労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全関係法令 問13

安全衛生教育




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 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2024年度(令和05年度) 問13 難易度 安全衛生教育に関する基本的な内容の条文問題。正答できなければならない問題である。
安全衛生教育  4 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問13 安全衛生教育に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、定められているものはどれか。

(1)事業者は、雇入れ時の安全衛生教育を行ったときは、当該雇入れ時の安全衛生教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。

(2)事業者は、新たに指名した安全委員会の委員に対し、安全委員会の活動に関する教育を行わなければならない。

(3)電気業の事業場の事業者は、新たに職務に就くこととなった職長に対し、「作業方法の決定及び労働者の配置に関すること」及び「労働者に対する指導又は監督の方法に関すること」について、安全又は衛生のための教育を行わなければならない。

(4)作業内容を変更したときの安全衛生教育において、事業者は、教育を行うベき事項の全部に十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項の一部についての教育を省略することができるが、「安全装置の取扱い方法に関すること」及び「作業手順に関すること」については省略できない。

(5)事業者は、動力により駆動されるプレス機械を用いた加工における当該プレス機械の操作の業務に労働者を就かせるときは、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならない。

正答(3)

【解説】

問13試験結果

試験解答状況
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(1)定められていない。安衛則第 35 条その他の条文に、雇入れ時の安全衛生教育についての、記録の保存義務は定められていない。

なお、各種の教育・訓練の記録の保存義務はの3年間のものが多い。特別教育(安衛則第 38 条)、切羽までの距離が 100 メートル以上のずい道等の建設作業の避難等の訓練(安衛則第 389 条の 11)、土石流危険河川における建設工事の避難の訓練(安衛則第 575 条の 16)のいずれも保存義務は3年間である(※)

※ 職長等の教育(安衛則第 40 条)には、記録の保存は義務付けられていない。

ところで、安衛法第 60 条の2の「現に危険有害な業務に従事している者に対する安全衛生教育」は、「危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針」によれば、特別教育の対象業務の従事者も対象となり、「危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針の公示について」によれば、当面5年ごとに行うこととされている。

そうなると、特別教育の記録を3年間で破棄してしまったのでは、安衛法第 60 条の2の教育ができなくなってしまうだろう。その意味では、かなり矛盾した省令なのである。「安全衛生教育等推進要綱」に従うためにも、実務においては永年保存としたい。なお、このように矛盾した条文だと覚えておくことで、条文を知らなくても、教育の記録の保存義務が5年とされている時点で、怪しいと気付けるようになるだろう。

なお、記録の保存義務が5年間となっているものは、(石綿、がん原性物質及び粉じん以外の)健康診断関連のものが多い。

【労働安全衛生法】

(安全衛生教育)

第59条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

2及び3 (略)

【労働安全衛生規則】

(雇入れ時等の教育)

第35条 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。

一~八 (略)

 (略)

(2)定められていない。このような規定はない。安全委員会は、労使の協議の場という位置づけであるから、事業者の側が安全委員会の委員に対して「安全委員会の活動に関する教育」を行うのはややその趣旨にそぐわないだろう。

(3)定められている。安衛法第 60 条(及び安衛令第 19 条第三号)の規定により、電気業の事業場の事業者は、新たに職務に就くこととなった職長に対し、「作業方法の決定及び労働者の配置に関すること」及び「労働者に対する指導又は監督の方法に関すること」について、安全又は衛生のための教育を行わなければならない。

【労働安全衛生法】

第60条 事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

 作業方法の決定及び労働者の配置に関すること。

 労働者に対する指導又は監督の方法に関すること。

 前二号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの

【安全衛生法施行令】

(職長等の教育を行うべき業種)

第19条 法第60条の政令で定める業種は、次のとおりとする。

一及び二 (略)

 電気業

四~六 (略)

(4)定められていない。安衛法第 59 条第2項及び安衛則第 35 条第2項には、十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、該当する項目を省略できると定められている。この場合、省略できるのはすべての項目であって「安全装置の取扱い方法に関すること」及び「作業手順に関すること」については省略できないとは定められていない(※)

※ 安衛則第 35 条第1項柱書には、2024 年3月 31 日まで「ただし、令第2条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については、第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる」との但書きがあったが、2024 年4月1日に削除された。

もっとも、安衛則第 35 条第1項に定める雇い入れ時等の教育は、「当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について」行えばよく、必要のない事項まで教育を行う必要はないのであるから、実質的にはそれほど大きな違いはないのかもしれない。

【労働安全衛生法】

(安全衛生教育)

第59条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。

 (略)

【労働安全衛生規則】

(雇入れ時等の教育)

第35条 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。

 (略)

 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。

 作業手順に関すること。

四~八 (略)

 事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。

(5)定められていない。特別教育は安衛法第 59 条第3項によって義務付けられ、対象となる業務は安衛法第 36 条に定められている。しかし、安衛則第 36 条に本肢のような業務は定められていない。

特別教育は短いものでも6時間程度のものが多い。プレス作業は一定の危険性を有する業務ではあるが、基本的にマテハン作業でそれほど自由度の高い業務ではない。作業の性質上、特別教育の対象にはそぐわないだろう。

【労働安全衛生法】

(安全衛生教育)

第59条 (第1項及び第2項 略)

 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

【労働安全衛生規則】

(特別教育を必要とする業務)

第36条 法第59条第3項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。

 (略)

 動力により駆動されるプレス機械(以下「動力プレス」という。)の金型、シヤーの刃部又はプレス機械若しくはシヤーの安全装置若しくは安全囲いの取付け、取外し又は調整の業務

三~四十一 (内容は略すが、プレス作業の業務は定められていない。)