第1種衛生管理者試験 2019年4月公表 問10

女性労働者の就業禁止業務




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 このページは、試験協会が2019年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年04月公表問題 問10 難易度 女性労働者の就業禁止業務は基本である。確実に正答しておきたい問題である。
労働基準法の就業制限

問10 労働基準法に基づき、全ての女性労働者について、就業が禁止されている業務は次のうちどれか。

(1)20kg以上の重量物を継続的に取り扱う業務

(2)さく岩機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務

(3)異常気圧下における業務

(4)著しく寒冷な場所における業務

(5)病原体によって汚染された物の取扱いの業務

正答(1)

【解説】

労働基準法においては、女性に対する保護は、妊産婦等を主な対象としており、すべての女性労働者を対象とする規制は多くはない。すべての女性を対象とする規制は、第64条の2第二号で坑内業務の就業制限をかけていることと、第64条の3第1項で妊産婦にかけている規制を、同第2項で「女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務」について厚生労働省によってすべての女性に拡大することができるとしていることの2点である。なお、第64条の2は「18歳以上の女性」に限っているが、「18歳未満の女性」は年少者としての規制を受けるので重複して規制をかけることを避けただけである。

【労働基準法】

(坑内業務の就業制限)

第64条の2 使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。

 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後一年を経過しない女性 坑内で行われるすべての業務

 前号に掲げる女性以外の満十八歳以上の女性 坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの

(危険有害業務の就業制限)

第64条の3 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。

 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、厚生労働省令で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。

 前二項に規定する業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者の範囲は、厚生労働省令で定める。

【女性労働基準規則】

(危険有害業務の就業制限の範囲等)

第2条 法第64条の3第一項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。

 次の表の上欄に掲げる年齢の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる重量以上の重量物を取り扱う業務

年齢 重量(単位 キログラム)
断続作業の場合 継続作業の場合
満16歳未満 12
満16歳以上満18歳未満 25 15
満18歳以上 30 20

二~十七 (略)

十八 次の各号に掲げる有害物を発散する場所の区分に応じ、それぞれ当該場所において行われる当該各号に定める業務

 塩素化ビフエニル(別名PCB)、アクリルアミド、エチルベンゼン、エチレンイミン、エチレンオキシド、カドミウム化合物、クロム酸塩、五酸化バナジウム、水銀若しくはその無機化合物(硫化水銀を除く。)、塩化ニツケル(II)(粉状の物に限る。)、スチレン、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)、トリクロロエチレン、砒素化合物(アルシン及び砒化ガリウムを除く。)、ベータ―プロピオラクトン、ペンタクロルフエノール(別名PCP)若しくはそのナトリウム塩又はマンガンを発散する場所 次に掲げる業務(スチレン、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)又はトリクロロエチレンを発散する場所において行われる業務にあつては(2)に限る。)

(1)及び(2) (略)

 鉛及び安衛令別表第四第六号の鉛化合物を発散する場所 次に掲げる業務

(1)及び(2) (略)

 エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート)、エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)、キシレン、N・N―ジメチルホルムアミド、スチレン、テトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)、トリクロロエチレン、トルエン、二硫化炭素、メタノール又はエチルベンゼンを発散する場所 次に掲げる業務

(1)及び(2) (略)

十九~二十一 (略)

二十二 著しく寒冷な場所における業務

二十三 異常気圧下における業務

二十四 さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務

 (略)

第3条 法第六十四条の三第二項の規定により同条第一項の規定を準用する者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性以外の女性とし、これらの者を就かせてはならない業務は、前条第一項第一号及び第十八号に掲げる業務とする。

(1)労働基準法第64条の3第3項の委任を受けて、女性則第3条はすべての女性について同規則第2条第1項の第一号及び第十八号に規定する業務を適用している。そして、20kg以上の重量物を継続的に取り扱う業務は同条第1号により、妊産婦のみならずすべての女性に禁止されることとなる。

なお、同規則第3条によって禁止される対象には妊産婦は含まれないが、第2条はもともと妊産婦に適用される条文なのですべての女性に対して適用されることとなる(二重に規制することを避けた)のである。また、20kg以上の重量物を継続的に取り扱うことは18歳以上の女性に禁止されるが、18歳未満の女性はさらに軽量なものを継続的に扱うことが禁止されているので、当然に20kg以上の重量物を継続的に取り扱うことは禁止される。

(2)さく岩機等の使用によって身体に著しい振動を与える業務は、女性則第2条第1項第二十四号に規定されている(第一号及び第十八号に含まれない)。従って、妊産婦のみに禁止される。

(3)異常気圧下における業務は女性則第2条第1項第二十三号に規定されている。従って、妊産婦のみに禁止される。

(4)著しく寒冷な場所における業務は、女性則第2条第1項第二十二号に規定されている。従って、妊産婦のみに禁止される。

(5)病原体によって汚染された物の取扱いの業務は、妊産婦に対しても禁止されていない。これを禁止されると看護師は妊娠中就労の機会が狭くなるだろう。

2019年05月02日執筆 2019年05月28日修正