第1種衛生管理者試験 2020年4月公表 問20

労働衛生保護具




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合格

 このページは、試験協会が2020年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2020年04月公表問題 問20 難易度 労働衛生保護具に関する基本的な知識問題である。確実に正答できなければならない問題。
労働衛生保護具

問20 労働衛生保護具に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)ガス又は蒸気状の有害物質が粉じんと混在している作業環境中で防毒マスクを使用するときは、防じん機能を有する防毒マスクを選択する。

(2)防毒マスクの吸収缶の色は、一酸化炭素用は赤色で、有機ガス用は黒色である。

(3)送気マスクは、清浄な空気をボンベに詰めたものを空気源として作業者に供給する自給式呼吸器である。

(4)遮光保護具には、遮光度番号が定められており、溶接作業などの作業の種類に応じて適切な遮光度番号のものを使用する。

(5)騒音作業における防音保護具として、耳覆い(イヤーマフ)又は耳栓のどちらを選ぶかは、作業の性質や騒音の特性で決まるが、非常に強烈な騒音に対しては両者の併用も有効である。

正答(3)

【解説】

本問は、呼吸用保護具についての基本的な知識を問う問題である。呼吸用保護具については当サイトの「化学物質、粉じん等の保護具」の「2呼吸用保護具について」を参照して頂きたい。

(1)正しい。令和5年5月25日基発0525第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(以下「保護マスク通達」という。)の第3の1の(4)のウに「防じんマスクの使用が義務付けられている業務であっても、近くで有毒ガス等の発生する作業等の影響によって、有毒ガス等が混在する場合には、改めて作業環境の評価を行い、有効な防じん機能を有する防毒マスク、防じん機能を有するG-PAPR又は給気式呼吸用保護具を使用すること」とされている(※)

※ 本問出題当時は、平成17年2月7日基発第0207007号「防毒マスクの選択、使用等について」が有効であり、本文に示した「保護マスク通達」によって廃止されたが、本通達にも本肢と同じ記述があった。

しかし、通達の記述を知らなくても「防じん機能を有する防毒マスク」が存在していることを知ってさえいれば常識で正しいと分かるであろう。なお、この通達は、合格した後の業務でも必要になる。試験までに一度は眼を通しておくこと。

(2)正しい。一酸化炭素用防毒マスクの吸収缶の色は赤色であり、有機ガス用防毒マスクの吸収缶の色は黒色である。次の表は覚えておく必要がある。

対応ガスの種類 吸収缶の色
有機ガス用
ハロゲンガス用 灰色と黒
アンモニア用
亜硫酸ガス用 橙色(黄赤)
一酸化炭素用
酸性ガス用 灰色
シアン化水素用
臭化メチル用
硫化水素用

(3)誤り。送気マスクは、清浄な空気をパイプ、ホースなどにより作業者に供給する呼吸用保護具である。なお、送気マスクには、ホースマスクとエアラインマスクがある。

ボンベに充てんされた清浄空気を作業者に供給する自給式呼吸器は空気呼吸器という。なお、参考までに、給気式マスクの分類表を示しておく。

送気式 ホースマスク 肺力吸引型
手動送風機型
電動送風機型
エアラインマスク プレッシャデマンド型
デマンド型
一定流量型
自給式 空気呼吸器 プレッシャデマンド型
デマンド型
循環式酸素呼吸器

(4)正しい。遮光保護具には、JIS T 8141:2016により遮光度番号が定められている。溶接作業などの作業の種類に応じて適切な遮光度番号のものを使用する。

なお、遮光度番号の大きいフィルタ(おおむね10以上)を使用する作業においては必要な遮光度番号より小さい番号のものを2枚組み合せて、それに相当させて使用するのが好ましい。

(5)正しい。厚生労働省の、「騒音障害防止のためのガイドライン」「騒音障害防止のためのガイドラインの改訂について」(令和5年4月20日基発0420第2号))の「騒音障害防止のためのガイドラインの解説」に、「聴覚保護具には耳栓と耳覆い(イヤーマフ)があり、耳栓と耳覆いのどちらが適切であるかは、作業の性質や騒音の特性で決まるが、非常に強烈な騒音に対しては耳栓と耳覆いとの併用が有効であること」とされている。

※ なお、出題当時は「騒音障害防止のためのガイドラインの策定について」(平成4年10月1日基発第546号)(※)が有効であった。その後、2021年度に「騒音障害防止のためのガイドライン見直し検討会」が開催され、2022年3月22日に「騒音障害防止のためのガイドライン見直し方針」が作成されて、本文の通達により改訂されているが、結論は変わらない。

2020年07月26日執筆 2023年12月20日最終改訂