労働安全コンサルタント試験 2025年 産業安全一般 問28

化学物質リスクアセスメント指針




問題文
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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2025年度(令和07年度) 問28 難易度 化学物質RA指針に関する問題は、安全では初出。しかし内容は基本的なもの。正答しておきたい。
化学物質RA指針  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問28 厚生労働省の「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」及びその関係通達に基づく化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)厚生労働省版コントロール・バンディングは、あらゆる業種の化学物質取扱事業者に向けた簡易なリスクアセスメントツールで、有害性に係るリスクの見積りだけでなく危険性に係るリスクの見積りも行うことができる。

(2)リスクの見積りに当たっては、過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もる。

(3)負傷又は疾病の重篤度は、傷害や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましいことから、基本的に、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用する。

(4)危険性又は有害性のより低い物質への代替に当たって、危険性又は有害性が不明な物質を、危険性又は有害性が低いものとして扱うことは避ける。

(5)リスク低減措置の管理的対策には、作業手順の改善、立入禁止措置、作業時間の短縮、マニュアルの整備、警報の運用、教育訓練の実施等がある。

正答(1)

【解説】

問28試験結果

試験解答状況
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本問は、問題文にもあるように「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号。以下「指針」という。)からの出題である。

また、行政より解釈例規「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」(平成27年9月18日基発 0918 第3号。以下「通達」という。)が定められている。

(1)適切ではない。厚生労働省版コントロール・バンディングは、危険性に係るリスクの見積りは行うことができない(※)

※ 厚生労働省の「厚生労働省版コントロール・バンディング」のサイトには「化学物質の健康有害性についての簡易なリスクアセスメント手法として、「コントロール・バンディング」があります」とし、健康有害性のリスクアセスメントを目的としたものであるとされている。危険性のリスクアセスメントには使用できない。

厚生労働省版コントロール・バンディングと、CREATE-SIMPLE を混同してはならない(※)

※ すでに、化学物質の簡易なリスクアセスメントツールとしては、CREATE-SIMPLE が一般的になっている。こちらは、有害性に係るリスクの見積りは経気道ばく露のみならず経皮ばく露についても可能であり、危険性に係るリスクの見積りも(抽象的なレベルでは)行うことができる。

いまさら誰も「厚生労働省版コントロール・バンディング」などは使わないだろう。コンサルタント試験の問題として適切なのかについては、やや疑問を感じる。

(2)適切である。指針の「9 リスクの見積り」の(3)のアに「過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もる」とされている。

【負傷又は疾病の重篤度の見積もり】

9 リスクの見積り

(3)事業者は、(1)のアの方法によるリスクの見積りに当たり、次に掲げる事項等に留意するものとする。

 過去に実際に発生した負傷又は疾病の重篤度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷又は疾病の重篤度を見積もること。

イ及びウ(略)

※ 厚生労働省「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号)より

(3)適切である。指針9の(3)のイに「負傷又は疾病の重篤度は、傷害や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましいことから、基本的に、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用すること」とされている。

【負傷又は疾病の重篤度の見積もり】

9 リスクの見積り

(3)事業者は、(1)のアの方法によるリスクの見積りに当たり、次に掲げる事項等に留意するものとする。

(略)

 負傷又は疾病の重篤度は、傷害や疾病等の種類にかかわらず、共通の尺度を使うことが望ましいことから、基本的に、負傷又は疾病による休業日数等を尺度として使用すること。

(略)

※ 厚生労働省「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号)より

(4)適切である。指針には書かれていないが、厚労省のQandAにもあるように、当然のことである。

【危険有害性が不明な化学物質への代替】

Q3-6.リスクアセスメント対象物からそれ以外の物質に代替すれば、リスクアセスメントは実施しなくても良いか。

A.リスクアセスメント対象物以外であれば実施義務はありませんが、代替後の化学物質が何らかの危険有害性を有している場合には、リスクアセスメントを実施するよう努めなければなりません。 また、物質の代替を検討する場合には、

・ ばく露限界値がより大きい化学物質

・ GHS 又はJIS Z 7252「GHSに基づく化学品の分類方法」に基づく危険性または有害性の区分がより低い化学物質

 など、危険有害性が低いことが明らかな化学物質への代替を行うものとし、危険有害性が不明な化学物質等への代替は避けなければなりません。

※ 厚生労働省「化学物質対策に関するQ&A(リスクアセスメント関係)」のQ3-6より

(5)適切である。通達の記の10の(1)のエに、リスク低減措置の管理的対策には、作業手順の改善、立入禁止措置、作業時間の短縮、マニュアルの整備、警報の運用、教育訓練の実施等があるとされている。

【管理的対策=指針の記述】

10 リスク低減措置の検討及び実施

(1)事業者は、法令に定められた措置がある場合にはそれを必ず実施するほか、法令に定められた措置がない場合には、次に掲げる優先順位でリスク低減措置の内容を検討するものとする。ただし、法令に定められた措置以外の措置にあっては、9(1)イの方法を用いたリスクの見積り結果として、ばく露濃度等がばく露限界を相当程度下回る場合は、当該リスクは、許容範囲内であり、リスク低減措置を検討する必要がないものとして差し支えないものであること。

ア及びイ(略)

 作業手順の改善、立入禁止等の管理的対策

(略)

※ 厚生労働省「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号)より

【管理的対策=通達による指針の解釈】

10 リスク低減措置の検討及び実施について

(1)指針の10(1)については、次に掲げる事項に留意すること。

ア~ウ(略)

 指針の10(1)ウの「管理的対策」には、作業手順の改善、立入禁止措置のほか、作業時間の短縮、マニュアルの整備、ばく露管理、警報の運用、複数人数制の採用、教育訓練、健康管理等の作業者等を管理することによる対策が含まれること。

(略)

※ 厚生労働省「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」(平成27年9月18日基発 0918 第3号)より