第1種衛生管理者試験 2017年10月公表 問15

有機溶剤の人体に対する影響




問題文
トップ
合格

 このページは、試験協会が2017年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」か「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2017年10月公表問題 問15 難易度 有機溶剤による健康障害についての基本的な問題である。確実に正答できなければならない。
有機溶剤による健康影響

問15 有機溶剤の人体に対する影響に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)脂溶性であり、脂肪の多い脳などに入りやすい。

(2)呼吸器の中毒の症状には、咳、上気道の炎症などがある。

(3)低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、頭痛、めまい、記憶力減退、不眠などの不定愁訴がみられる。

(4)皮膚及び粘膜に対する刺激による黒皮症、鼻中隔穿孔などがみられる。

(5)肝障害や腎障害を起こすものがある。

正答(4)

【解説】

(1)正しい。有機溶剤の特徴として脂溶性に富むこと、揮発性が大きいことが挙げられる。このため、脂肪の多い脳などに入りやすい。

(2)正しい。高濃度の有機溶剤を吸入すると急性気管支炎に似た症状が生じ、気管や気管支の炎症が起きて咳が出るようになる。

(3)正しい。低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒では、頭痛、めまい、記憶力減退、不眠などの不定愁訴がみられる。

(4)誤り。有機溶剤は、様ざまな皮膚障害を引き起こすが、黒皮症や鼻中隔穿孔がみられることはない。なお、黒皮症は砒素によって、鼻中隔穿孔はクロム、砒素などによって発症することがある。

(5)正しい。血液中の有機溶剤は、そのままでは分子量が小さく、水溶性の物を除けば腎臓の糸球体で濾過されても尿細管から再吸収されてしまう。腎臓は、そのとき高濃度の有機溶剤にさらされることとなり、多くの有機溶剤は腎機能障害をもたらす。

また、有機溶剤は、一部は呼気から排出されるが、肝臓で分解されて排出される。そのため肝臓に影響を与える。このため、肝障害を起こすことがある。

2019年10月27日執筆