問14 金属による中毒に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)鉛中毒では、貧血、伸筋麻痺、腹部の疝痛などの症状がみられる。
(2)ベリリウム中毒では、溶血性貧血、尿の赤色化などの症状がみられる。
(3)マンガン中毒では、指の骨の溶解、皮膚の硬化などの症状がみられる。
(4)クロム中毒では、低分子蛋白尿、歯への黄色の色素沈着、視野狭窄などの症状がみられる。
(5)金属水銀中毒では、肺炎、肺気腫などの症状がみられる。
このページは、試験協会が2017年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2017年10月公表問題 | 問14 | 難易度 | 金属による健康障害についての高度な問題である。正答するのはやや難しい問題といえる。 |
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金属による中毒 | 4 |
問14 金属による中毒に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1)鉛中毒では、貧血、伸筋麻痺、腹部の疝痛などの症状がみられる。
(2)ベリリウム中毒では、溶血性貧血、尿の赤色化などの症状がみられる。
(3)マンガン中毒では、指の骨の溶解、皮膚の硬化などの症状がみられる。
(4)クロム中毒では、低分子蛋白尿、歯への黄色の色素沈着、視野狭窄などの症状がみられる。
(5)金属水銀中毒では、肺炎、肺気腫などの症状がみられる。
正答(1)
【解説】
(1)正しい。鉛中毒では、貧血(血色素の合成過程を鉛が阻害するため)、神経障害(初期には筋肉痛、関節痛、筋力低下が発生する。症状が進むと、いわゆる垂れ手と呼ばれる症状が現れる。)、消化器の障害(初期には、食欲減退、嘔吐、下痢・便秘などが起きる。また、腹部に疝痛が起きることがある)などの症状を伴う。
(2)誤り。ベリリウムは発がん性物質である。また長期のばく露によりベリリウム肺を、短期ばく露により気道の炎症や重度の化学性肺炎を引き起こすこともある。また、ベリリウムは感作性があり、呼吸器に対してアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ、皮膚に対してアレルギー性皮膚反応を引き起こす恐れがある。
しかし、溶血性貧血、尿の赤色化などの症状は現れない。これらの症状は、発作性夜間ヘモグロビン尿症によって起きることがあるが、工業中毒の症状としてはみられない。
(3)誤り。マンガン中毒では、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状又は言語障害、歩行障害、振せん等の神経障害などがみられる。
指の骨の溶解、皮膚の硬化などの症状はみられない。なお、指の骨の溶解の症状の原因物質としては塩化ビニルがある。また、有機溶剤による皮膚の乾燥により二次的な皮膚障害として皮膚硬化を起こしやすくなる。
(4)誤り。クロム中毒では、精神・神経症状(初期には神経衰弱様の症状などが現われ、その後錐体外路症候(パーキンソン症候群様症状)を中核とした多彩な精神症状が、進行性に出現してくる。)、肺炎などが挙げられる。
低分子蛋白尿、歯への黄色の色素沈着、視野狭窄などの症状はみられない。なお、低分子蛋白尿と歯への黄色の色素沈着はカドミウムなどによって、視野狭窄は水銀などによって発症する。
(5)誤り。金属水銀中毒では、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状の他、感情不安定、幻覚、焦燥感、記憶減退、不眠等の精神障害、手指の震えなどの振せん、歩行障害等の神経障害、口腔粘膜障害、腎障害などが現れる。
肺炎、肺気腫などの症状はみられない。肺炎は水銀、マンガン、ベリリウムなどによって、肺気腫はカドミウムなどによって起こる。