問10 クレーン、ゴンドラ等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、屋外に設置されているクレーンを用いて瞬間風速が毎秒 30 メートルを超える風が吹いた後に作業を行うとき、又はクレーンを用いて中震以上の震度の地震の後に作業を行うときは、あらかじめ、クレーンの各部分の異常の有無について点検を行わなければならない。
(2)事業者は、移動式クレーンを用いて荷をつり上げるときは、外れ止め装置を使用しなければならない。
(3)事業者は、つりチェーンで、伸びが当該つりチェーンが製造されたときの長さの5パーセントを超えるものをクレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具として使用してはならない。
(4)ゴンドラは、つり足場及び昇降装置その他の装置並びにこれらに附属する物により構成され、当該つり足場の作業床が専用の昇降装置により上昇し、又は下降する設備である。
(5)事業者は、可搬型のゴンドラの組立て又は解体の作業を行うときは、作業を指揮する者を選任して、その者の指揮の下に作業を実施させなければならない。
※ イメージ図(©photoAC)
このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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| 2025年度(令和07年度) | 問10 | 難易度 | クレーン則に関する条文問題。基本的な内容ではあるが正答率は低かった。 |
|---|---|---|---|
| クレーン等災害の防止 | 5 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。(中途段階なので、今後、修正があり得る。)
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問10 クレーン、ゴンドラ等に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。
(1)事業者は、屋外に設置されているクレーンを用いて瞬間風速が毎秒 30 メートルを超える風が吹いた後に作業を行うとき、又はクレーンを用いて中震以上の震度の地震の後に作業を行うときは、あらかじめ、クレーンの各部分の異常の有無について点検を行わなければならない。
(2)事業者は、移動式クレーンを用いて荷をつり上げるときは、外れ止め装置を使用しなければならない。
(3)事業者は、つりチェーンで、伸びが当該つりチェーンが製造されたときの長さの5パーセントを超えるものをクレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具として使用してはならない。
(4)ゴンドラは、つり足場及び昇降装置その他の装置並びにこれらに附属する物により構成され、当該つり足場の作業床が専用の昇降装置により上昇し、又は下降する設備である。
(5)事業者は、可搬型のゴンドラの組立て又は解体の作業を行うときは、作業を指揮する者を選任して、その者の指揮の下に作業を実施させなければならない。
正答(5)
【解説】
本問は、クレーンの安全に関係している受験者にとっては、ごく基本的なものと思える内容であろう(※)。しかし、それ以外の受験者には、ここまで細かい内容を知っていることはほとんどないと思われ、かなりの難問である。
※ いずれも技能講習のテキストに載っている程度の内容である。
内容は、条文に即した条文問題であるが、数値が問われているものもあり、知識がないと正答できない。本問の解答は誤答の(3)と正答の(5)で別れたが、(3)には数値が使われている。
(1)正しい。クレーン則第 37 条により、事業者は、屋外に設置されているクレーンを用いて瞬間風速が毎秒 30 メートルを超える風(※)が吹いた後に作業を行うとき、又はクレーンを用いて中震以上の震度の地震の後に作業を行うときは、あらかじめ、クレーンの各部分の異常の有無について点検を行わなければならない。
※ なお、「瞬間風速が毎秒 30 メートルを超える風」は「暴風」とされている。これに対し、クレーン則第 31 条の2等に表れる「強風」は、通達(昭和 46 年4月 15 日基発第 309 号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について」)によって、「10 分間の平均風速が毎秒 10 メートル以上」との解釈が示されている。
【クレーン等安全規則】
(暴風後等の点検)
第37条 事業者は、屋外に設置されているクレーンを用いて瞬間風速が毎秒三十メートルをこえる風が吹いた後に作業を行なうとき、又はクレーンを用いて中震以上の震度の地震の後に作業を行なうときは、あらかじめ、クレーンの各部分の異常の有無について点検を行なわなければならない。
(2)正しい。クレーン則第 66 条の3により、事業者は、移動式クレーンを用いて荷をつり上げるときは、外れ止め装置を使用しなければならない。
なお、ここにいう外れ止め装置とは、移動式クレーン構造規格第 32 条のフックから玉掛け用ワイヤロープが外れるのを防止するための装置のことである。
※ 図は、厚生労働省「小型移動式クレーン運転技能講習=補助テキスト」(技能講習補助教材)より引用
【クレーン等安全規則】
(外れ止め装置の使用)
第66条の3 事業者は、移動式クレーンを用いて荷をつり上げるときは、外れ止め装置を使用しなければならない。
(3)正しい。クレーン則第 216 条(第一号)により、事業者は、つりチェーンで、伸びが当該つりチェーンが製造されたときの長さの5パーセントを超えるものをクレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具として使用してはならない。
条文を知らないと、「5%は大きすぎる」と思えるかもしれないが、吊具の廃棄基準に関しては、かなり緩いと思えるような基準が定められている(※)。
※ 仮に5%は大きすぎると思ったのであれば、本肢の「製造されたときの長さの5パーセントを超えるもの」は使用してはならないのであるから、本肢は正しいのである。そこに気づけば、本肢は正しい(正答ではない)と分かる。
【クレーン等安全規則】
(不適格なつりチエーンの使用禁止)
第216条 事業者は、次の各号のいずれかに該当するつりチエーンをクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛用具として使用してはならない。
一 伸びが、当該つりチエーンが製造されたときの長さの5パーセントをこえるもの
二及び三 (略)
※ ゴンドラ(©photoAC)
(4)正しい。安衛令第1条第十一号のの定義によれば、ゴンドラとは、つり足場及び昇降装置その他の装置並びにこれらに附属する物により構成され、そのつり足場の作業床が専用の昇降装置により上昇し、又は下降する設備である。
ゴンドラが使用されているのを、一般の方が見かけるとすれば、ビルメンテナンス作業に使用されるものであろう。写真はゴンドラの一例であるが、作業者の乗るゴンドラの部分を「つり足場」と表現しているのである。
人が乗って作業をすることが目的であり、簡易リフトや建設用リフトが「荷のみを運搬することを目的とするエレベーター」(安衛令第1条第九号及び第十号)であることと異なっている。
【労働安全衛生法施行令】
(定義)
第1条 この政令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一~十 (略)
十一 ゴンドラ つり足場及び昇降装置その他の装置並びにこれらに附属する物により構成され、当該つり足場の作業床が専用の昇降装置により上昇し、又は下降する設備をいう。
【ゴンドラ安全規則】
(定義)
第1条 この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 ゴンドラ 労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「令」という。)第1条第十一号のゴンドラをいう。
二~四 (略)
(5)誤り。このような規定はない。そもそもゴンドラは、製造工場で製造されて、使用する場所に設置するものであり、法的には可搬式が前提となっている。本肢の「組立て又は解体」が何を意味するのかややあいまいではあるが、工場での製造時に作業指揮者を選任することは考えにくいので、設置又は撤去を意味するのであろう。
しかし、設置にあたっては設置報告書の提出と使用検査を受けることを別とすれば、ゴンドラ則にはとくに規定は設けられていない。





