
※ イメージ図(©photoAC)
労働安全衛生コンサルタント試験は、筆記試験と口述試験があり、筆記試験は、専門一般(択一)、法令(択一)、専門(記述)の3科目に分かれています。ところが受験者の保有している資格等によって、科目ごとに免除を受けることができる範囲が広く定められていることが大きな特徴になっています。
科目免除を受けることができる受験者は、免除を受けた方が有利になると思われるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。免除を受けてしまうと、免除を受けた科目以外で、合格基準の6割の得点をしなければならなくなります。これは、必ずしも有利な状況ではありません。
結論を言えば、免除を受けられる科目で6割以上の得点をする自信があるなら、免除は受けない方がよいのです。そして、多くの受験者にとって、免除を受けることができる科目は得意な分野でしょう。だからこそ、免除を受けることができるのです。
本稿では、択一試験の最近の各科目ごとの得点分布状況をお示ししています。ご自身が、免除を受けようとする試験科目の得点分布を参照し、高い得点を得られる機会を自ら放棄してしまうことがないように十分に注意してください。
1 得点分布の調査の方法と回答数
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(1)調査の方法

※ イメージ図(©photoAC)
本稿の得点分布の調査の方法は、当サイトを閲覧頂いている方に対してWEB上でお願いし、2021年度(令和3年度)から、実際の試験で解答した内容のアンケート調査を行うことによっている。
なお、解答を入力して頂いた方には、メリットとして会員サイトのIDコードとパスワードをお知らせしている。会員サイトにおいては、それまで一般に公開していた試験直後の「正答予想」を会員サイトに移動したほか、メールまたは掲示板でご報告いただいた口述試験の結果を掲載している。
(2)回答数
実際に回答して頂いた方の数は、次のようになった。いずれも筆記試験の実施日から口述試験の最終日までにご入力を頂いた方の統計である(※)。
※ なお、最新の 2024 年度に対応した「安全衛生コンサルタント試験の最近の難易度の動向」が、別途作成してあります。
実施年度 | ||||
---|---|---|---|---|
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | ||
労働衛生 | 労働衛生法令 | 143 | 193 | 275 |
労働衛生一般 | 51 | 68 | 101 | |
労働安全 | 産業安全法令 | 269 | 243 | 214 |
産業安全一般 | 252 | 246 | 209 |
※ 全問又は半数程度以上について「無解答/忘れた」と回答した方、及び、筆記試験全免除の受験者で架空の値を入力したことが判明した方のデータは統計から除いた。
ここで、労働衛生コンサルタント試験について回答して頂いた方の数は年を追うごとに急増しているのに対し、労働安全コンサルタントの方は落ち込んでいるのが分かると思う。とりわけ、2023 年度については顕著である。安全コンサルタントの回答数が落ち込んだのは、後述するように 2023 年の試験問題があまりにも難易度が高くなったためである。
先述したように回答をして頂いた方には会員サイトの ID コードを発行しているのだが、会員サイトには正答の予測と口述試験の過去問が掲示されている。おそらく、安全コンサルタント試験の 2023 年度の筆記試験を受けた方が、合格をあきらめてしまったために、回答数も落ち込んだというのが理由のように思える(※)。
※ しかし、先述した 2024 年度対応版に示したが、2024 年度は難易度がさらに高くなったにもかかわらず、安全コンサルタント試験の回答者数は 300 近くまで増加した。
では、受験者のうちどの程度の方が回答して頂いたのだろうか。2023 年度の労働安全衛生コンサルタント試験の筆記試験の申請者数は、(公財)安全衛生技術試験協会の「試験協会NEWS」によると、安全コンサルタントが1,519人、衛生コンサルタントが861人とされている。
実際には、労働安全衛生コンサルタント試験は、各科目を免除される受験者の範囲がきわめて多いので、それぞれの科目については、全体の筆記試験受験者の半数程度しかいないのが実態である(※)。
※ 免除を受けた受験者数は公表されていない。なお、労働衛生一般について回答して頂いた方は、労働衛生法令に回答して頂いた方はよりもかなり少ない。これは、労働衛生一般を免除によって受けなかった方が多いためである。
そのように考えると、全受験者のかなりの割合の方が回答を寄せて頂いたと考えてよいのではないかと思う。回答数だけを考えれば、統計的には十分に全体を代表できる結果であると考えられる。
ただ、受験の結果を入力して頂いている方は、正答予測や口述試験の過去問が知りたいという方が多いであろうから、本気で受験している受験者や合格の可能性がある受験者に集中している可能性はある。当然のことではあるが、成績は良い方向へバイアスがかかっている(※)と考えるべきであろう。
※ 一方で、極端に正答率の低い回答が、数件、混じっていることも事実である。明らかに問題のあるケースを除き、そのようなものも統計から除いてはいない。
なお、今回のアンケートでは、受験者の属性についてもいくつかの質問をさせて頂いている。氏名(ハンドルネーム可)と受験区分だけは必須入力としたが、他の項目は任意入力としている。実際には、ほとんどすべての方から御回答を頂いた。
2 択一式試験の解答結果
(1)難易度の区分と正答率の分布
ア 難易度区分
択一試験の個々の問題の解答状況はグラフにして各問題の解説の冒頭に掲げている。また、それとは別に「難易度」を示している。難易度は、正答率によって次のように分類してある。
正答率 | 難易度 |
---|---|
80%以上 | 1 |
70%以上 80%未満 | 2 |
60%以上 70%未満 | 3 |
50%以上 60%未満 | 4 |
50%未満 | 5 |
イ 難易度ごとの問題数分布
その結果、各科目の難易度ごとの問題数は、次のようになった。例えば、2023 年度の労働衛生法令だと、80%以上の方が正答した難易度1の問題は3問、50%未満の方しか正答できなかった難易度5の問題が4問となるわけである。
年度 | 難易度 | 正答率 40%未満 (内数) |
||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||||
労働衛生 | 労働衛生法令 | 2023年度 | 3 | 5 | 3 | 0 | 4 | 2 |
2022年度 | 2 | 4 | 2 | 3 | 4 | 4 | ||
2021年度 | 4 | 0 | 1 | 1 | 9 | 6 | ||
労働衛生一般 | 2023年度 | 11 | 5 | 3 | 4 | 7 | 3 | |
2022年度 | 16 | 4 | 0 | 2 | 8 | 6 | ||
2021年度 | 6 | 9 | 9 | 1 | 5 | 4 | ||
労働安全 | 産業安全法令 | 2023年度 | 0 | 0 | 4 | 3 | 8 | 5 |
2022年度 | 1 | 3 | 6 | 1 | 4 | 3 | ||
2021年度 | 0 | 4 | 4 | 4 | 3 | 1 | ||
産業安全一般 | 2023年度 | 5 | 3 | 3 | 7 | 12 | 7 | |
2022年度 | 6 | 4 | 6 | 4 | 10 | 5 | ||
2021年度 | 8 | 9 | 3 | 5 | 5 | 3 |
これまでの3年間の調査では、実施年度によって難易度はかなりばらつくようである。また、2023 年度の産業安全法令は、かなり難易度が高かったといえる。15 問中、難易度5の問題が8問と半数を超えている(※)。しかも、難易度が2以下の問題がないのである。さらに産業安全一般の難易度も高かった。
※ 2021 年度の労働衛生法令でも難易度5の問題が9問あったが、このときは難易度1の問題が4問あった。さらに労働衛生一般の問題の難易度もそれほど高くはなかった。
安全コンサルタント試験は衛生コンサルタント試験よりも筆記試験が難しいといわれる(※)ことがある。確かに、この表を見ても、産業安全法令は、労働衛生法令に比して難易度が高いという印象を受ける。これは、実際に解説を作成していてもそのように感じる。
※ 口述試験は逆に衛生コンサルタント試験の方が合格率は低い。
次の図は、労働衛生一般及び産業安全一般のそれぞれの問の正答率を、正答率の高い順に左側から並べたグラフである。このグラフ(折れ線)が下にあるほど難易度が高いということになる。2023 年度の労働衛生一般は、正答率70%以上の問題にすべて正答すると17問が正答できる。一方同年の産業安全一般では9問しか正答できないのである。
また、合格するためには、18点以上を確保しなければならない。仮に、正答率の高い問題の順に正答できるとすると、2023 年度の労働衛生一般は正答率が 67.3 %より高い問題を解ければよい。これに対し、同年度の産業安全一般については、正答率50.0 %以上の問題まで解けなければならないのである。
では、労働衛生法令及び産業安全法令についてはどうだろうか。次のグラフを見て頂きたい。2021年度の労働衛生法令は、かなり難易度が高かった(※)が、2022 年度は産業安全法令とほぼ同程度、2023 年度はかなり低くなっている。
※ 2021年度は、コロナ禍の関係で医師が筆記試験免除を受けることができないケースが多かった。そのために正答率が高くなったと思われるかもしれないが、これは後述するように事実に反する。少なくとも、当サイトの分析では、医師の正答率が他の受験者の正答率より低いという事実はない。
こちらは、合格するためには9問以上を確保しなければならない。2023年度の労働衛生法令は、正答率 69.6 %までの問題が解ければよい。これに対し、同年度の産業安全法令は正答率 45.3 %の問題まで解けなければ合格できないのである。
ここで、上記グラフについて、労働衛生コンサルタントと労働安全コンサルタントの試験ごとに過去3年の平均を取って、法令と一般のグラフを重ねてみよう。法令は15問しかないので、法令の最も難しい問は一般の2番目、法令の2番目の問は一般の4番目と、法令は一般の難易度が2倍の試験問題のところにプロットし、空白になる部分は直線でつないでいる。
これを見れば分かるように、安全法令は比較的易しい問題でも正答率が低いのである。難易度が高い部分は逆転しているが、合格のために必要なレベルの問題では明らかに法令の方が難易度が高い。また、労働衛生でも難易度が易しい問題と難易度が高い問題では一般と衛生でそれほど差はないものの、合否に影響を与えるレベルでは法令の方が難しいのである。
これは何を意味するだろうか? 合格を有利にするという観点だけから考えるのであれば、平均的な受験者(※1)にとっては、2023年度の傾向がこれからも続くなら、法令を受験するなら一般の免除を受けるべきではないということになる(※2)。
※1 もちろん、それぞれの得意分野が何かによって、結論は異なる。また、免除を受けないことで、試験の機会に学習をしておけば、後の仕事に役立つということもあろう。なお、記述式の問題で、60 %前後を確保できると仮定してのことである。
※2 労働衛生コンサルタント試験については、とくに 2021 年度は労働衛生法令の難易度が高かったため、この傾向が強かった。
なお、医師の資格を有する受験生はかなりおられる。ほとんどの方が労働衛生法令のみを受験しておられるが、次図を見ても分かるように、成績は医師以外の受験生(※)よりよい傾向がある。
※ 「保有資格」について何らかの回答をされた方で、保有資格に「医師」が含まれていない方を医師以外とした。なお、歯科医師は医師以外としてカウントした。なお、医師と医師以外の資格を保有している方は「医師」に分類してある。
医師が成績を下げているというのは、誤解に過ぎない。
(2)正答数の分布
次に、受験者の正答数の分布をみてみよう。次のグラフは、労働衛生一般及び産業安全一般について、正答した問題数ごとの受験者数(割合)を2021年度から2023 年度の平均について示している。
これを見て分かることは、3年分を平均すれば衛生の方がかなり成績が良いものの、極端に大きな違いはないということだ。
合格するためには 18 問以上に正答しなければならない。安全、衛生ともに最頻値は 18 問を上回っている。ただし、他の科目(法令、記述)で高得点を取れば、正答数が 18 問を下回っても逆転合格の可能性はある。
ただし、12 問よりも正答数が少なければ、その時点で不合格である。安全も衛生も足切りになる受験生がいるが、ほとんど学習が進まないうちに「お試し」的な受験をしたケースもあるだろう。
衛生について、過去3年分を個別にみると以下のようになっている。受験する年によってかなりのばらつきがあるようだが、同じ問題で試験をすることはできないので、やむを得ない面はあろう。
すべての年度で最頻値は 18 問を上回っている。しかし、最頻値は年々、下がっており 2023 年度はぎりぎりまで下がっている。
一方、12 問未満の受験生は、2021 年度は比較的多かったものの、全体としては少ないようだ。
安全もすべての年度で最頻値が 18 問を上回っているが、2021 年度を除くと最近はぎりぎりといったところだろうか。
一方、12 問未満の受験生はかなり少ない。比較的 2022 年度が多かったようだ。
一方、法令については全般に成績はあまりよくない。
次に、労働衛生法令と産業安全法令を比較してみよう。次図をみると、かなり労働衛生法令の方が成績が良いことが分かる。
これは試験問題の解説を作成していても、産業安全法令の方が難しいという印象を強く受ける。あまりにも細かい内容が出題されるのだ。
労働衛生法令は、2021年度、2022年度ともに最頻値が合格圏の9問を下回っている。ところが、2023年度は最頻値が9問を大きく上回ったばかりか、全体に難易度が下がっている。
これは、試験問題の解説を作成していても感じたが、労働衛生の常識的な知識があれば正答できる問題が 2023 年度は多かったように思う。ある程度、受験年度によって難易度が変動するのはやむを得ない面はあるが、やや極端だった。
しかし、2021年度の労働衛生法令については、裾切り値の9問を下回った受験者が 145 名中 35 名(24.1%)いる。かなりの難関だったといえよう。
一方、労働安全法令は、2021年度、2022年度ともに最頻値が合格圏の9問を上回っていたが、2023 年度は9問を下回ったばかりか全体に難易度が上昇した。しかも、2023 年度は裾切り値の6問を下回っている受験生がかなりいる。かなりの難関になったといえよう。
さて、ここでも、労働衛生法令について、医師の資格を有する受験者と医師以外の比較をしてみよう。次図を見れば明確だが、医師の方がその他の受験生に比して成績が良いことが分かる。
医師以外の成績は、最頻値が合格ラインの9問を下回っている。一方、医師の成績は、2022年度の最頻値が合格ラインを上回っているのである。
ただし、注意しなければならないことは、労働衛生法令で6問から8問の正解をした受験者が、かなりいることである。医師の場合は、ほとんどが労働衛生一般と衛生管理(記述式)の免除を受けているので、6問から8問の正解をした受験者はそのまま不合格になってしまう。
ところが、医師以外の受験者の多くは労働衛生一般の免除を受けていないのである。そして、労働衛生一般は6割以上の正答をした受験者の割合がかなり高い。そのため、6問から8問の正解をした医師以外の受験者で、合格をした方もかなりいると思われるのである。このため、医師の合格率が、医師以外の受験者の合格率よりも低い可能性は否定できない。
なお、労働衛生一般に関しては、2021年度は医師で受験された方は3名のみだったが、2022年度は11名、2023年度は36名おられる。そこで、2022 年度及び 2023 年度の得点の分布のグラフを次に示しておこう。
やはり医師の方が医師以外の受験者の方よりも成績は良いようだ。ただ、医師の方は、免除が受けられるにもかかわらずあえて受験しておられる方なので、そもそも労働衛生一般について自信のある方が多かっただろうから一般化はできないかもしれない。
ただ、それぞれの「問題ごとに医師の方と医師以外の方の正答率を見ると、ほぼ医師と医師以外の方で差はないが、顕著に医師の方が正答率の高い問題がある。
とくに正答率の差が大きいのは、問12(メタボリックシンドロームの診断基準)と問27(感度(敏感度)及び特異度の計算)で、医師の方が顕著に高い。
これに対し、医師の方の正答率が顕著に低かったのは、問5(電離放射線)と問29(労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針)である。
3 免除を受けるメリット・デメリットは

※ イメージ図(©photoAC)
最後になるが、このように見る限り、労働衛生コンサルタントに関しては、労働衛生法令を受けるのであれば、労働衛生一般の免除を受けることは、一般的には避けた方がよいことになる。
また、繰り返しになるが、合格後の仕事を適切に行うためにも、試験の免除を受けずに、受験の機会を利用して学習をしておくということも考えられる。試験のためとはいえ、一定の学習の効果は、仕事においても役に立つはずである。
もちろん、それぞれの受験生ごとに、得手不得手があるだろうからなんともいえないが、労働衛生一般の難易度はそれほど高くない。労働衛生一般の免除を受けるのであれば、慎重に検討をした方がよさそうだ。
とくに医師の受験者の方は、ほとんどの方が労働衛生法令のみを受験して、労働衛生一般を受験しておられない。しかし、先述したように、労働衛生法令のみで受験していると、6問から8問を正解しても不合格になってしまう。一方、労働衛生一般の免除を受けていなければ、合格した可能性があるのだ。
医師の方で、法令はあまり得意ではないという方は、労働衛生一般の免除を受けないことも視野に入れた方がよいかもしれない。
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