労働安全コンサルタント試験 2025年 産業安全一般 問20

静電気対策




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2025年度(令和07年度) 問20 難易度 静電気に関する問題は、3年連続の出題。ごく基本的な内容であり、正答率は高い。
静電気対策  2 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問20 静電気に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

(1)爆発性雰囲気が存在する区域であっても、静電気帯電防止作業服であれば服の着脱による爆発の危険性はない。

(2)正に帯電した物体に絶縁靴を履いた作業者が近づくと、人体は静電誘導によって一様に負に帯電する。

(3)静電気放電による可燃性ガスの最小着火エネルギーは、ガスの種類によらずほぼ同じである。

(4)作業者が静電気帯電防止靴を履いている場合は、作業床の材料によらず、帯電を防止することができる。

(5)沿面放電は、放電エネルギーが大きく、可燃性ガス・蒸気だけでなく可燃性粉体の着火源にもなり得る。

正答(5)

【解説】

問20試験結果

試験解答状況
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静電気対策に関する問題は3年連続の出題である。内容的には、正答の肢である(5)以外は、ごく基本的な内容であり、正答しておきたい問題である。

(1)適切ではない。帯電防止作業服とは、布地に等間隔で縞状に導電性の繊維を織り込んで、繊維間にコロナ放電を起こすことにより、静電気放電を防止するものである。素材の最大帯電電荷量は、布地1m当たり7µC 以下でなければならないとされている。また、その他にもファスナーやボタンは原則として樹脂製のものとすることや、裏地は表面積の 20% 以内とすることなどが JIS に定められている。

しかし、水素ガスのような最小着火エネルギーの低いガスでは、コロナ放電のようなエネルギーの低い放電でも爆発の危険性がないとはいえない。

また、帯電防止作業服といえど、着脱時には一定の放電を起こす可能性はあるので、爆発の可能性は完全には否定できないのである。そのため、労働省産業安全研究所(※)の「静電気安全指針 応用編追補」でも、「帯電防止作業服は、静電気に起因する災害・障害の発生危険の恐れがある場所では、着脱しないこと」と規定している。

※ 現・独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所

【帯電防止作業服の着脱の危険】

1 静電気帯電防止靴・作業服・手袋の使用基準

1.5 帯電防止靴、帯電防止服及び帯電防止手袋の管理

(2)帯電防止作業服の管理

(c)使用時の注意

  帯電防止作業服を使用するに当たっては、次の事項に留意すること。

(ロ)帯電防止作業服は、静電気に起因する災害・障害の発生危険の恐れがある場所では、着脱しないこと

※ 労働省産業安全研究所「静電気安全指針 応用編追補」(1986年3月)より

なお、JIS T 8118:2001「静電気帯電防止作業服」にも「可燃性物質のような危険物が存在する場所では、着脱しない」という注記をすることが規定されている。

【帯電防止作業服の着脱の危険】

10.取扱い上の注意事項

   帯電防止服には、次のような取扱い上の注意事項を示さなければならない。

a)及びb)(略)

c)可燃性物質のような危険物が存在する場所では、着脱しない。

d)~f)(略)

※ JIS T 8118:2001「静電気帯電防止作業服」より

(2)適切ではない。絶縁靴が完全なものであれば、人体の電荷の量の合計は変わらない。帯電した物体側が負に帯電すれば、反対側は正に帯電する(※)

※ 例えば、労働安全衛生総合研究所「静電気安全指針2007」など

【誘導帯電】

第3章 静電気安全の基礎

3.3 種々の静電気帯電

3.3.2 誘導帯電

誘滋帯電

  接触・分離の電荷分離による帯電のほかに静電誘導による帯電がある。これは導体にのみ起こる現象であ帯電物体の近くに電気的に絶縁された郡体があると、静電誘導により導体表面で電荷の不均一分布が生じ、かつ、電位が上昇する。これが静電誘導であり、これに起因する帯電を誘導帯電という。図 3.5a に示すように、正に帯電した物体に電気的に絶縁された導体が近づくと帯電物体に近い表面では負の電荷が、反対側には正の電荷が現れこれを静電誘導という。(以下略)

7  人は静電気的には導体として扱えるので人も誘導で帯電する。

8 これは、導体の表面電位はいたるところ同じである(表面で接線成分の電解がゼロ)が、帯電物体があるとその電界により導体表面の接線成分の電界が現れる。この電界を打ち消すために電荷が表面で再分布することによる。また,電荷は再分布(分離)しているだけで,総電荷量としては変わらない。

※ 労働安全衛生総合研究所「静電気安全指針2007」(労働安全衛生総合研究所安全指針 JNIOSH-TR-No.42(2007))より

(3)適切ではない。可燃性ガスの濃度が爆発限界値の範囲内にある場合、一定のエネルギーによってそのガスは爆発する。この爆発に必要な最低のエネルギーが「最小着火エネルギー」(MIE:Minimum Ignition Energy)である。最小着火エネルギーが小さいほど、爆発しやすいと言える。

その大きさは可燃性ガスの種類だけでなく、濃度、温度及び圧力によっても異なる。

(4)適切ではない。静電気帯電防止靴は、人体に溜まった電荷を大地へ逃がすために電気抵抗を落とした靴である。従って、作業床が絶縁性の物であれば、帯電を防止することはできないし、他にも様々な制約がある。

JIS T 8103:2010「静電気帯電防止靴」は、そのような制限を取扱説明書に記載しなければならないとしている。

【静電気帯電防止靴】

14 取扱説明書

  静電靴等には,次に示す各項の主旨の注意事項を記載した取扱説明書を添付するか,又は一包装ごとに表示しなければならない。

a)~e)(略)

f)絶縁性のプラスチック系張り床、塗り床などでは帯電防止が期待できない。また、屋外環境等において床の漏れ抵抗が一定でないと考えられる場合、事前に床の漏れ抵抗を JIS C 61340-4-1 に従って測定し、必要な対策を講じる。

g)~k)(略)

※ JIS T 8103:2010「静電気帯電防止靴」より
等価エネルギーと最小着火エネルギーの概略範囲

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(5)適切である。児玉(※)が、各種の放電のエネルギーと可燃物の着火エネルギーについて分かりやすく図にまとめている。等価放電エネルギーは、コロナ放電が最も小さく、ブラシ放電、沿面放電の順に大きくなる。沿面放電は、放電エネルギーが大きく、可燃性ガス・蒸気だけでなく可燃性粉体の着火源にもなり得る。

※ 児玉勉「静電気による爆発とその防止対策」(電気設備学会誌 Vol.29 No.8 2009年)。図の引用も同じ。