第1種衛生管理者試験 2020年10月公表 問14

粉じんによる健康障害




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合格

 このページは、試験協会が2020年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年10月公表問題 問14 難易度 やや高度な選択肢もあるが、じん肺の基本を押さえておけば正答できる問題である。
じん肺と合併症

問14 粉じんによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)じん肺は、粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病である。

(2)じん肺の自覚症状は、初期にはあまりみられないが、進行するとせきたん、呼吸困難などがみられる。

(3)じん肺の合併症には、間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがある。

(4)石綿粉じんは、肺がん、胸膜中皮腫などの重篤な疾病を起こすおそれがある。

(5)米杉、ラワンなどの木材粉じんは、ぜんそくを起こすことがある。

正答(3)

【解説】

(1)正しい。じん肺の定義はじん肺法第2条に規定されている。条文のままの肢である。

ヒュームや粉じんが肺に吸いこまれて沈着すると、マクロファージは異物であるヒューム等を取り除こうとこれを貪食して体外へ排出しようとする。ところが、それがあまり激しいと肺の組織が傷つくことがある。そうなると、今度は傷ついた組織を修復するために線維組織が増え、これが増え過ぎると、逆に肺胞、細気管支、血管などが破壊されるのである。

【じん肺法】

(定義)

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 じん肺 粉じんを吸入することによつて肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病をいう。

二~五 (略)

2及び3 (略)

(2)正しい。肺の機能は十分な余裕があるため、じん肺の自覚症状は、初期にはあまりみられない。

症状の初期には、空気をはき出すのが難しくなる気道系の障害が現れ、さらに症状が進むと、肺そのものが硬くなったり、空気の出入りする量が減少したりする。さらに症状が進むと、咳、痰、喘鳴ぜんめい、息切れなどの症状が現れ、呼吸も困難になる。

(3)誤り。じん肺の合併症はじん肺法施行規則第1条に定められている。具体的には、①肺結核、②結核性胸膜炎、③続発性気管支炎、④続発性気管支拡張症、⑤続発性気胸及び⑥原発性肺がんの6種類である。これはすべて覚えておく必要がある

【じん肺法】

(定義)

第2条 (第1項 略)

 合併症の範囲については、厚生労働省令で定める。

 (略)

【じん肺法施行規則】

(合併症)

第1条 じん肺法(以下「法」という。)第二条第一項第二号の合併症は、じん肺管理区分が管理二又は管理三と決定された者に係るじん肺と合併した次に掲げる疾病とする。

 肺結核

 結核性胸膜炎

 続発性気管支炎

 続発性気管支拡張症

 続発性気胸

 原発性肺がん

(4)正しい。いわゆる「職業病リスト」と呼ばれる労基則別表1の2には、「石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫」が掲げられている。ここにいう中皮腫は胸膜中皮腫である。

【労働基準法施行規則】

別表第一の二 (第三十五条関係)

一~六 (略)

 (略)

1~7 (略)

 石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫

9~22 (略)

八~十一 (略)

(5)正しい。昭和45年1月7日基発第2号「米杉等による気管支ぜん息等の予防について」の記のⅠの「1」には「米杉、ネズコ等の木材には特異な成分(例えば、nezukone)が含まれており、これらの吸入をくりかえすと、気管支炎のみにとどまらず、気管支ぜん息を発生する」とされ、「2 気管支ぜん息等を発生させるおそれのある木材の種類」には「米杉、ネズコ、リョウブ、ラワン」が挙げられている。

2021年01月01日執筆