労働安全コンサルタント試験 2025年 産業安全一般 問03

金属材料における損傷や破壊




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

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2025年度(令和07年度) 問03 難易度 金属材料の損傷等に関する高度な問題。ただ過去に類似問題は多い。正答しておきたいところ。
金属材料の損傷・破壊  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問3 金属材料における損傷や破壊に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)ぜい性破壊は、低温や切欠きなどを原因として、材料が塑性変形をほとんど伴わずに破壊する現象である。

(2)延性破壊を生じた丸棒には絞りが見られ、その破断面にはディンプルが観察される。

(3)高サイクル疲労破壊は、繰返し応力が比較的低くても発生するものであり、初期段階で生じた微小亀裂が繰返し応力により急速に進展し、最終的に破断する現象である。

(4)応力腐食割れは、腐食環境、材料の腐食環境に対する感受性及び引張応力の3要素が揃ったときに発生する。

(5)クリープ変形は、高温で長時間荷重が作用することにより、時間とともに変形が進行する現象である。

正答(3)

【解説】

問3試験結果

試験解答状況
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(1)適切でないとはいえない。脆性破壊(brittle fracture)とは、物質が塑性変形をほとんど伴わずに破壊する現象のことである。ガラスやセラミックスの破壊がその典型例である。

材料に切欠きがあったり(切欠き脆性)、低温環境下で(低温脆性)は、脆性破壊が起こりやすくなる。

※ (一社)日本機械学会「機械工学辞典」の「脆性破壊」は、次のように説明する。

【脆性破壊】

  塑性変形をほとんど伴わない破壊、ガラスやセラミックスの破壊が典型的な脆性破壊であり、き裂の急速進展によって起こる。(中略)鋼材の場合、切欠が存在したり、低温となるほど脆性破壊が生じやすくなり、それぞれ切欠脆性、低温脆性と呼ばれる。(後略)

※ (一社)日本機械学会「脆性破壊」(機械工学辞典より)

(2)適切でないとはいえない。延性破壊を生じた丸棒に絞りが見られることは当然である。破断面には、粒界破壊でも粒内破壊でも、ディンプルが観察される。

なお、脆性破壊ではリバーパターン、疲労破壊ではストライエーションなどが観察される。

(3)適切ではない。高サイクル疲労破壊とは、繰り返し荷重が 104 回から 105 回程度以上の疲労破壊現象をいう。これに対し、繰返し数がそれ以下で疲労破壊することを低サイクル疲労破壊という。

例えば、原子力百科事典「高サイクル疲労」は、次のように述べる。

【高サイクル疲労】

  材料に繰返し応力又は繰返しひずみを加えた結果、発生する材料の破壊現象。実用上問題となる破壊までの繰返し数が1万〜10万回以上の場合を高サイクル疲労といい、それ以下を低サイクル疲労と称している。高サイクル疲労では最大負荷応力は弾性限内である。例えば原子炉内冷却水の圧力変動による冷却管の流体振動による疲労は高サイクル疲労である。

※ 原子力百科事典「高サイクル疲労」より

また、(一社)日本機械学会「機械工学辞典」の「疲労」は、低サイクル疲労と高サイクル疲労で、疲労の微視的機構に本質的な差異はないとする。

【疲労】

  (前略)破断寿命が104から105回の繰返し数を境にして,低繰返し数の場合を低サイクル疲労,高繰返し数の場合を高サイクル疲労と区別するが,疲労の微視的機構に本質的な差異はない.(後略)

※ (一社)日本機械学会「脆性破壊」(機械工学辞典より)

(4)適切でないとはいえない。応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)は、材料的因子(発生しやすい材料(オーステナイト系ステンレス、炭素鋼、黄銅など)かどうか)・環境因子(材料ごとに SCC を起こしやすい雰囲気があるか)・力学的因子(応力が生じていること=外部応力のみならず溶接時の残留応力(引張応力)なども含まれる)の3つの要素が揃ったときに発生する。

(5)適切でないとはいえない。クリープ変形とは、物体に一定の応力が作用し続けると、時間の経過とともにひずみが増大する現象で、主に高温環境下で顕著に現れる。

なお、本肢は産業安全一般 2021 年度問 15 の(2)の解説を覚えていれば、適切であると分かる肢である。

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