第1種衛生管理者試験 2018年10月公表 問20

呼吸用保護具の特性等




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合格

 このページは、試験協会が2018年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2018年10月公表問題 問20 難易度 呼吸用保護具に関するごく基礎的な問題である。確実に正答しなければならない問題だろう。
個人用保護具

問20 呼吸用保護具に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)二種類以上の有毒ガスが混在している場合には、そのうち最も毒性の強いガス用の防毒マスクを使用する。

(2)有機ガス用の防毒マスクの吸収缶の色は、黒色である。

(3)型式検定合格標章のある防じんマスクでも、ヒュームに対しては無効である。

(4)防じんマスクの手入れの際、ろ過材に付着した粉じんは圧縮空気で吹き飛ばすか、ろ過材を強くたたいて払い落として除去する。

(5)有毒ガスの濃度が高い場合には、電動ファン付き呼吸用保護具を使用する。

正答(2)

【解説】

呼吸用保護具については当サイトの「化学物質、粉じん等の保護具」を参照して頂きたい。

(1)誤り。二種類以上の有毒ガスが混在している場合には、原則として給気式マスクを用いる。最も毒性の強いガス用の防毒マスクを使用したのでは、他のガスを吸引してしまうこととなる。

(2)正しい。有機ガス用の防毒マスクの吸収缶の色は、黒色である。

なお、有機ガスと一酸化炭素の双方に使用できる隔離式のマスクで、赤と黒で表示されているもの(JIS規格が定められている)がある。

対応ガスの種類 吸収缶の色
有機ガス用
ハロゲンガス用 灰色と黒
アンモニア
亜硫酸ガス用 橙色(黄赤)
一酸化炭素用
酸性ガス用 灰色
シアン化水素用
臭化メチル用
硫化水素用

(3)誤り。型式検定に合格した防じんマスクは、防じん及びヒュームに対しては有効である。ただ、ミストに対しては有効なものと無効なものがあることに留意すること。

(4)誤り。令和5年5月25日基発0525第3号「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(以下「保護マスク通達」という。)に次のような記述がある(※)

【防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について】

第4 呼吸用保護具の保守管理上の留意事項

1 呼吸用保護具の保守管理

(3) ろ過式呼吸用保護具を常に有効かつ清潔に保持するため、使用後は粉じん等及び湿気の少ない場所で、次の点検を行うこと。

ア及びイ (略)

 ろ過材の使用に当たっては、次に掲げる事項に留意すること。

 ろ過材に付着した粉じん等を取り除くために、圧搾空気等を吹きかけたり、ろ過材をたたいたりする行為は、ろ過材を破損させるほか、粉じん等を再飛散させることとなるので行わないこと。

 取扱説明書等に、ろ過材を再使用すること(水洗いして再使用することを含む。)ができる旨が記載されている場合は、再使用する前に粒子捕集効率及び吸気抵抗が当該製品の規格値を満たしていることを、測定装置を用いて確認すること。

※ 本問出題当時は、平成17年2月7日基発第0207006号「防じんマスクの選択、使用等について」が有効であり、本文に示した「保護マスク通達」によって廃止されたが、本通達にも「ろ過材の手入れ」について、次のような記述があった。

イ ろ過材については、よく乾燥させ、ろ過材上に付着した粉じん等が飛散しない程度に軽くたたいて粉じん等を払い落すこと。

  ただし、ひ素、クロム等の有害性が高い粉じん等に対して使用したろ過材については、1回使用するごとに廃棄すること。

  なお、ろ過材上に付着した粉じん等を圧搾空気等で吹き飛ばしたり、ろ過材を強くたたくなどの方法によるろ過材の手入れは、ろ過材を破損させるほか、粉じん等を再飛散させることとなるので行わないこと。

  また、ろ過材には水洗して再使用できるものと、水洗すると性能が低下したり破損したりするものがあるので、取扱説明書等の記載内容を確認し、水洗が可能な旨の記載のあるもの以外は水洗してはならないこと。

なお、この通達は、合格した後の業務でも必要になる。試験までに一度は眼を通しておくこと。

(5)誤り。電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)には、防じん用、防毒用、防じん・防毒兼用の3種類があるが、防毒用のもので労働安全衛生法の型式検定の対象は一部に限られる(※)。従って、電動ファン付き呼吸用保護具を有害ガス用に使用するというのは誤りとなる。

なお、本問出題当時は、労働安全衛生法の型式検定の対象は防じん用のもののみであった。従って、電動ファン付き呼吸用保護具を有害ガス用に使用するというのは明確に誤りであった。

【労働安全衛生法】

(譲渡等の制限等)

第42条 特定機械等以外の機械等で、別表第二に掲げるものその他危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、政令で定めるものは、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない。

(型式検定)

第44条の2 第四十二条の機械等のうち、別表第四に掲げる機械等で政令で定めるものを製造し、又は輸入した者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の登録を受けた者(以下「登録型式検定機関」という。)が行う当該機械等の型式についての検定を受けなければならない。ただし、当該機械等のうち輸入された機械等で、その型式について次項の検定が行われた機械等に該当するものは、この限りでない。

2~7 (略)

別表第2 (第四十二条関係)

一~十五 (略)

十六 電動ファン付き呼吸用保護具

別表第4 (第四十四条の二関係)

一~十二 (略)

十三 電動ファン付き呼吸用保護具

【労働安全衛生法施行令】

(厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備すべき機械等)

第13条 (第1項~第4項 略)

 次の表の上欄に掲げる機械等には、それぞれ同表の下欄に掲げる機械等を含まないものとする。

(略) (略)
法別表第二第十六号に掲げる電動ファン付き呼吸用保護具 ハロゲンガス用又は有機ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具その他厚生労働省令で定めるもの以外の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具

(型式検定を受けるべき機械等)

第14条の2 法第四十四条の二第一項の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

一~十二 (略)

十三 防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具

十四 防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具(ハロゲンガス用又は有機ガス用のものその他厚生労働省令で定めるものに限る。)

【労働安全衛生規則】

(規格を具備すべき防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具)

第26条の2 令第十三条第五項の厚生労働省令で定める防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具は、次のとおりとする。

 アンモニア用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具

 亜硫酸ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具

(型式検定を受けるべき防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具)

第29条の3 令第十四条の二第十四号の厚生労働省令で定める防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具は、次のとおりとする。

 アンモニア用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具

 亜硫酸ガス用の防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具

2019年06月09日執筆 2023年12月20日最終改訂