第1種衛生管理者試験 2019年4月公表 問05

有機溶剤中毒予防規則中の措置




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合格

 このページは、試験協会が2019年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年04月公表問題 問05 難易度 やや高度な内容ではあるが、基本的な内容である。きちんと学習していれば正答できる問題。
有機溶剤中毒予防規則

問5 有機溶剤業務を行う場合等の措置について、法令に違反しているものは次のうちどれか。

ただし、有機溶剤中毒予防規則に定める適用除外及び設備の特例はないものとする。

(1)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務に労働者を従事させるとき、その作業場所に設置した空気清浄装置を設けていない局所排気装置の排気口で、厚生労働大臣が定める濃度以上の有機溶剤を排出するものの高さを、屋根から1.5mとしている。

(2)第三種有機溶剤等を用いて払拭の業務を行う屋内作業場について、定期に、当該有機溶剤の濃度を測定していない。

(3)屋内作業場で、第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務を労働者に行わせるとき、その作業場所に最大0.4m/sの制御風速を出し得る能力を有する側方吸引型外付け式フードの局所排気装置を設け、かつ、作業に従事する労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させている。

(4)屋内作業場で、第二種有機溶剤等を用いる試験の業務に労働者を従事させるとき、有機溶剤作業主任者を選任していない。

(5)有機溶剤等を入れてあった空容器の処理として、有機溶剤の蒸気が発散するおそれのある空容器を屋外の一定の場所に集積している。

正答(3)

【解説】

本問は、有機則に関する問題である。安衛法関連省令の適用除外や特例は極めて複雑であるが、本問は、有機則における適用除外、設備の特例はないというのであるから、基本的な事項さえ知っていれば良い。

(1)本問で検討するべきことは、①局所排気装置に空気清浄装置を設けていないこと、及び②排気口を屋根から1.5mとしていることの2点である。①については、有機則では、局所排気装置に空気清浄装置を設けなければならないという規定は存在していない。②については、有機則第15条の2第2項に合致している。従って、本肢は違反とはならない。

なお、「第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務」が有機溶剤業務に該当するかどうかは、本問の場合には解答の正誤に影響を与えないが、有機則第1条により該当する。

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一から五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イからリ (略)

 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務

ル及びヲ (略)

 (略)

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(排気口)

第15条の2 (略)

 事業者は、空気清浄装置を設けていない局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置(屋内作業場に設けるものに限る。)又は第12条第1号の排気管等の排気口の高さを屋根から1.5m以上としなければならない。ただし、当該排気口から排出される有機溶剤の濃度が厚生労働大臣が定める濃度に満たない場合は、この限りでない。

(2)第三種有機溶剤については、作業環境測定の対象とはなっていない。第三種有機溶剤は混合物なので濃度の測定は事実上不可能なのである。

なお、条文で解説すると、作業環境の測定は有機則第28条第1項により、令別表第6の2第四十八号以下のものには義務付けられないが、有機則第1条第1項第三号から五号を詳細に見れば分かるように、第三種有機溶剤は令別表第6の2第四十八号以下のものに限定されるのである。

【労働安全衛生法】

(作業環境測定)

第65条 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。

2から5 (略)

【労働安全衛生法施行令】

(作業環境測定を行うべき作業場)

第21条 法第65条第1項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。

一から九 (略)

 別表第六の二に掲げる有機溶剤を製造し、又は取り扱う業務で厚生労働省令で定めるものを行う屋内作業場

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一及び二 (略)

 第一種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。

 令別表第6の2第二十八号又は第三十八号に掲げる物

 イに掲げる物のみから成る混合物

 イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物を当該混合物の重量の5%を超えて含有するもの

 第二種有機溶剤等 有機溶剤等のうち次に掲げる物をいう。

 令別表第6の2第一号から第十三号まで、第十五号から第二十二号まで、第二十四号、第二十五号、第三十号、第三十四号、第三十五号、第三十七号、第三十九号から第四十二号まで又は第四十四号から第四十七号までに掲げる物

 イに掲げる物のみから成る混合物

 イに掲げる物と当該物以外の物との混合物で、イに掲げる物又は前号イに掲げる物を当該混合物の重量の5%を超えて含有するもの(前号ハに掲げる物を除く。)

 第三種有機溶剤等 有機溶剤等のうち第一種有機溶剤等及び第二種有機溶剤等以外の物をいう。

 (略)

 (略)

(測定)

第28条 令第21条第十号の厚生労働省令で定める業務は、令別表第6の2第一号から第四十七号までに掲げる有機溶剤に係る有機溶剤業務のうち、第3条第1項の場合における同項の業務以外の業務とする。

2及び3 (略)

(3)第二種有機溶剤等が付着している物の乾燥は、有機則第1条第1項第六号により第二種有機溶剤業務に該当する。これを、屋内作業場で労働者に行わせるときは、同規則第5条により、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

そして、局所排気装置が満たすべき性能は同規則第16条第1項に定められており、側方吸引型の外付け式フードの場合、制御風速は0.5m/sでなければならない。従って、本肢は違反となる。

なお、本肢では労働者に有機ガス用防毒マスクを使用させているが、問題文により有機則における適用除外、設備の特例はないのであるから、違反を免れることはない。

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一から五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イからリ (略)

 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務

ル及びヲ (略)

 (略)

(第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る設備)

第5条 事業者は、屋内作業場等において、第一種有機溶剤等又は第二種有機溶剤等に係る有機溶剤業務(第一条第一項第六号ヲに掲げる業務を除く。以下この条及び第十三条の二第一項において同じ。)に労働者を従事させるときは、当該有機溶剤業務を行う作業場所に、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。

(局所排気装置の性能)

第16条 局所排気装置は、次の表の上欄に掲げる型式に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。

型式 制御風速(メートル/秒)
囲い式フード 0.4
外付け式フード 側方吸引型 0.5
下方吸引型 0.5
上方吸引型 1.0

備考

一 この表における制御風速は、局所排気装置のすべてのフードを開放した場合の制御風速をいう。

二 この表における制御風速は、フードの型式に応じて、それぞれ次に掲げる風速をいう。

イ 囲い式フードにあつては、フードの開口面における最小風速

ロ 外付け式フードにあつては、当該フードにより有機溶剤の蒸気を吸引しようとする範囲内における当該フードの開口面から最も離れた作業位置の風速

 (略)

(4)原則として、屋内作業場等で、第二種有機溶剤等を用いる業務に労働者を従事させるときは有機溶剤作業主任者を選任しなければならない。しかし、試験又は研究の業務については、作業主任者の選任義務はない。これは、試験・研究のような業務に従事している者は、高度の知識を有しているので作業主任者の選任は不要と考えられたための規定である。もっとも、実態が必ずしもそうではないことは、実務に就けばすぐに分かるだろうが・・・。

法令上は、作業主任者の選任を義務付ける有機溶剤業務は、有機則第6条第1項で定めているが、カッコ書きで試験・研究の業務を除いているのである。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一から二十一 (略)

二十二 屋内作業場又はタンク、船倉若しくは坑の内部その他の厚生労働省令で定める場所において別表第6の2に掲げる有機溶剤(当該有機溶剤と当該有機溶剤以外の物との混合物で、当該有機溶剤を当該混合物の重量の5%を超えて含有するものを含む。第21条第十号及び第22条第1項第六号において同じ。)を製造し、又は取り扱う業務で、厚生労働省令で定めるものに係る作業

二十三 (略)

【有機溶剤中毒予防規則】

(定義等)

第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一から五 (略)

 有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

イからヌ (略)

 有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務

 (略)

 (略)

(有機溶剤作業主任者の選任)

第19条 令第6条第二十二号の厚生労働省令で定める業務は、有機溶剤業務(第1条第1項第六号ルに掲げる業務を除く。)のうち次に掲げる業務以外の業務とする。

 第2条第1項の場合における同項の業務

 第3条第1項の場合における同項の業務

 (略)

(5)これは、有機則第36条の規定そのものである。違反にはならない。なお、この規定は覚えておくこと。

【有機溶剤中毒予防規則】

(空容器の処理)

第36条 事業者は、有機溶剤等を入れてあつた空容器で有機溶剤の蒸気が発散するおそれのあるものについては、当該容器を密閉するか、又は当該容器を屋外の一定の場所に集積しておかなければならない。

2019年05月02日執筆