害要因による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)窒素ガスで置換したタンク内の空気など、ほとんど無酸素状態の空気を吸入すると徐々に窒息の状態になり、この状態が5分程度継続すると呼吸停止する。

(2)減圧症は、潜かん作業者、潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの急な減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた窒素の気泡化が関与して発生し、皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻などの症状がみられる。

(3)金属熱は、金属の溶融作業などで亜鉛、銅などの金属の酸化物のヒュームを吸入することにより発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられる。

(4)電離放射線による中枢神経系障害は、確定的影響に分類され、被ばく線量がしきい値を超えると重篤度が線量の増加に応じて増加する。

(5)振動障害は、チェーンソーなどの振動工具によって生じる障害で、手のしびれなどの末しょう神経障害やレイノー現象などの末梢循環障害がみられる。

正答(1)

【解説】

(1)誤り。ほとんど無酸素状態の空気を吸入すると、肺胞毛細血管中の酸素濃度より肺胞内の酸素濃度の方が低くなる。こうなると、肺胞のガス交換が不可能になる。このため、酸素濃度の低い空気は一呼吸するだけでもきわめて危険である。徐々に窒息の状態になるわけではない。

(2)正しい。潜水業務における減圧症は、浮上による減圧に伴い、血液中に溶け込んでいた窒素が気泡となり、血管を閉塞したり組織を圧迫することにより発生する。皮膚のかゆみ、関節痛、神経の麻痺などの症状がみられる。

(3)正しい。金属熱は、金属の溶融作業などで亜鉛、銅などの金属の酸化物のヒュームを吸入することにより発生し、悪寒、発熱、関節痛などの症状がみられる。

(4)正しい。電離放射線による健康への影響は、確定的影響と確率的影響に分けられる。確定的影響では、線量が大きいほど障害の程度が重篤となり、しきい値がある。一方、確率的影響では、線量が大きいほど障害に罹患する確率が高くなり、しきい値がないと考えられている。また、被爆から発症までが数週間までのものを急性影響と呼び、数か月以上のものを挽発性影響と呼ぶ。受験対策としては、急性影響、白内障及び不妊が確定的影響で、他は確率的影響だと覚えておけばよい。

そして、電離放射線による中枢神経系障害は、放射線による急性障害の中でもっとも重篤な影響に分類されており、数十グレイ以上の高線量を短時間内に被ばくした場合に発生する。急性障害であり、確定的影響に分類される。

(5)正しい。局所振動障害は、チェーンソーなどの振動工具によって生じる障害で、手のしびれなどの末梢神経障害やレイノー現象などの末梢循環障害がみられる。

2021年01月01日執筆