溶接ヒューム関連、安衛法令改正




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2020年に安衛令が改正され、溶接ヒュームと塩基性マンガンが特定化学物質に追加された。これまで、特定化学物質は単体又は化合物の化学物質(及びその混合物)であり、ヒュームのような「ある『状態』のもの」が指定されたことはなかった。

また、条文や通達を見ても、分かりにくさがあることは否めない。こいくつかの疑問点について厚労省の担当者から回答を得たので、それを含めて緊急に解説をアップする。

なお、本稿の文責はあくまでも柳川にあり、厚労省の責任ではないことをお断りしておく。



2020年の溶接ヒューム等に関わる安衛令、特化則等の改正について(1/4)

執筆日時:

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1 法令改正の概要

(1)具体的な改正条文の概要等

アーク溶接作業

※ イメージ図(©photoAC)

2020年4月22日、厚生労働省は、「労働安全衛生法施行令の改正新旧対照表)」、「特定化学物質障害予防規則等の改正」及び「作業環境測定基準の改正」について公布した。そして、同時に、「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行等について(令和2年4月22日基発0422第4号)」を発出した。

その後、「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等(案)」概要)についてパブコメを経て、「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場に係る溶接ヒュームの濃度の測定の方法等」について告示されたところである。この告示には、以下の3点が含まれている。

  • 溶接ヒュームの濃度の測定の方法等(特化則第38条の21第2項関係)
  • 労働者に使用させる有効な呼吸用保護具の要件(特化則第38条の21第6項関係)
  • 呼吸用保護具の装着の確認の方法(特化則第38条の21第7項関係)

また、いくつかの疑問点について、厚労省の担当者に何点か質問をしてご回答をいただいたので、本稿ではそれも併せてご紹介したい。

なお、厚生労働省が「改正特定化学物質障害予防規則に関するQ&A」を公表しているので、併せて参照されたい。

今回の改正では、大きく以下の3点の改正が行われてる。ひとつは溶接ヒューム及び塩基性酸化マンガンが特定化学物質に追加されたこと。もうひとつは特化則に「金属アーク溶接等作業」についての規制が追加されたこと。最後はマンガンに関する規制の強化である。

(2)溶接ヒューム等の特定化学物質第二類物質への追加

安衛令の最も大きな改正は、別表第3第2号(特定化学物質第二類物質)に、塩基性酸化マンガン及び溶接ヒュームを追加したことである。また、それらを製造し又は取り扱う作業について、作業主任者の選任、作業環境測定(溶接ヒュームを除く)、特殊健康診断の対象として追加した。これが一つ目の大きな改正となる

なお、第二類物質に追加されたことにより、特化則の以下の規定についても対象となる。

  • 安全衛生教育(雇入れ時・作業内容変更時)(安衛則第35条)
  • ぼろ等の処理(特化則第12条の2)
  • 不浸透性の床(特化則第21条)
  • 関係者以外の立入禁止措置(特化則第24条)
  • 運搬貯蔵時の容器等の使用等(特化則第25条)
  • 特定化学物質作業主任者の選任(特化則第27条)(※)
  • 休憩室の設置(特化則第37条)
  • 洗浄設備の設置(特化則第38条)
  • 喫煙又は飲食の禁止(特化則第38条の2)
  • 有効な呼吸用保護具の備え付け等(特化則第43条及び第45条)

※ 当初、作業主任者は特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習を修了した者の中から選任しなければならないこととされていたが、2022年12月26日に「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令及び化学物質関係作業主任者技能講習規程の一部を改正する件」についてのパブコメが行われている。

これによると「講習科目を金属アーク溶接等作業に係るものに限定した特化技能講習(以下「金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習」という。)を新設し、金属アーク溶接等作業を行う場合においては、当該講習を修了した者のうちから、金属アーク溶接等作業主任者を選任することができることとし、特化則等について所要の改正を行う。」とされている。

(3)金属アーク溶接等作業に関する新たな規制

もうひとつの大きな改正点は、特化則への第38条の21(金属アーク溶接等作業に係る措置)の追加である。この他、特化則関連では、「溶接ヒュームを製造し又は取り扱う業務」に関しての健診項目も追加されている。

なお、「金属アーク溶接等作業」とは何かについては後述するが、条文では「金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断し、又はガウジングする作業その他の溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業」であるとされている。

この条文に定められていることは、以下の通りである。

  • 工学的対策(全体換気装置等の設置)
  • 空気中の溶接濃度の測定(作業環境測定ではない)
  • 空気中の濃度の測定の結果に基づく措置
  • 上記措置後の結果の確認
  • 保護具の着用
  • 保護具の装着状況の確認
  • 床等の洗浄

(4)母材等にマンガンを含有する場合の措置

ア 作業環境測定についての改正

マンガンを含有する母材や、マンガンを含む溶接材を用いてアーク溶接を行う場合に、作業環境測定が必要となることは、これまでと同じである。

今回の改正では、作業環境測定を行うべき「物の種類」について、「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」を「マンガン及びその化合物」に改められた。また、その管理濃度を「マンガンとして0.05mg/m3」に引き下げている。

さらに、個人サンプリング法による作業環境測定の対象となる「低管理濃度特定化学物質」に「マンガン及びその化合物」が追加された。また、その試料採取方法について、分粒装置を用いるろ過捕集法としたこと。

イ 局所排気装置の性能

局所排気装置の具備すべき性能に係る「物の種類」について、「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」を「マンガン及びその化合物」に改めるとともに、その抑制濃度を「マンガンとして0.05mg/3」に引き下げたこと。





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