第1種衛生管理者試験 2019年4月公表 問02

作業主任者の選任義務のある作業




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合格

 このページは、試験協会が2019年4月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2019年04月公表問題 問02 難易度 作業主任者の選任義務は広範にわたるが、主要なものは覚えておく。本問は正答したい。
作業主任者の選任

問2 次の作業のうち、法令上、作業主任者を選任しなければならないものはどれか。

(1)鉛蓄電池を解体する工程において人力で鉛等を運搬する業務に係る作業

(2)屋内作業場におけるアーク溶接の作業

(3)レーザー光線による金属加工の作業

(4)試験研究業務として塩素を取り扱う作業

(5)潜水器を用いボンベからの給気を受けて行う潜水作業

正答(1)及び(2)

【解説】

作業主任者の選任は安衛法第14条によって義務付けられ、安衛令第6条に選任すべき作業が定められている。従って同条を調べてみれば正答は分かる。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し(中略)なければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第14条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一から十七 (略)

十八 別表第三に掲げる特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業試験研究のため取り扱う作業(中略)を除く。

十九 別表第4第一号から第十号までに掲げる鉛業務(遠隔操作によって行う隔離室におけるものを除く。)に係る作業

二十から二十三 (略)

別表第3 特定化学物質(第六条、第九条の三、第十七条、第十八条、第十八条の二、第二十一条、第二十二条関係)

 (略)

 第二類物質

1から6 (略)

 塩素

8から34 (略)

34の2 溶接ヒューム

34の3~37 (略)

 (略)

別表第4 鉛業務(第六条、第二十一条、第二十二条関係)

一及び二 (略)

 鉛蓄電池又は鉛蓄電池の部品を製造し、修理し、又は解体する工程において鉛等の溶融、鋳造、粉砕、混合、ふるい分け、練粉、充てん、乾燥、加工、組立て、溶接、溶断、切断若しくは運搬をし、又は粉状の鉛等をホッパー、容器等に入れ、若しくはこれらから取り出す業務

四から二十三 (略)

(1)選任する必要がある。この作業は、安衛令第6条第19号が引用する別表第4の第3号に該当する。従って作業主任者を選任する義務のある作業である。なお、同号は「遠隔操作によって行う隔離室におけるもの」を除いているが、本肢は人力によるものなので該当しない。

(2)出題当時は義務付けられていなかったが、現在は政令改正により義務付けられている。屋内作業場におけるアーク溶接の作業は安衛令第6条に定められていない(※1)。しかし、第6条第十八号に特定化学物質を製造し、又は取り扱う作業(一部を除く)が定められており、溶接ヒュームが特定化学物質として同別表第3第二号の34の2に定められているため、結果的にアーク溶接は作業主任者が必要となる(※2)

※1 「アセチレン溶接装置又はガス集合溶接装置を用いて行う金属の溶接、溶断又は加熱の作業」は定められているが、ここにいうアセチレン溶接装置とはアセチレン発生器を用いる装置のことで、アーク溶接とは無関係である。なお、アセチレン溶接装置は、現在の我が国内ではおそらく使用されていない。また、「アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等」は特別教育の対象となっているので、誤解しないこと。

※2 詳しくは本サイトの「アーク溶接作業と作業主任者選任」を参照して頂きたい。

(3)選任する必要はない。安衛令第6条には、レーザー光線による金属加工の作業は定められていない。なお、労基則別表1の2(職業病リスト)に「レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患」が定められている。

(4)選任する必要はない。塩素を取り扱う作業は、安衛令第6条第18号によって作業主任者の選任対象とされているが、同号は試験研究業務のために取り扱う作業は除いている。

(5)選任する必要はない。安衛令第6条には、潜水器を用いボンベからの給気を受けて行う潜水作業は定められていない。なお、就業制限に係る業務の対象となっているので留意すること。

2019年05月01日執筆 2022年07月20日法令改正により改訂