第1種衛生管理者試験 2017年10月公表 問08

酸素欠乏症等の防止等




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合格

 このページは、試験協会が2017年10月に公表した衛生管理者試験問題の解説を行っています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2017年10月公表問題 問08 難易度 酸欠防止に関する基本的な内容・・・というより常識問題である。確実に正答しておく必要がある。
酸素欠乏症等防止規則

問8 酸素欠乏症等の防止等に関する次の記述のうち、法令上、誤っているものはどれか。

ただし、空気呼吸器等とは、空気呼吸器、酸素呼吸器又は送気マスクをいう。

(1)第一種酸素欠乏危険作業については、その日の作業開始後速やかに、当該作業場における空気中の酸素の濃度を測定しなければならない。

(2)酸素欠危険作業に労働者を従事させる場合で、当該作業を行う場所において酸素欠乏等のおそれが生じたときは、直ちに作業を中止し、労働者をその場所から退避させなければならない。

(3)酸素欠乏症等にかかった労働者を酸素欠乏等の場所において救出する作業に労働者を従事させるときは、当該救出作業に従事する労働者に空気呼吸器等を使用させなければならない。

(4)タンクの内部その他通風が不十分な場所において、アルゴン等を使用して行う溶接の作業に労働者を従事させるときは、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を18%以上に保つように換気し、又は労働者に空気呼吸器等を使用させなければならない。

(5)労働者が酸素欠乏症等にかかったときは、遅滞なく、その旨を当該作業所を行う場所を管轄する労働基準監督署長に報告しなければならない。

正答(1)

【解説】

形の上では、酸欠則に関する条文問題(知識問題)であるが、酸素欠乏についての基本的な知識があれば常識で解ける。こんな問題を落としていてはもったいないだろう。

(1)誤り。酸欠則第3条の規定により、酸素欠乏危険作業については、その日の作業開始をする前に、当該作業場における空気中の酸素の濃度を測定しなければならない。

10秒くらい息を止めていても平気だから、酸素欠乏場所に入っても10秒くらいは大丈夫だと思うかもしれないが、酸欠空気は吸い込んだとたんにその酸素濃度に応じた症状を発症する。酸素濃度によっては、その場所に入り込んだだけで倒れてしまう場合もある。作業を開始してからでは遅いのである。

【労働安全衛生法施行令】

(作業環境測定を行うべき作業場)

第21条 法第六十五条第一項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。

一から八 (略)

 別表第六に掲げる酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場

 (略)

【酸素欠乏症等防止規則】

(作業環境測定等)

第3条 事業者は、令第21条第九号に掲げる作業場について、その日の作業を開始する前に、当該作業場における空気中の酸素(第二種酸素欠乏危険作業に係る作業場にあつては、酸素及び硫化水素)の濃度を測定しなければならない。

 (略)

(2)正しい。酸欠則第14条第1項の規定そのままである。もっとも、このような規定がなくても、酸欠の恐れがあればすぐに労働者を退避させなければならないのは当然であろう。

【酸素欠乏症等防止規則】

(退避)

第14条 事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合で、当該作業を行う場所において酸素欠乏等のおそれが生じたときは、直ちに作業を中止し、労働者をその場所から退避させなければならない。

 (略)

(3)正しい。酸欠則第16条第1項の規定そのままである。酸素欠乏症等にかかった労働者がいるということは、その場所は酸素欠乏等の場所なのである。空気呼吸器等を使用させずに救出作業に従事したら、その労働者も酸素欠乏症等になってしまうのではないか。

実際には、酸素欠乏や硫化水素中毒で労働者が倒れたとき、それを助け出そうとして二次災害になるケースが意外に多いのである。救出者が倒れてしまったのでは、救出対象者(最初の被災者)も救出できないこととなる。一刻も早く助け出したい気持ちは分かるが、万全の態勢を取って救出に当たることが、確実な救助につながるのである。

【酸素欠乏症等防止規則】

(換気)

第5条 事業者は、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合は、当該作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を十八パーセント以上(第二種酸素欠乏危険作業に係る場所にあつては、空気中の酸素の濃度を十八パーセント以上、かつ、硫化水素の濃度を百万分の十以下。次項において同じ。)に保つように換気しなければならない。ただし、爆発、酸化等を防止するため換気することができない場合又は作業の性質上換気することが著しく困難な場合は、この限りでない。

2及び3 (略)

(救出時の空気呼吸器等の使用)

第16条 事業者は、酸素欠乏症等にかかつた労働者を酸素欠乏等の場所において救出する作業に労働者を従事させるときは、当該救出作業に従事する労働者に空気呼吸器等を使用させなければならない。

 (略)

(4)正しい。酸欠則第21条第1項の規定そのままである。ここで、「アルゴン等を使用して」とあるのはミグ溶接、マグ溶接及びティグ溶接に用いられるシールドガスのことである。アークをシールドさせるためにトーチの先端からアルゴンガスや二酸化炭素などを吹き付けるので、酸欠や一酸化炭素中毒のリスクがある。

【酸素欠乏症等防止規則】

(溶接に係る措置)

第21条 事業者は、タンク、ボイラー又は反応塔の内部その他通風が不十分な場所において、アルゴン、炭酸ガス又はヘリウムを使用して行なう溶接の作業に労働者を従事させるときは、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。

 作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を十八パーセント以上に保つように換気すること。

 労働者に空気呼吸器等を使用させること。

2及び3 (略)

(5)正しい。酸欠則第29条の規定そのままである。なお、この規程の根拠は安衛法第100条である。

【労働安全衛生法】

(報告等)

第100条 厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

2及び3 (略)

【酸素欠乏症等防止規則】

(事故等の報告)

第29条 事業者は、労働者が酸素欠乏症等にかかつたとき、又は第二十四条第一項の調査の結果酸素欠乏の空気が漏出しているときは、遅滞なく、その旨を当該作業を行う場所を管轄する労働基準監督署長に報告しなければならない。

2019年10月14日執筆