問11 元方事業者、注文者等の講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、定められていないものはどれか。
(1)造船業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、当該元方事業者及び全ての関係請負人が参加する協議組織を設置し、当該協議組織の会議を定期的に開催しなければならない。
(2)機械等貸与者から作業床の高さが2m以上の高所作業車の貸与を受けた者は、当該高所作業車を操作する者がその使用する労働者でないときは、当該高所作業車を操作する者が、当該高所作業車の操作について法令に基づき必要とされる資格又は技能を有する者であることを確認しなければならない。
(3)建設業の仕事を自ら行う注文者は、作業構台を、当該仕事を行う場所においてその請負人の労働者に使用させるときは、当該作業構台の構造及び材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、かつ、これを当該作業構台の見やすい場所に表示しなければならない。
(4)建築物貸与者は、当該建築物の避難用の出入口若しくは通路又はすべり台、避難用はしご等の避難用の器具で、当該建築物の貸与を受けた2以上の事業者が共用するものについては、避難用である旨の表示をし、かつ、容易に利用することができるように保持しておかなければならない。
(5)建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われる場合において、当該作業が機体重量3トン以上のくい打機を用いて行うものであるときは、当該くい打機の運転についての合図を統一的に定め、これを関係請負人に周知させなければならない。

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このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。
解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。
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2024年度(令和05年度) | 問11 | 難易度 | 元方事業者に関する、やや細部にわたる条文問題である。合格のためには正答しておきたい問題。 |
---|---|---|---|
元方事業者の講ずる措置 | 4 |
※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上
問11 元方事業者、注文者等の講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、定められていないものはどれか。
(1)造船業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、当該元方事業者及び全ての関係請負人が参加する協議組織を設置し、当該協議組織の会議を定期的に開催しなければならない。
(2)機械等貸与者から作業床の高さが2m以上の高所作業車の貸与を受けた者は、当該高所作業車を操作する者がその使用する労働者でないときは、当該高所作業車を操作する者が、当該高所作業車の操作について法令に基づき必要とされる資格又は技能を有する者であることを確認しなければならない。
(3)建設業の仕事を自ら行う注文者は、作業構台を、当該仕事を行う場所においてその請負人の労働者に使用させるときは、当該作業構台の構造及び材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、かつ、これを当該作業構台の見やすい場所に表示しなければならない。
(4)建築物貸与者は、当該建築物の避難用の出入口若しくは通路又はすべり台、避難用はしご等の避難用の器具で、当該建築物の貸与を受けた2以上の事業者が共用するものについては、避難用である旨の表示をし、かつ、容易に利用することができるように保持しておかなければならない。
(5)建設業に属する事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われる場合において、当該作業が機体重量3トン以上のくい打機を用いて行うものであるときは、当該くい打機の運転についての合図を統一的に定め、これを関係請負人に周知させなければならない。
正答(5)
【解説】
(1)正しい。安衛法第 15 条第1項(及び安衛令第7条第1項)の定義により、造船業に属する事業の元方事業者は、特定元方事業者となる。
そして、安衛法第 30 条第1項第一号(及び安衛則第 635 条第1項)の規定により、造船業に属する事業の元方事業者(特定元方事業者)は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するため、当該元方事業者及び全ての関係請負人が参加する協議組織を設置し、当該協議組織の会議を定期的に開催しなければならない。
【労働安全衛生法】
(統括安全衛生責任者)
第15条 事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が2以上あるため、その者が2以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、(以下略)
2~5 (略)
(特定元方事業者等の講ずべき措置)
第30条 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない。
一 協議組織の設置及び運営を行うこと。
二~五 (略)
2~4 (略)
【労働安全衛生法施行令】
(統括安全衛生責任者を選任すべき業種等)
第7条 法第15条第1項の政令で定める業種は、造船業とする。
2 (略)
【労働安全衛生規則】
(協議組織の設置及び運営)
第635条 特定元方事業者(法第15条第1項の特定元方事業者をいう。以下同じ。)は、法第30条第1項第一号の協議組織の設置及び運営については、次に定めるところによらなければならない。
一 特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置すること。
二 当該協議組織の会議を定期的に開催すること。
2 (略)
(2)正しい。安衛則第 667 条の規定により、機械等貸与者から作業床の高さが2m以上の高所作業車の貸与を受けた者は、その高所作業車を操作する者がその使用する労働者でないときは、その高所作業車を操作する者が、その高所作業車の操作について法令に基づき必要とされる資格又は技能を有する者であることを確認しなければならない。
なお、機械等貸与者の定義は、第 666 条にあり、作業床の高さが2m以上の高所作業車は、安衛令第 10 条第四号に定められている。
【労働安全衛生法施行令】
(法第三十三条第一項の政令で定める機械等)
第10条 法第33条第1項の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等とする。
一~三 (略)
四 作業床の高さ(作業床を最も高く上昇させた場合におけるその床面の高さをいう。以下同じ。)が2メートル以上の高所作業車
【労働安全衛生規則】
(機械等貸与者の講ずべき措置)
第665条 法第33条第1項の厚生労働省令で定める者は、令第10条各号に掲げる機械等を、相当の対価を得て業として他の事業者に貸与する者とする。
(機械等貸与者の講ずべき措置)
第666条 前条に規定する者(以下「機械等貸与者」という。)(以下略)
一及び二 (略)
2 (略)
(機械等の貸与を受けた者の講ずべき措置)
第667条 機械等貸与者から機械等の貸与を受けた者は、当該機械等を操作する者がその使用する労働者でないときは、次の措置を講じなければならない。
一 機械等を操作する者が、当該機械等の操作について法令に基づき必要とされる資格又は技能を有する者であることを確認すること。
二 (略)
(3)正しい。安衛則第 655 条の2第1項(第一号)の規定により、建設業の仕事を自ら行う注文者は、作業構台を、当該仕事を行う場所においてその請負人の労働者に使用させるときは、その作業構台の構造及び材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、かつ、これを当該作業構台の見やすい場所に表示しなければならない。
【労働安全衛生法】
(注文者の講ずべき措置)
第31条 特定事業の仕事を自ら行う注文者は、建設物、設備又は原材料(以下「建設物等」という。)を、当該仕事を行う場所においてその請負人(当該仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。第31条の4において同じ。)の労働者に使用させるときは、当該建設物等について、当該労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 (略)
【労働安全衛生規則】
(作業構台についての措置)
第655条の2 注文者は、法第31条第1項の場合において、請負人の労働者に、作業構台を使用させるときは、当該作業構台について、次の措置を講じなければならない。
一 構造及び材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、かつ、これを作業構台の見やすい場所に表示すること。
二及び三 (略)
2 (略)
(4)正しい。安衛則第 670 条第1項の規定により、建築物貸与者は、その建築物の避難用の出入口若しくは通路又はすべり台、避難用はしご等の避難用の器具で、当該建築物の貸与を受けた2以上の事業者が共用するものについては、避難用である旨の表示をし、かつ、容易に利用することができるように保持しておかなければならない。
なお、試験とは無関係だが、合格後の実務においては、消防法の規定にも留意する必要がある。
【労働安全衛生法】
(建築物貸与者の講ずべき措置)
第34条 建築物で、政令で定めるものを他の事業者に貸与する者(以下「建築物貸与者」という。)は、当該建築物の貸与を受けた事業者の事業に係る当該建築物による労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。ただし、当該建築物の全部を一の事業者に貸与するときは、この限りでない。
【労働安全衛生法施行令】
(法第三十四条の政令で定める建築物)
第11条 法第34条の政令で定める建築物は、事務所又は工場の用に供される建築物とする。
【労働安全衛生規則】
(共用の避難用出入口等)
第670条 法第34条の建築物貸与者(以下「建築物貸与者」という。)は、当該建築物の避難用の出入口若しくは通路又はすべり台、避難用はしご等の避難用の器具で、当該建築物の貸与を受けた二以上の事業者が共用するものについては、避難用である旨の表示をし、かつ、容易に利用することができるように保持しておかなければならない。
2 (略)
【以下、参考資料】
【消防法】
第8条の2の4 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
第17条 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。
②及び③ (略)
【消防法施行令】
(避難上必要な施設等の管理を要する防火対象物)
第4条の2の3 法第八条の二の四の政令で定める防火対象物は、別表第一に掲げる防火対象物(同表(十八)項から(二十)項までに掲げるものを除く。)とする。
(消防用設備等の種類)
第7条 法第17条第1項の政令で定める消防の用に供する設備は、消火設備、警報設備及び避難設備とする。
2及び3 (略)
4 第1項の避難設備は、火災が発生した場合において避難するために用いる機械器具又は設備であつて、次に掲げるものとする。
一 すべり台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋その他の避難器具
二 誘導灯及び誘導標識
5~7 (略)
別表第一 (第一条の二―第三条、第三条の三、第四条、第四条の二の二―第四条の三、第六条、第九条―第十四条、第十九条、第二十一条―第二十九条の三、第三十一条、第三十四条、第三十四条の二、第三十四条の四―第三十六条関係)
(略) | (略) |
(十二) | イ 工場又は作業場 ロ 映画スタジオ又はテレビスタジオ |
(略) | (略) |
(十五) | 前各項に該当しない事業場 |
(略) | (略) |
(5)誤り。クレーン等(クレーン、移動式クレーン、デリック、簡易リフト又は建設用リフトで、クレーン則の適用を受けるもの)に関しては、第 643 条の3の規定により、特定元方事業者(本肢の建設業に属する事業の元方事業者も含まれる。)は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われる場合において、そのクレーン等の運転についての合図を統一的に定め、これを関係請負人に周知させなければならない。なお、この規定は、安衛則規則第 639 条によって、すべての元方事業者に対して適用されている。
しかしながら、本肢の機体重量3トン以上のくい打機などの車両系建設機械について、このような規定はない。なお、同規則第 159 条の規定により、車両系建設機械の運転について、誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導者に当該合図を行なわせなければならないとされている。
【労働安全衛生法】
(注文者の講ずべき措置)
第31条 特定事業の仕事を自ら行う注文者は、建設物、設備又は原材料(以下「建設物等」という。)を、当該仕事を行う場所においてその請負人(当該仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。第31条の4において同じ。)の労働者に使用させるときは、当該建設物等について、当該労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 (略)
【労働安全衛生法施行令】
別表第七 建設機械(第十条、第十三条、第二十条関係)
一及び二 (略)
三 基礎工事用機械
1 くい打機
2~8 (略)
四~六 (略)
【労働安全衛生規則】
(計画の範囲)
第94条の2 (柱書 略)
一 (略)
二 (前略)車両系建設機械(令別表第七に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものをいう。以下同じ。)(後略)
三~六 (略)
(合図)
第159条 事業者は、車両系建設機械の運転について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導者に当該合図を行なわせなければならない。
2 (略)
(クレーン等の運転についての合図の統一)
第639条 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われる場合において、当該作業がクレーン等(クレーン、移動式クレーン、デリック、簡易リフト又は建設用リフトで、クレーン則の適用を受けるものをいう。以下同じ。)を用いて行うものであるときは、当該クレーン等の運転についての合図を統一的に定め、これを関係請負人に周知させなければならない。
2 (略)
(クレーン等の運転についての合図の統一)
第643条の3 第639条第1項の規定は、元方事業者について準用する。
2 (略)