労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全関係法令 問04

車両系荷役運搬機械等に関する規制




問題文
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※ イメージ図(©photoAC)

 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2024年度(令和05年度) 問04 難易度 工場や倉庫の作業を知っていれば、ごく常識的な内容だが正答率はきわめて低い。
車両系荷役運搬機械  5 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問4 車両系荷役運搬機械等による労働災害を防止するため事業者が講ずべき措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、誤っているものはどれか。

(1)フォークリフトを用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、制動装置及び操縦装置の機能、荷役装置及び油圧装置の機能、車輪の異常の有無並びに前照燈、後照燈、方向指示器及び警報装置の機能について点検を行わなければならない。

(2)不整地運搬車については、運転者の視野を妨げないように荷を積載しなければならない。

(3)ショベルローダー及びフォークローダーについては、最大荷重その他の能カを超えて使用してはならない。

(4)貨物自動車に荷を積載するときは、偏荷重が生じないように積載するとともに、荷崩れ又は祷の落下による労働者の危険を防止するため、荷にロープ又はシートを掛ける等必要な措置を講じなければならない。

(5)車両系荷役運搬機械等を荷のつり上げ、労働者の昇降等当該車両系荷役運搬機械等の主たる用途以外の用途に使用してはならない。ただし、労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。

正答(2)

【解説】

問4試験結果

試験解答状況
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本問は、試験協会としてはそれほど難しくしたつもりはなかったのかもしれない。しかし、現実問題として(5)のフォークリフトで労働者が昇降することは、ほとんどの事業場で例外なく禁止しているだろう。また、例外的なケースでは昇降することを法令で禁止していないことを、知らなくても安全という観点からは問題はない。その意味で、多くの受験者が誤ったのも無理はないだろう。

一方、不整地運搬車については、それほど普及している機械ではなく(※)、大規模な土木現場を経験していない限り見たことがない受験者がほとんどだろう。しかし、(2)の内容は、普通に考えれば安全のためには必要な内容であり、正しいと考えるだろう。問題が適切だったのだろうかという疑問は残る。

※ 政府の統計によると、2015 年度のわが国における不整地運搬車の購入台数は、1,694 台とされている。

(1)正しい。安衛則第 151 条の 25 の規定により、フォークリフトを用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、制動装置及び操縦装置の機能、荷役装置及び油圧装置の機能、車輪の異常の有無並びに前照燈、後照燈、方向指示器及び警報装置の機能について点検を行わなければならない。

技能講習では、実技講習で徹底するのだが、実際には行われていないことがほとんどではあろう。しかし、その日の作業を開始する前に点検を行わなければならないことは、ほとんどすべての建設用機械や運搬用機械に共通することである。コンサルタントとしては知っておかなければならない。

【労働安全衛生規則】

(点検)

第151条の25 事業者は、食品加工用切断機又は食品加工用切削機の刃の切断又は切削に必要な部分以外の部分には、覆い、囲い等を設けなければならない。

 制動装置及び操縦装置の機能

 荷役装置及び油圧装置の機能

 車輪の異常の有無

 前照灯、後照灯、方向指示器及び警報装置の機能

※ 本肢の「前照燈、後照燈」は本条第四号の「前照灯、後照灯」と同じ意味である。安衛法令でもかなり以前は、「前照燈、後照燈」とされていた。

不整地運搬車

※ 図1:不整地運搬車(©photoAC)

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(2)このような規定はない。なお、不整地運搬車とは、工事現場のような不整地を走行できるクローラ式のダンプトラックである。その多くは、荷台が運転席の後方に設置されている(※)ので、荷を積んでも前方の視界が妨げられることはない。

※ 不整地運搬車構造規格第6条第1項には、「運転者が安全な運転を行うことができる視界を有するものでなければならない」とする規定がある。

なお、大型の不整地運搬車では、運転席と荷台が、下部の走行体の上部で回転して前後の方向が変えられるものがある。このタイプだと、後進したいときに、車体全体の方向を変えなくても、上部だけ回転させればそのまま前進できる。

不整地運搬車

※ 図2:不整地運搬車(©illustACC)

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図2のような小型の不整地運搬車では、運転席だけの前後の方向を変えられるものもある。このタイプでは、荷台が運転席の前にくることもあるが、荷を積載して走行するときは、通常は荷台側を後方にして運転するだろう(※)

※ もちろん、現実の現場では、荷台を進行方向側にして進むこともあり得ないことではない。しかし、その場合は、荷を積んでいなくても視界が妨げられる。出来る限り荷台を後にして進行するべきである。

本肢のような規定をしていないのは、おそらくそのような規定を設ける必要性が低いからだろう。

なお、フォークリフトは常に機体前方に荷を積むことになるが、このような規定はない。実際には、フォークリフトでは荷を積んだ場合は、バック走行することが安全の基本である。また、大手の企業等では、社内ルールとして、フォークリフトに積む荷の高さに制限を設けているケースも多い。

一方、シヨベルローダー等(シヨベルローダー又はフオークローダーをいう。)については、安衛則第 151 条の 29 で、運転者の視野を妨げないように荷を積載しなければならないとされている。

【労働安全衛生規則】

(荷の積載)

第151条の29 事業者は、シヨベルローダー等については、運転者の視野を妨げないように荷を積載しなければならない。

【不整地運搬車構造規格】

(運転に必要な視界等)

第6条 不整地運搬車は、運転者が安全な運転を行うことができる視界を有するものでなければならない。

2~4 (略)

(3)正しい。安衛則第 151 条の 30 の規定により、ショベルローダー及びフォークローダーについては、最大荷重(※)その他の能カを超えて使用してはならない。これは、当然であろう。

※ 最大荷重(maximum load)とは、バケットの規定重心位置に積載して安全に作業ができる最大の荷重のことである。ただし、リーチ機構をもつものではバケット繰込み時の値となる。(JIS D 6003:1995)

【労働安全衛生規則】

(前照灯及び後照灯)

第151条の27 事業者は、シヨベルローダー又はフオークローダー(以下「シヨベルローダー等」という。)については、前照灯及び後照灯を備えたものでなければ使用してはならない。ただし、作業を安全に行うため必要な照度が保持されている場所においては、この限りでない。

(使用の制限)

第151条の30 事業者は、シヨベルローダー等については、最大荷重その他の能力を超えて使用してはならない。

(4)正しい。安衛則第 151 条の 10 の規定により、貨物自動車に荷を積載するときは、偏荷重が生じないように積載するとともに、荷崩れ又は祷の落下による労働者の危険を防止するため、荷にロープ又はシートを掛ける等必要な措置を講じなければならない。

【労働安全衛生規則】

(荷の積載)

第151条の10 事業者は、車両系荷役運搬機械等に荷を積載するときは、次に定めるところによらなければならない。

 偏荷重が生じないように積載すること。

 不整地運搬車、構内運搬車又は貨物自動車にあつては、荷崩れ又は荷の落下による労働者の危険を防止するため、荷にロープ又はシートを掛ける等必要な措置を講ずること。

(5)正しい。安衛則第 151 条の 14 のままである。なお、用途外使用は原則として禁止されるが、あまりにも厳しくすると、多様な技術の発展を阻害する恐れがあるので、ほとんどの用途外使用禁止の規定に同種の但書きが付いている。

【労働安全衛生規則】

(主たる用途以外の使用の制限)

第151条の14 事業者は、車両系荷役運搬機械等を荷のつり上げ、労働者の昇降等当該車両系荷役運搬機械等の主たる用途以外の用途に使用してはならない。ただし、労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。

この但書により労働者が昇降することができる場合については、通達が示されており、「フォークリフト等の転倒のおそれがない場合で、パレット等の周囲に十分な高さの手すり若しくはわく等を設け、かつ、パレット等をフォークに固定すること又は労働者に命綱を使用させること等の措置を講じたとき」とされている。

ただ、かなり古い通達である。むしろ、この通達の存在を知っているのは、安全の専門家だけかもしれない。実務においては、たとえ通達の基準を満たしているとしても、フォークリフトを用いた作業者の昇降などやらせるべきではない。

【フォークリフトの用途外使用の例外に当たる場合とは】

第2 細部事項

 第2編安全基準関係

21 第151条の14関係

(1)(略)

(2)ただし書の「危険を及ぼすおそれのないとき」とは、フォークリフト等の転倒のおそれがない場合で、パレット等の周囲に十分な高さの手すり若しくはわく等を設け、かつ、パレット等をフォークに固定すること又は労働者に命綱を使用させること等の措置を講じたときをいうこと。

※ 昭和53年2月10日基発第78号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

アタッチメント

※ 図:アタッチメント(JIS D 6201:2017「自走式産業車両−用語」)

図のクリックで拡大します

フォークリフトメーカーは、様ざまなフォークリフト用のアタッチメントを販売しており、その中には、フォークリフトで荷をつり上げるためのものも存在している。厚労省はこれらの使用も用途外使用に当たるとしており、メーカーの純正品を使用するのであれば、安衛則第 151 条の 14 の但書によって法違反には当たらないとする(※)

※ 筆者(柳川)が、厚労省安全衛生部安全課の担当官から直接確認したところによる。

なお、本図の中央のアタッチメントを取り付けた場合、(小型)移動式クレーンに該当するのではないかとの疑問があるかもしれない。しかし、厚労省は、これもフォークリフトであって(※)移動式クレーンではないとしている。

※ JIS D 6201:2017「自走式産業車両−用語」は、フォークリフトの定義を「フォークなどを上下させるマストを備えた自走式荷役運搬車両全般の呼称」としており、これにしたがったものである。