第1種衛生管理者試験 2017年10月公表 問13

化学物質による健康障害




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合格

 このページは、試験協会が2017年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年10月公表問題 問13 難易度 かなり高度な選択肢もあるが、実はきわめて単純な問題。正答できなければならない問題といえる。
化学物質による健康障害

問13 化学物質による健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)硫化水素による中毒では、意識消失、呼吸麻痺などがみられる。

(2)ノルマルヘキサンによる健康障害では、末梢神経障害などがみられる。

(3)N,N-ジメチルホルムアミドによる健康障害では、頭痛、肝機能障害などがみられる。

(4)一酸化炭素は、赤血球中のヘモグロビンに強く結合し、体内組織の酸素欠乏状態を起こす。

(5)塩素による健康障害では、再生不良性貧血、溶血などがみられる。

正答(5)

【解説】

(1)正しい。硫化水素による中毒では、700~800ppmで意識消失、1,000~2,000ppmで呼吸麻痺などがみられる。なお、700ppm程度より濃度が高くなると臭気を感じなくなることも覚えておこう。

ガス濃度[ppm] 作用
0.025 臭いで感知しうる限界
0.3 明瞭に感知される
5~10 悪臭を強く感じる
20~50 目の炎症
50~150 頭痛、めまい、吐き気
150~200 悪臭の麻痺により臭気を感じなくなる
300 亜急性中毒(意識不明)
700~800 臭気を感ぜずに意識不明、30 分で生命危機
1000~2000 失神、痙攣、呼吸停止、死に至る

(2)正しい。ノルマルヘキサンは、反復ばく露により、知覚運動の末梢神経障害を誘発する。日本のサンダル作業者と台湾の印刷作業者において、著しい末梢神経障害が報告されている。

(3)正しい。職業暴露における疫学調査で、頭痛、消化不良といった訴えや肝機能障害、気道への刺激、γ-GPT の上昇等が認められている。急性の職業性ばく露症例では、標的器官は肝臓で、肝臓への影響とそれに伴う消化器系の障害が報告されている

(4)正しい。一酸化炭素による中毒は、一酸化炭素が血液のヘモグロビンと結合してしまい、酸素がヘモグロビンと結合することを妨害し、血液が酸素を運搬する能力が減少することによって起きる。

(5)誤り。後天性の再生不良性貧血については、一部の例で抗菌薬や解熱鎮痛薬などの薬剤が発症に関与している可能性があるが、塩素が原因となったという報告はない。発症の引き金となる原因はほとんどの場合不明である。

なお、溶血については、塩素が血液中に混入した場合、溶血を発生する危険性があるため誤りとは言えない。

塩素の急性毒性としては、皮膚腐食性、眼刺激性、呼吸器系への障害及び刺激性などがある。長期ばく露による健康障害としては、呼吸器系、腎臓、臭覚器の障害の他、歯の障害などがみられる。

  1. (1):表は環境省長野自然環境事務所「地獄谷歩道沿いの管理作業における安全対策マニュアル作成の手引き」(2012年3月)による。
2019年10月21日執筆