第1種衛生管理者試験 2018年10月公表 問10

女性労働者の就業禁止業務




問題文
トップ
合格

 このページは、試験協会が2018年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2018年10月公表問題 問10 難易度 女性労働者の就業禁止業務は基本である。確実に正答しておきたい問題である。
労働基準法の就業制限

問10 労働基準法に基づく有害業務への就業制限に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)妊娠中の女性は、異常気圧下における業務に就かせてはならない。

(2)満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性から、著しく寒冷な場所における業務に従事しない旨の申出があった場合には、当該業務に就かせてはならない。

(3)満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性から、さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いる業務に従事したい旨の申出があった場合でも、当該業務に就かせてはならない。

(4)満18歳以上で産後1年を経過した女性から、20 kgの重量物を継続作業で取り扱う業務に従事したい旨の申出があった場合には、当該業務に就かせることができる。

(5)満18歳未満の者は、土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務に就かせてはならない。

正答(4)

【解説】

労基法の女性保護規定は、やや分りにくいが①妊娠中の女性、②産後1年を経過しない女性、③すべての女性に分けて考えると分かりやすい。

①の妊娠中の女性の保護は労基法第64条の3第1項によって規定されており、女性則第2条第1項のすべての業務が禁止される。

②の産後1年に満たない女性の保護は労働基準法第64条の3第3項によって規定されており、女性則第2条第2項によって同条第1項の一部が禁止される。そして、禁止されるものの一部は本人が申し出た場合に限られるのである。

③のすべての女性についての保護は、労働基準法第64条の3第2項によって規定されており、女性則第3条によって重量物取扱業務と有害物取扱業務が禁止されているのである。

【労働基準法】

(危険有害業務の就業制限)

第62 使用者は、満18才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。。

 使用者は、満18才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。

 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。

(危険有害業務の就業制限)

第64条の3 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。

 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、厚生労働省令で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。

 前二項に規定する業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者の範囲は、厚生労働省令で定める。

【女性労働基準基則】

(危険有害業務の就業制限の範囲等)

第2条 法第64条の3第1項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。

 次の表の上欄に掲げる年齢の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる重量以上の重量物を取り扱う業務

年齢 重量(単位 キログラム)
断続作業の場合 継続作業の場合
満16歳未満 12
満16歳以上満18歳未満 25 15
満18歳以上 30 20

二から二十一 (略)

二十二 著しく寒冷な場所における業務

二十三 異常気圧下における業務

二十四 さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務

 法第64条の3第1項の規定により産後1年を経過しない女性を就かせてはならない業務は、前項第一号から第十二号まで及び第十五号から第二十四号までに掲げる業務とする。ただし、同項第二号から第十二号まで、第十五号から第十七号まで及び第十九号から第二十三号までに掲げる業務については、産後1年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に限る。

第3条 法第64条の3第2項の規定により同条第1項の規定を準用する者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性以外の女性とし、これらの者を就かせてはならない業務は、前条第1項第一号及び第十八号に掲げる業務とする。

【年少者労働基準規則】

(年少者の就業制限の業務の範囲)

第8条 法第62条第1項の厚生労働省令で定める危険な業務及び同条第2項の規定により満18歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。ただし(以下略)

一から三十三 (略)

三十四 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

三十五から四十六 (略)

(1)正しい。妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、女性則第2条第1項に定められており、その第二十三号に「異常気圧下における業務」が定められている。

(2)正しい。満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性を就かせてはならない業務は女性則第2条第2項に定められており、「著しく寒冷な場所における業務」は同条第1項第二十二号に定められているが、これは同条第2項の但し書きにより、本人から申出があった場合に限られている。

(3)正しい。満18歳以上で産後8週間を経過したが1年を経過しない女性を就かせてはならない業務は女性則第2条第2項に定められており、「さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いる業務」は同条第1項第二十四号に定められているが、これは同条第2項の但し書きで本人から申出があった場合に限られてはいない。

(4)誤り。満18歳以上で産後1年を経過した女性を就かせてはならない業務は女性則第3条に定められており、「20 kgの重量物を継続作業で取り扱う業務」は同条の規定により禁止されている。

(5)正しい。満18歳未満の者を就かせてはならない業務は年少則第8条に定められており、「土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務」は同条第34号に定められている。

2019年06月02日執筆 2019年10月20日一部修正