インダストリアル・ハイジニストとは




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2021年1月18日に「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会中間とりまとめ」が公表され、7月19日には「最終報告書」が公表されている。

その内容は、一定の条件の下で国の規制を離れた自由な管理を認めることを志向するものとなっている。この中で、化学物質管理の専門家として「インダストリアル・ハイジニスト」が挙げられている。

本稿では、この報告書にある「インダストリアル・ハイジニスト」について簡単に解説する。




1 インダストリアル・ハイジニストって誰?

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このサイトの記事「化学物質規制と『法令遵守』」でも取り上げた「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会中間とりまとめ」だが、その内容は、一定の条件の下で国の規制を離れた自由な管理を認めることを志向するものとなっている。

分かりやすく言えば、事業場における化学物質管理の在り方を、「自律的な管理」を基軸とする形へ移行することを目指すものといえる。一定の自主的な管理が可能な事業場については、特化則等の規制を外し、自律的な管理を認めようと言うのがその骨幹なのである。

正直に言って、多くの事業者が、国の規制に基づいた管理に慣れ、化学物質管理の専門家が不足している中で、未規制物質=無害な物質という意識が蔓延してさえいる現状では、やや理想論に走りすぎた非現実的なものという危惧の念を感じないでもない。

だが、そのことについては、今日は触れない。今日は、この報告書にある「インダストリアル・ハイジニスト」について簡単に解説する。


2 インダストリアル・ハイジニストとは

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もしかすると、このサイトの読者の少なくない方は、インダストリアル・ハイジニストという言葉を初めてお聞きになられたかもしれない。実は、日本を含む多くの国では「オキュペイショナル・ハイジニスト」と呼ばれており、インダストリアル・ハイジニストは米国の用語なのである。

それはともかく、IOHA(International Occupational Hygiene Association)という国際組織が、各国における化学物質管理の専門家の育成プログラムを審査・認証(有効期間5年)する制度があり、認証を受けた育成プログラムを修了した者がオキュペイショナル・ハイジニストとなる。

我が国においては、(公社)日本作業環境測定協会のプログラムが認証されている。なお、日本以外では現時点で15か国においてプログラムが認定されている。

この育成プログラムには、筆者(柳川)も講師として関わったことがあるが、全体で93時間の講義の受講が必要であり、かなり高度な知識が身につくものである。受講資格として、第1種作業環境測定士、労働衛生コンサルタント又は衛生工学衛生管理者として5年以上の実務経験が必要となる。

なお、同協会のWEBサイトによると、2020年10月30日現在52名が認定されているようだ。この他、ごくわずかではあるが、外国で資格を取った方もおられるので、我が国内の人数はそれよりは多いと思う。


3 中間とりまとめに挙げられている専門家

中間とりまとめには、自律的な化学物質管理が認められる要件の一つとして、「一定の期間の実務経験を有するインダストリアル・ハイジニスト、衛生工学衛生管理者その他の化学物質管理に関する高い専門性を有する人材が、作業場の規模や取り扱う化学物質の種類、量に応じた体制で関与すること」が挙げられている。

これについては、政府に対して苦言を申し上げたい。労働衛生コンサルタントが挙げられていないことについてである。最終取りまとめには、挙げて頂けるものと考えているが、労働衛生コンサルタントの試験は、そもそも一定の資格要件のあるものが、高度の労働衛生に関する試験に合格して資格をとるものであり、安衛法にも位置付けられた国家資格である。衛生工学衛生管理者を挙げておきながら、労働衛生コンサルタントが挙げられていないことに釈然としないものを感じるのは私だけであろうか。

【追記:最終報告書について】

2021年7月19日に公表された最終報告書では、専門家として「労働衛生コンサルタント(衛生工学)として5年以上その業務に従事した経験を有する者」が挙げられている。

なお、第13回委員会に提出された「資料4_化学物質管理を担う専門家について]には、労働衛生コンサルタントが挙げられていることを記しておく。

【最終報告書に記された「確認を行う専門家】

  • ・ 労働衛生コンサルタント(衛生工学)として5年以上その業務に従事した経験を有する者
  • ・ 衛生工学衛生管理者として8年以上その業務に従事した経験を有する者
  • ・ オキュペイショナル・ハイジニスト(IOHA(International Occupational Hygiene Association 国際オキュペイショナルハイジーン協会)が認証している育成プログラムによる資格取得者を想定。以下同じ。)資格を有する者
  • ・ その他同等以上の知識及び経験を有すると認められる者
※ 「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 報告書」より




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