第1種衛生管理者試験 2017年10月公表 問11

有害物質の性状(常温での状態)




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合格

 このページは、試験協会が2017年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年10月公表問題 問11 難易度 有害物の常温における状態は基本的な知識だが、ガスと蒸気の区別は難しい面もある。難問かもしれない。
化学物質の物性

問11 次の化学物質が、常温・常圧(25℃、1気圧)の空気中に発散した場合に、蒸気として存在するものはどれか。

ただし、蒸気とは、常温・常圧で液体又は固体の物質が蒸気圧に応じて揮発又は昇華して気体となっているものをいうものとする。

(1)オルト-トリジン

(2)アンモニア

(3)二酸化硫黄

(4)アセトン

(5)ジクロロベンジジン

正答(4)

【解説】

蒸気とガスについては様ざまな定義があり、定義によってはどちらに該当するかが異なることもある。そのため、本問は但書で蒸気の定義を示している。そして、常温・常圧で液体又は固体の状態にならないものは蒸気ではないと言っている。常温・常圧で気体となっているものは、ガスであって蒸気ではないのである。

また、揮発とは物体の状態が液体から気体に変化することで、昇華とは固体から気体に代わることである。蒸気圧の極端に低い固体は、常温常圧で蒸気になるとは考えにくい。なお、日常用語の「蒸発」は液体表面から気化する現象で、蒸気圧が気圧よりも高くなると「沸騰」して液体内部からも気化するようになる。

なお、ミストや湯気は液体であり、ヒュームは固体であって蒸気ではない。

(1)オルト-トリジン(別名3,3'-ジメチルベンジジン)は、常温・常圧では無色結晶又は赤色~茶色の薄片として存在する。蒸気圧は6.92×10-7mmHg(25℃)程度であり、粉じんとなることはあっても常温常圧で蒸気となることは考えにくい。

(2)アンモニアは、常温・常圧ではガスとして存在する。蒸気ではない。

(3)二酸化硫黄は、常温・常圧ではガスとして存在する。なお、供給は圧縮液化ガスとして行われる。本問の定義では蒸気ではない。

(4)アセトンは、常温・常圧では液体として存在する。蒸気圧は239.5hPa(239.5mber:20℃)である。従って、アセトンは常温・常圧の空気中で蒸気として存在する。

(5)ジクロロベンジジンは、常温・常圧では灰色~紫色の結晶として存在する。蒸気圧は6×10-7Pa(20℃)程度であり、粉じんとなることはあっても蒸気となることは考えにくい。

2019年05月03日執筆