問15 常時250人の労働者を使用する食料品製造業の事業場から、労働安全コンサルタントに安全診断の依頼があり、安全診断を行った結果、当該事業場において次のような状況がみられた。これらの状況のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)2人の安全管理者を選任しており、そのうちの1人はその事業場に専属の者で、勤務時間のおおむね2分の1を安全管理の業務に充て、残りの2分の1を生産関係の業務に充てていた。他の1人は社外の労働安全コンサルタントで週1日来社し、安全管理の業務を行っていた。
(2)安全委員会の議長には、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者ではなく、統括管理する者に準ずる者である副工場長がなっていた。
(3)新たに職務に就くこととなった職長に対する安全又は衛生のための教育を行うに当たり、当該職長は「危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること」について十分な知識及び技能を有していると認められる者であるとされていなかったが、当該事項に関する教育を省略していた。
(4)食品加工用粉砕機について、その内容物の取出しが自動的に行われる構造になっていないことから、用具を使用してその内容物を取り出させていたが、取出しのときに当該機械の運転を停止させていなかった。
(5)荷の落下によりフォークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのない作業では、ヘッドガードを備えていないフォークリフトを使用していた。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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| 2025年度(令和07年度) | 問15 | 難易度 | 本問は、知識がなくても問題文の構造から正答が可能である。この種の問題を落としてはならない。 |
|---|---|---|---|
| 安全衛生法令全般 | 1 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。(中途段階なので、今後、修正があり得る。)
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問15 常時250人の労働者を使用する食料品製造業の事業場から、労働安全コンサルタントに安全診断の依頼があり、安全診断を行った結果、当該事業場において次のような状況がみられた。これらの状況のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。
(1)2人の安全管理者を選任しており、そのうちの1人はその事業場に専属の者で、勤務時間のおおむね2分の1を安全管理の業務に充て、残りの2分の1を生産関係の業務に充てていた。他の1人は社外の労働安全コンサルタントで週1日来社し、安全管理の業務を行っていた。
(2)安全委員会の議長には、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者ではなく、統括管理する者に準ずる者である副工場長がなっていた。
(3)新たに職務に就くこととなった職長に対する安全又は衛生のための教育を行うに当たり、当該職長は「危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること」について十分な知識及び技能を有していると認められる者であるとされていなかったが、当該事項に関する教育を省略していた。
(4)食品加工用粉砕機について、その内容物の取出しが自動的に行われる構造になっていないことから、用具を使用してその内容物を取り出させていたが、取出しのときに当該機械の運転を停止させていなかった。
(5)荷の落下によりフォークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのない作業では、ヘッドガードを備えていないフォークリフトを使用していた。
正答(3)
【解説】
(1)違反ではない。2人の安全管理者を選任していることについては、安衛法令では安衛則第4条第1項第三号以外に安全管理者の人数を規定しておらず、そもそもこの事業場では同号に該当しないので違反とはならない。
安全管理者のうち1人がその事業場に専属の者であることは違反になりようがない。また、その者が勤務時間のおおむね2分の1を安全管理の業務に充て、残りの2分の1を生産関係の業務に充てていること(専任でないこと)については、この事業場は食料品製造業なので、安衛則第4条第1項第四号の表の四の業種であり(安衛令第2条第二号に掲げる業種)常時雇用する労働者数が 2,000 人未満であるから違反とはならない。
他の1人が社外の労働安全コンサルタントで週1日来社し、安全管理の業務を行っていたことは、安衛則第4条第1項第二号但書(同規則第5条第二号)により、違反とはならない。
【労働安全衛生法】
(安全管理者)
第11条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(安全管理者)
第11条 (柱書 略)
一 (略)
二 製造業(物の加工業を含む。)(以下略) 300人
三 (略)
【労働安全衛生規則】
(安全管理者の選任)
第4条 法第11条第1項の規定による安全管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 (略)
二 その事業場に専属の者を選任すること。ただし、2人以上の安全管理者を選任する場合において、当該安全管理者の中に次条第二号に掲げる者がいるときは、当該者のうち1人については、この限りでない。
三 化学設備(労働安全衛生法施行令(以下「令」という。)第九条の三第一号に掲げる化学設備をいう。以下同じ。)のうち、発熱反応が行われる反応器等異常化学反応又はこれに類する異常な事態により爆発、火災等を生ずるおそれのあるもの(配管を除く。以下「特殊化学設備」という。)を設置する事業場であつて、当該事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄都道府県労働局長」という。)が指定するもの(以下「指定事業場」という。)にあつては、当該都道府県労働局長が指定する生産施設の単位について、操業中、常時、法第10条第1項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理するのに必要な数の安全管理者を選任すること。
四 次の表の中欄に掲げる業種に応じて、常時同表の下欄に掲げる数以上の労働者を使用する事業場にあつては、その事業場全体について法第十条第一項各号の業務のうち安全に係る技術的事項を管理する安全管理者のうち少なくとも一人を専任の安全管理者とすること。ただし、同表四の項の業種にあつては、過去三年間の労働災害による休業一日以上の死傷者数の合計が百人を超える事業場に限る。
| 四 | 令第2条第一号及び第二号に掲げる業種(一の項から三の項までに掲げる業種を除く。) | 2,000人 |
2及び3 (略)
(安全管理者の資格)
第5条 法第11条第1項の厚生労働省令で定める資格を有する者は、次のとおりとする。
一 (略)
二 労働安全コンサルタント
三 (略)
(2)違反ではない。安衛法第 17 条第3項(及び同第2項第一号)により、安全委員会の議長は、必ずしもその事業場においてその事業の実施を統括管理する者が就任する必要はなく、統括管理する者に準ずる者であれば副工場長であっても就任できる。
【労働安全衛生法】
(安全委員会)
第17条 事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。
一~三 (略)
2 安全委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員(以下「第一号の委員」という。)は、一人とする。
一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
二及び三 (略)
3 安全委員会の議長は、第一号の委員がなるものとする。
4及び5 (略)
(3)違反となる。安衛法第 60 条による新たに職務に就くこととなった職長に対する職長教育では、安衛則第 40 条第2項表により、「危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること」について教育を行わなければならない。
これは、十分な知識及び技能を有していると認められる者であるとされていないのであれば、安衛則第 40 条第3項による省略はできない。常識で考えても、他に省略しても良いと思える要素が全くないのに、「十分な知識及び技能を有していると認められる者であるとされていない」者に対する教育を省略して良いわけがないだろう。試験官のサービス問題である(※)。
※ 本肢は「者であるとされていない」という、日本語として違和感をもつ表現がある。ことによると、試験官の作成した最初の原案は最終形とは異なっていたが、「厳密に言えばおかしい」というダメ出しが出て文章をいじりまわしているうちにこうなったのかもしれない。
【労働安全衛生法】
第60条 事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
一及び二 (略)
三 前二号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの
【労働安全衛生規則】
(職長等の教育)
第40条 法第60条第三号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 法第28条の2第1項又は第57条の3第1項及び第2項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
二及び三 (略)
2 法第60条の安全又は衛生のための教育は、次の表の上欄に掲げる事項について、同表の下欄に掲げる時間以上行わなければならないものとする。
| 事項 | 時間 |
|---|---|
| (略) | (略) |
|
前項第一号に掲げる事項 一 危険性又は有害性等の調査の方法 二 危険性又は有害性等の調査の結果に基づき講ずる措置 三 (略) |
四時間 |
| (略) | (略) |
3 事業者は、前項の表の上欄に掲げる事項の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる者については、当該事項に関する教育を省略することができる。
(4)違反ではない。安衛則第 130 条の7によれば、食品加工用粉砕機について、その内容物の取出しが自動的に行われる構造になっていないことから、用具を使用してその内容物を取り出させれば、取出しのときに当該機械の運転を停止させていなかったとしても違反とはならない。
【労働安全衛生規則】
(粉砕機等への転落等における危険の防止)
第130条の5 事業者は、食品加工用粉砕機又は食品加工用混合機の開口部から転落することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、蓋、囲い、高さが90センチメートル以上の柵等を設けなければならない。ただし、蓋、囲い、柵等を設けることが作業の性質上困難な場合において、墜落による危険のおそれに応じた性能を有する墜落制止用器具(以下「要求性能墜落制止用器具」という。)を使用させる等転落の危険を防止するための措置を講じたときは、この限りでない。
2及び3 (略)
(粉砕機等から内容物を取り出す場合における危険の防止)
第130条の7 事業者は、第130条の5第1項の機械(内容物の取出しが自動的に行われる構造のものを除く。)から内容物を取り出すときは、当該機械の運転を停止し、又は労働者に用具等を使用させなければならない。
2 (略)
(5)違反ではない。安衛則第 151 条の 17 但書により、荷の落下によりフォークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのない作業であれば、ヘッドガードを備えていないフォークリフトを使用していても違反とはならない。
なお、実務においては、極端に天井が低い場所や上部にダクトやパイプがあって、ヘッドガードを備えているフォークリフトでは作業ができないという場合にヘッドガードのないフォークリフトを使用することがある。通常の作業では「荷の落下によりフォークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのない作業」であったとしても、ヘッドガードのないフォークリフトを使用してはならないことは当然である。
【労働安全衛生規則】
(ヘツドガード)
第151条の17 事業者は、フオークリフトについては、次に定めるところに適合するヘツドガードを備えたものでなければ使用してはならない。ただし、荷の落下によりフオークリフトの運転者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。
一及び二 (略)





