労働安全コンサルタント試験 2025年 産業安全一般 問01

安全管理等(一般)




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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2025年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全一般」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等を削除した場合があります。

 他の問題の解説をご覧になる場合は、「下表の左欄」、グローバルナビの「安全衛生試験の支援」又は「パンくずリスト」をご利用ください。

 柳川に著作権があることにご留意ください。

2025年度(令和07年度) 問01 難易度 安全管理に関するごく基本的な問題。過去に類似問題もあり、確実に正答できなければならない。
安全管理等(一般)  1 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問1 安全管理等に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

(1)ツールボックスミーティングは、作業開始前や作業の切替え時に、監督者を中心に、短時間でその日の作業の範囲、段取り、分担、安全衛生のポイント等を現場で話し合うものである。

(2)KY活動は、現場でその日の作業を開始する前に、作業の状況を描いたイラストシート等を用いて、危険要因やそれに対する対策を話し合って決め、その対策を一人ひとりが実践するものである。

(3)効果の上がる安全管理を行うには、事業場トップから各級の管理者、監督者に至るまで、それぞれの役割、責任、権限を明らかにして安全管理のための活動に取り組むことが必要である。

(4)4Sのうちの整理とは、必要なときに必要な物をすぐ取り出せるように、わかりやすく安全な状態で配置、収納することをいう。

(5)安全管理体制は、業種、規模等に応じて、法令で義務付けられている事項を満たした上で、その事業場の実態に即した安全活動を実施することができる体制にすることが必要である。

正答(4)

【解説】

問1試験結果

試験解答状況
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本問の正答率はきわめて高い。(4)の4Sの定義は、そのままではないものの過去に何度か出題されたことがある。それらの問題を学習したときに、整理、整頓の定義を覚えておくことで正答できる問題である。

さらに、(3)及び(5)は、かなり抽象的な内容で、誤っているという要素がないものである。

(1)適切でないとは言えない。ツールボックスミーティング(TBM:Tool Box Meeting)とは、作業開始前や作業の切替え時に、監督者を中心に、短時間でその日の作業の範囲、段取り、分担、安全衛生のポイント等を現場で話し合うものである。

ツールボックスミーティングと呼ばれるのは、かつてはツールボックス(工具箱)に腰かけて打ち合わせをするイメージからであると説明されることが多かった。最近では、工具箱に腰かけるべきではないという考え方から、工具箱を囲んで打ち合わせをするイメージとか、工具箱を開く前に打ち合わせをするイメージからと説明されることが多い。

東京労働基準協会連合会の資料では、次のように説明されている。

【ツールボックスミーティング】

第5章日常的な安全衛生活動

4 ツールボックスミーティング

1 ツールボックスミーティング(TBM)とは

1 ツールボックスミーティング(TBM)の意味

  ツールボックスミーティング(TBM)とは、職場で行う作業の打ち合わせのことです。「ツールボックス(道具箱)」の近くで行われるため、このように呼ばれています。ミーティング(打ち合わせ)とされていますが、何のミーティングかといえば、その本質は「危険予知活動」です。

  建設業や造船業などで広く取り組まれていますが、これは毎日の作業場所や作業内容が変化していることから、作業開始前の、その日の状況等の確認が重要な意味を持つことによるものです。

2 ツールボックスミーティング(TBM)の流れ

  一般的には、朝の作業開始前に5分から10分程度の時間を使って行われます。必要に応じて、昼食後の作業再開時や作業の切替え時に行うこともあります。職長が中心になって、その日の作業範囲、段取り、分担などを明らかにし、全員で安全衛生のポイントなどを確認します。

※ (公社)東京労働基準協会連合会「外国人労働者安全衛生管理の手引き」(令和4年度厚生労働省委託外国人労働者安全管理支援事業(外国人在留支援センター))

(2)適切でないとは言えない。KY活動は、現場でその日の作業を開始する前に、作業の状況を描いたイラストシート等を用いて、危険要因やそれに対する対策を話し合って決め、その対策を一人ひとりが実践するものである。

必ずしも「現場でその日の作業を開始する前に」行うとは限らないが、基本的な流れは誤りではない。(4)が明らかに誤っているので、こちらは正しいとしておく。

なお、職場のあんぜんサイトのキーワードでは次のように記されている。

【KY活動】

安全衛生のキーワード

▶ 危険予知訓練(KYT)

  危険予知訓練は、作業や職場にひそむ危険性や有害性等の危険要因を発見し解決する能力を高める手法です。ローマ字のKYTは、危険のK、予知のY、訓練(トレーニング)のTをとったものです。

  危険予知訓練は、もともと住友金属工業で開発されたもので、中央労働災害防止協会が職場のさまざまな問題を解決するための手法である問題解決4ラウンド法と結びつけ、さらにその後、旧国鉄の伝統な安全確認手法である指差し呼称を組み合わせた「KYT4ラウンド法」としたものが標準とされています。

※ 厚生労働省「危険予知訓練(KYT)」(職場のあんぜんサイト「安全衛生キーワード」より)

(3)適切でないとは言えない。本肢は当然のことを言っており、誤っていると考える要素がない。

(4)適切ではない。本肢は、4Sのうちの整頓の説明である。整理とは、厚生労働省のWEBサイト安全キーワードの「4S(整理、整頓、清掃、清潔)」の項によれば「必要なものと不要なものを区分し、不要、不急なものを取り除くことです」とされている。

4S活動については、過去問でも何度か問われている。厚生労働省のWEBサイト安全キーワードの「4S(整理、整頓、清掃、清潔)」の内容を覚えておくようにしておきたい。なお同項の説明と本肢の記述との比較を表にしておく。

表:厚生労働省サイトと本肢の表現
  厚労省サイト 本肢
整理 「整理」は、必要なものと不要なものを区分し、不要、不急なものを取り除くことです。要るもの、要らないものに分けるためには、何らかの判断の基準が必要になります。現場の作業方法では必要と認められていても、その場所にその物が必要か、それだけの量が必要かなどの改善の余地はないかを検討し、よりよい方法が見つかればそれを新しい判断の基準、すなわち作業標準として定めてゆくことが出来ます。 必要なときに必要な物をすぐ取り出せるように、わかりやすく安全な状態で配置、収納することをいう。
整頓 「整頓」は、必要なものを、決められた場所に、決められた量だけ、いつでも使える状態に、容易に取り出せるようにしておくことです。工具・用具のみならず資材・材料を探す無駄を無くすことが出来ます。安全に配慮した置き方をすることが大事です。

(5)適切でないとは言えない。本肢は当然のことを言っており、誤っていると考える要素がない。