労働安全コンサルタント試験 2024年 産業安全関係法令 問03

機械による危険の防止に関する規制




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 このページは、2024年の労働安全衛生コンサルタント試験の「産業安全関係法令」問題の解説と解答例を示しています。

 解説文中の法令の名称等は、適宜、略語を用いています。また、引用している法令は、読みやすくするために漢数字を算用数字に変更するなどの修正を行い、フリガナ、傍点等は削除しました。

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2024年度(令和05年度) 問03 難易度 機械による危険の防止に関するやや詳細な知識に関する条文問題。その内容から正答できなければならない。
機械等についての措置  4 

※ 難易度は本サイトが行ったアンケート結果の正答率に基づく。
5:50%未満 4:50%以上60%未満 3:60%以上70%未満 2:70%以上80%未満 1:80%以上

問3 機械による危険を防止するため事業者が講じた措置に関する次の記述のうち、労働安全衛生法令上、違反となるものはどれか。

(1)食品加工用切削機を用いる作業において、当該作業の指揮者を定め、その者に作業の指揮を行わせたので、食品加工用切削機の刃の切削に必要な部分以外の部分に覆い、囲い等を設けることはしなかった。

(2)木材加工用機械の運転を開始する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれがあったため、一定の合図を定め、木材加工用機械作業主任者でない者を合図をする者に指名して、関係労働者に対し合図を行わせた。

(3)動力により駆動されるプレス機械を3台有する事業場において、プレス機械及びその安全装置に切替えキースイッチを設けたが、プレス機械作業主任者を選任していなかったので、当該キーを保管する者を定め、その者に当該キーを保管させた。

(4)紙を通すロール機を設置するに当たり、点検作業のため、当該作業に従事する労働者の身長に応じた高さの作業踏台を設けたが、ロール機の最上部から天井、配管その他のロール機の上部にある構造物までの距離を、1.2 メートル以上とはしなかった。

(5)動力により駆動される遠心機械について、自主検査を行ったところ回転体に異常を認めたため、補修の措置として回転体を取り替えるとともに、その措置の内容を記録したが、使用を再び開始する前に試運転を3分間以上しなかった。

正答(1)

【解説】

問3試験結果

試験解答状況
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本問の各肢はあまりにも細かすぎ、覚えておくことは機械設計の担当者でもない限り不可能であろう。そうなると、内容の妥当性から判断するしかない。

(1)違反となる。安衛則第130条の2にはこのような例外規定はない。

本肢は、どう考えても不合理である。作業の指揮者を定めて、その者に作業の指揮を行わせたからといって、覆い、囲い等を設けてもほとんど意味がない。

作業指揮者は、複数の作業者が共同する作業で、それぞれが勝手に作業を行うと危険な場合に定められるのである。そのため、作業主任者と異なり、とくに資格は必要なく、講習を受ける必要もない。

作業指揮者を定めたからといって、危険な作業が行われなくなるという保証はないのである。

【労働安全衛生規則】

(切断機等の覆い等)

第130条の2 事業者は、食品加工用切断機又は食品加工用切削機の刃の切断又は切削に必要な部分以外の部分には、覆い、囲い等を設けなければならない。

(2)違反とはならない。安衛則第 104 条は合図者を作業主任者に限定していない。また、同規則第 130 条にも、木材加工用機械作業主任者の職務として合図をすることは定められていない。

【労働安全衛生規則】

(運転開始の合図)

第104条 事業者は、機械の運転を開始する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、一定の合図を定め、合図をする者を指名して、関係労働者に対し合図を行なわせなければならない。

 (略)

(木材加工用機械作業主任者の職務)

第130条 事業者は、木材加工用機械作業主任者に、次の事項を行なわせなければならない。

 木材加工用機械を取り扱う作業を直接指揮すること。

 木材加工用機械及びその安全装置を点検すること。

 木材加工用機械及びその安全装置に異常を認めたときは、直ちに必要な措置をとること。

 作業中、治具、工具等の使用状況を監視すること。

(3)違反とはならない。安衛令第6条第七号は、動力により駆動されるプレス機械を5台以上有する事業場において、プレス機械作業主任者の選任を義務付けている。本肢の事業場は、動力により駆動されるプレス機械を3台有するので作業主任者の選任は義務付けられていない。

また、安衛則第 134 条の2は、プレス機械作業主任者を選任する必要がない事業場における「プレス機械及びその安全装置に切替えキースイツチの保管」について定めているが、本肢の事業場はその定めに適合している。

【労働安全衛生法】

(作業主任者)

第14条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

【労働安全衛生法施行令】

(作業主任者を選任すべき作業)

第6条 法第十四条の政令で定める作業は、次のとおりとする。

一~六 (略)

 動力により駆動されるプレス機械を5台以上有する事業場において行う当該機械による作業

八~二十三 (略)

【労働安全衛生規則】

(プレス機械作業主任者の職務)

第134条 事業者は、プレス機械作業主任者に、次の事項を行なわせなければならない。

一及び二 (略)

 プレス機械及びその安全装置に切替えキースイツチを設けたときは、当該キーを保管すること。

 (略)

(切替えキースイツチのキーの保管等)

第134条の2 事業者は、動力プレスによる作業のうち令第6条第七号の作業以外の作業を行う場合において、動力プレス及びその安全装置に切替えキースイツチを設けたときは、当該キーを保管する者を定め、その者に当該キーを保管させなければならない。

(4)違反とはならない。本肢のような規定は存在していない。確かに、機械の点検の際には、機械の最上部から天井、配管その他のロール機の上部にある構造物までの距離がある程度ないとやりにくい場合もあるかもしれない。しかし、機械の上部に上がらなければ点検のできない機械ばかりではないだろうし、常識で考えても 1.2 メートルもある必要はないだろう。このような規定があるはずがない。

なお、第 545 条は、点検作業ではなく常時当該機械に係る作業に従事する労働者についての規定であるが、適当な高さの作業踏台を設けなければならないとしているが、上部にある構造物までの距離を定めていない。

また、安衛則第第 144 条も覚えておいた方がよい。

【労働安全衛生規則】

(紙等を通すロール機の囲い等)

第144条 事業者は、紙、布、金属はく等を通すロール機の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分には、囲い、ガイドロール等を設けなければならない。

(作業踏台)

第545条 事業者は、旋盤、ロール機等の機械が、常時当該機械に係る作業に従事する労働者の身長に比べて不適当に高いときは、安全で、かつ、適当な高さの作業踏台を設けなければならない。

(5)違反とはならない。動力により駆動される遠心機械については、使用を再び開始する前の3分間以上の試運転は義務付けられていない。

なお、安衛則第第 118 条は、研削といしについて試運転を義務付けているが、これは研削といしが遠心力で破裂して災害になることを防止するためである。

たんに回転するというだけで、試運転を義務付ける必要はないだろう。

【労働安全衛生規則】

(研削といしの試運転)

第118条 事業者は、研削といしについては、その日の作業を開始する前には1分間以上、研削といしを取り替えたときには3分間以上試運転をしなければならない。