第1種衛生管理者試験 2017年10月公表 問27

労基法上の妊産婦保護




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合格

 このページは、試験協会が2017年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除し、労基法などには項番号を付しました。

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2017年10月公表問題 問27 難易度 労基法上の妊産婦保護に関する基本的な知識問題である。確実に正答できる必要がある。
妊産婦保護

問27 妊産婦に関する次の記述のうち、労働基準法上、誤っているものはどれか。

ただし、労使協定とは、「労働者の過半数で組織する労働組合(その労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と使用者との書面による協定」をいい、また、管理監督者等とは、「監督又は管理の地位にある者等、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用除外者」をいう。

(1)妊産婦とは、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性をいう。

(2)時間外・休日労働に関する労使協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出ている場合であっても、妊産婦が請求した場合には、管理監督者等の場合を除き、時間外・休日労働をさせてはならない。

(3)1年単位の変形労働時間制を採用している場合であっても、妊産婦が請求した場合には、管理監督者等の場合を除き、1週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならない。

(4)妊産婦が請求した場合には、管理監督者等の場合を除き、深夜業をさせてはならない。

(5)妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。妊産婦の定義は労基法第64条の3に定められており、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性とされている。

【労働基準法】

(危険有害業務の就業制限)

第64条の3 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。

2及び3 (略)

(2)正しい。まず、労基法第36条第1項は、時間外・休日労働に関する労使協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出ている場合は、時間外・休日労働をさせることができるとする。そして、同法第66条第2項は、その場合であっても、妊産婦が請求した場合には、時間外・休日労働をさせてはならないとしている。なお、管理監督者等については、そもそも同法第41条の規定により、休日・労働時間の適用がない(妊産婦についての保護規定は第6章の2に定められている。)。

ところで、妊産婦保護の必要性は、管理監督者であっても一般の労働者であっても、同じはずなのにおかしいと思うかもしれない。これは、管理監督者は自らの意思で労働時間を決定できる力を持っているので、本人の意思に任せておけばよいという発想なのである。すなわち、労働時間を自らの力で決めることができないような者は、労基法上の管理監督者に該当しないのである。

また、妊産婦に対して、一律に休日・時間外労働をさせず、本人の請求に委ねているのは、一律に禁止してしまうとかえって本人の保護にならない場合もあるからである。

試験勉強は、たんに結論だけを覚えるのではなく、このように理由を理解しながら覚えていく方が効果的である。

【労働基準法】

(時間外及び休日の労働)

第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

 (略)

(労働時間等に関する規定の適用除外)

第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

 (略)

 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 (略)

第66条 (略)

 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第33条第1項及び第3項並びに第36条第1項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。

 (略)

(3)正しい。1年単位の変形労働時間制は、労基法第32条の4第1項によって定められているが、同法第66条第1項は、この制度を採用している場合であっても、妊産婦が請求した場合には、1週40時間及び1日8時間を超えて労働させてはならないとしている。なお、管理監督者等については(2)と同じである。

【労働基準法】

第32条の4 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第三十二条の規定にかかわらず、その協定で第二号の対象期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

 (略)

 対象期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月を超え一年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)

三から五 (略)

2から4 (略)

第66条 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第32条の2第1項、第32条の4第1項及び第32条の5第1項の規定にかかわらず、一週間について第32条第1項の労働時間、一日について同条第2項の労働時間を超えて労働させてはならない。

2及び3 (略)

(4)誤り。労基法第6章の2にある第66条第3項に規定されている。なお、(2)で説明した労基法第41条は、妊産婦の保護について定めた第6章の2の規定のうち「労働時間、休憩及び休日に関する規定」は、管理監督者等の場合には適用しないと言っているが、深夜業に関する規定まで適用しないとは言っていない。

【労働基準法】

第66条 (第1項及び第2項 略)

 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

(5)正しい。労基法第65条第3項に、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならないと定められている。

【労働基準法】

(産前産後)

第65条 (第1項及び第2項 略)

 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

2020年07月07日執筆