労働安全コンサルタント試験 2025年 産業安全一般 問07

トラックにおける荷役作業時の安全対策




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

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2025年度(令和07年度) 問07 難易度 省令改正の内容と通達を学んでおけば正答できた内容。マイナーな改正だったためか、正答率は低かった。
荷役作業  4 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問7 トラックにおける荷役作業時に実施した安全対策に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)テールゲートリフターの昇降板を中間位置で停止させ、トラックの荷台への昇降設備として使用した。

(2)トラックにテールゲートリフターを使用して荷の積卸作業を行うときに、飛来・落下物用の保護帽を着用して作業した。

(3)テールゲートリフターを操作するために運転席を離れるとき、トラックのサイドブレーキを確実にかけたが、エンジンは停止させなかった。

(4)トラックの荷台への昇降のためのステップを、荷台上の人から見える、荷台の後方に突出した形状のものにした。

(5)作業を行う日の作業開始前に、トラックの車輪やブレーキ等の点検に併せて、テールゲートリフターの点検を行った。

正答(2)

【解説】

問7試験結果

試験解答状況
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本問は、2023 年の省令改正に絡む問題である。省令改正の直後から数年間はこのような問題が出題されることがある。行政のパンフレットで構わないので、受験前の数年間の改正についての概要は把握しておく必要がある。

(1)適切でないとは言えない。テールゲートリフターの昇降板を中間位置で停止させて、トラックの荷台への昇降設備として使用することは、行政の通達(※)でも認められている。

※ 令和5年3月28日基発0328第5号「貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則の一部を改正する省令及び安全衛生特別教育規程の一部を改正する件の施行について

テールゲートリフターの昇降板に人が乗ったまま昇降することは、貨物自動車(トラック)の用途外使用となるが、そのことと混同してはならない。

【テールゲートリフターのステップとしての使用】

3 細部事項

(1)昇降設備の設置(安衛則第 151 条の 67 関係)

ア及びイ(略)

 「昇降設備」には、踏み台等の可搬式のもののほか、貨物自動車に設置されている昇降用のステップ等を含むものであること。テールゲートリフターを中間位置で停止させてステップとして使用する場合にあっては、当該テールゲートリフターについても、昇降設備として認められるものであること。(後略)

エ及びオ(略)

※ 厚生労働省「貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則の一部を改正する省令及び安全衛生特別教育規程の一部を改正する件の施行について」(令和5年3月28日基発0328第5号)

(2)適切ではない。荷台やテールゲートリフターから墜落するおそれがあるので、墜落時保護用の保護帽を着用するべきである。

なお、型別にみた陸上貨物運送業の休業4日以上の死傷災害で、最も多い型は墜落・転落である。これは、墜落・転落の労働災害の防止の一環としての規制強化なのである。

【墜落時保護用の保護帽】

第2 陸運事業者の実施事項

2 荷役作業における労働災害防止措置

(2)墜落・転落による労働災害の防止対策

 荷役作業を行う労働者に次の事項を遵守させること。

①~④ (略)

 墜落・転落の危険のある作業においては、墜落時保護用の保護帽を着用すること。

⑥~⑪ (略)

※ 厚生労働省「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」(平成 25 年3月 25 日基発 0325 第1号

(3)適切でないとは言えない。エンジンを止めたままテールゲートリフターなどの作業装置を操作しているとバッテリー切れを起こす恐れがあるため、安衛則第 151 条の 11 第1項但書により、(テールゲートリフターなどの作業装置を操作する場合に限り)運転席を離れるときにエンジンを停止させなくても安衛法違反にはならない。なお、同項の但し書きの「作業装置」には、テールゲートリフターや(積載型移動式クレーンの)クレーン装置などが該当する。

本肢の場合、同条第3項及び第4項の規定にも合致しているので、法令には違反しない。

なお、テールゲートリフターのメーカは、取扱説明書などでテールゲートの操作中はエンジンを切らないことを推奨している。しかし、現実にはテールゲートリフターを、荷役作業で 10 回程度上昇させたとしてもバッテリー切れを起こすなどとは考えにくく(※)、(荷主の要請等もあって)現実にはエンジンを切ることが多いだろう。

※ 気温や充電の状況にもよるので、絶対とは言い切れないが可能性は低いだろう。なお、下降は重力を利用しているので、バッテリーは使用しない。

【労働安全衛生規則】

(運転位置から離れる場合の措置)

第151条の11 事業者は、車両系荷役運搬機械等の運転者が運転位置から離れるときは、当該運転者に次の措置を講じさせなければならない。ただし、走行のための運転位置と作業装置の運転のための運転位置が異なる貨物自動車を運転する場合であつて、労働者が作業装置の運転のための運転位置において作業装置を運転し、又は運転しようとしている場合は、この限りでない

 フォーク、ショベル等の荷役装置(テールゲートリフターを除く。)を最低降下位置に置くこと。

 原動機を止め、かつ、停止の状態を保持するためのブレーキを確実にかける等の車両系荷役運搬機械等の逸走を防止する措置を講ずること。

 (略)

 事業者は、第一項ただし書の場合において、貨物自動車の停止の状態を保持するためのブレーキを確実にかける等の貨物自動車の逸走を防止する措置を講じさせなければならない。

 貨物自動車の運転者は、第一項ただし書の場合において、前項の措置を講じなければならない。

【運転席から離れる場合の措置】

3 細部事項

(4)運転位置から離れる場合の措置(安衛則第 151 条の 11 関係)

  テールゲートリフターの収納位置は、必ずしも最低降下位置でないことから、運転者が運転位置から離れるときにおける荷役装置を最低降下位置に置く義務について適用を除外することとしたこと。また、テールゲートリフター等の作業装置(以下「テールゲートリフター等」という。)の操作のためには原動機を動作させなければならない構造のものも存在することから、走行のための運転位置とテールゲートリフター等の操作位置が異なる貨物自動車を運転する場合において、テールゲートリフター等を操作し、又は操作しようとしている場合は、原動機の停止義務の適用を除外することとしたこと。なお、ブレーキを確実にかける等の貨物自動車の逸走防止措置については、改正省令による改正後の安衛則第151条の11第3項により、引き続き義務付けられることに留意すること。

※ 厚生労働省「貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則の一部を改正する省令及び安全衛生特別教育規程の一部を改正する件の施行について」(令和5年3月28日基発0328第5号)(下線強調引用者)

(4)適切でないとは言えない。トラックの荷台への昇降のためのステップは、荷台の後方であれば突出した形状のものとすることもあり得る。厚労省のパンフレットでも、この方式は望ましいとされている。

【貨物自動車に設置されているステップ】

3 運転位置から離れる場合の措置が一部改正されます

昇降設備の留意事項について

建込み方式軽量鋼矢板工法

  貨物自動車に設置されているステップで突出していないもの(上から見たときにステップが見えない等)は、墜落・転落するリスクが高いため、より安全な昇降設備を設置するようにしてください。

※ 図はクリックすると拡大します。

※ 厚生労働省「トラックでの荷役作業時における安全対策が強化されます。」(パンフレット)より

なお、この方法は、前述した厚労省の通達においても、昇降設備として認められている。

【テールゲートリフターのステップとしての使用】

3 細部事項

(1)昇降設備の設置(安衛則第 151 条の 67 関係)

ア及びイ(略)

 「昇降設備」には、踏み台等の可搬式のもののほか、貨物自動車に設置されている昇降用のステップ等を含むものであること。(後略)

エ及びオ(略)

※ 厚生労働省「貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則の一部を改正する省令及び安全衛生特別教育規程の一部を改正する件の施行について」(令和5年3月28日基発0328第5号)

(5)適切でないとは言えない。テールゲートリフターは荷役装置に含まれるものであることから、作業を行う日の作業開始前に、トラックの車輪やブレーキ等の点検に併せて、テールゲートリフターの点検を行わなければならない。

【労働安全衛生規則】

(点検)

第151条の75 事業者は、貨物自動車を用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、次の事項について点検を行わなければならない。

 (略)

 荷役装置及び油圧装置の機能

三及び四 (略)

【テールゲートリフターの点検】

3 細部事項

(6)その他

  テールゲートリフターは荷役装置に含まれるものであることから、安衛則第151条の75第2号の規定に基づき、作業開始前の点検が必要なものであること。なお、作業開始前の点検を実施するに当たっては、テールゲートリフターの製造者が作成した取扱説明書等を適宜参照しながら行うことが望ましいこと。

※ 厚生労働省「貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則の一部を改正する省令及び安全衛生特別教育規程の一部を改正する件の施行について」(令和5年3月28日基発0328第5号)